外国人不動産売却が進む日本で注意すべき「非居住者への源泉徴収義務」
1. 日本経済と外国人投資家の動向
近年、日本では外国人労働者や外国人経営者を取り巻く制度が厳格化する傾向にあります。
在留資格の取得・更新要件も見直され、「外国人を取り巻く環境が右傾化している」と指摘されることも少なくありません。
一方で、日本経済は労働力・投資資金の両面で外国人の貢献に依存しています。
もし、こうした外国人投資家や経営者が日本市場から撤退(エスケープ)する動きが広がれば、不動産市場にも波及し、外国人所有の不動産売却が相次ぐ可能性もあります。
このとき、日本人が非居住者(外国人)から不動産を購入する場合に発生する税務リスクとして、
特に重要なのが「源泉徴収義務」です。
2. 非居住者への不動産代金支払いには「源泉徴収」が必要
結論
非居住者(または外国法人)から日本国内の不動産を購入する場合、
買主(日本居住者・法人)には、譲渡代金の10.21%を源泉徴収して国に納付する義務があります。
🔹 税率:10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)
🔹 対象:土地・建物等の譲渡代金
🔹 納付期限:支払日の翌月10日まで
計算例
売買価格が1億円の場合:
源泉徴収額=1億円 × 10.21% = 1,021万円
売主への支払額=8,979万円
買主は1,021万円を税務署に納付
3. 法的根拠と参考資料
| 区分 | 出典 | 内容 |
|---|---|---|
| 所得税法第212条第1項第5号 | 非居住者への不動産譲渡代金の支払に関する源泉徴収義務 | |
| 所得税法施行令第322条 | 「国内にある資産の譲渡」定義 | |
| 所得税基本通達212-1 | 国内不動産の範囲の明示 | |
| 国税庁タックスアンサー No.12036 | 非居住者からの不動産購入時の源泉徴収義務の説明(確認日:2025年11月7日) |
4. 実務対応の流れ
売主の居住区分を確認
在留資格・住民票の有無・帰国状況などから「非居住者」かを判定。支払時に源泉徴収
売買契約額に10.21%を乗じて差し引く。翌月10日までに納付
「所得税徴収高計算書」により所轄税務署へ納付。支払調書の提出
翌年1月末までに「不動産等の譲渡の対価の支払調書」を提出。源泉徴収票を売主に交付
非居住者側はこれを基に確定申告し、過剰分を還付申請可能。
5. 注意点とリスク
居住者・非居住者の判定は支払時点で行う。
売主が法人(外国法人)の場合も源泉徴収対象。
不動産業者を介しても、最終支払者が個人なら義務あり。
源泉徴収を怠ると、買主側に不納付加算税・延滞税が課される。
源泉徴収は譲渡所得税の前払いであり、最終的な税額とは異なる。
6. 今後の展望と専門家の役割
外国人投資家が日本不動産市場から撤退する場合、
短期的には不動産価格の調整局面が生じる可能性もあります。
ただし、手続の煩雑さや税務リスクが壁となり、
買い手側の負担が増すことにも注意が必要です。
税理士や不動産業者は、
「非居住者との取引における源泉徴収義務」を確実に把握し、
契約書面や資金決済の段階で誤りがないようサポートすることが求められます。
7. まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 非居住者・外国法人への不動産代金支払 |
| 税率 | 10.21%(所得税+復興特別税) |
| 納付期限 | 支払月の翌月10日まで |
| 書類 | 所得税徴収高計算書、支払調書、源泉徴収票 |
| リスク | 源泉徴収漏れ=買主にペナルティ |
8. 専門家からのアドバイス
契約締結前に「売主が非居住者かどうか」を必ず確認
契約書に「源泉徴収条項」を明記
税務署への納付は期限厳守(遅延時は罰則)
外国人売主側には還付請求の案内も行う
✅ まとめると…
外国人不動産投資家の動向が変化する今こそ、
「非居住者への源泉徴収義務」を正確に理解し、
税務リスクを未然に防ぐことが、買主・仲介業者双方に求められています。
人が亡くなったときに必要となる行政・社会的な手続き(税務を除く) —いざというときに慌てないための実務ガイド—
1.導入:いざという時に「何から始めるか」が分からない
ご家族や身近な方が亡くなったとき、多くの人が直面するのが「何を、どこに、いつまでに届け出ればいいのか分からない」という戸惑いです。
税金の申告や相続の話はよく耳にしますが、その前段階として必要となる行政手続きや社会保険・年金・公共料金の対応は、思いのほか煩雑です。
特に、企業経営者やバックオフィスの担当者は、社員や役員のご家族から相談を受けることもあります。制度を正確に理解しておくことは、業務上の支援にも役立ちます。
2.制度解説:死亡届を起点とする一連の手続き
人が亡くなったときの最初の手続きは「死亡届」です。これは戸籍法第86条に基づく届出で、死亡の事実を知った日から7日以内に、市区町村役場へ提出する必要があります。
医師が発行する「死亡診断書(または死体検案書)」を添付し、届出を行うと「火葬許可証」や「埋葬許可証」が交付されます。ここから、葬儀・火葬・埋葬の手続きが始まります。
続いて重要なのが、健康保険・年金・各種社会保険の資格喪失届です。
国民健康保険加入者:市区町村役場へ「資格喪失届」+「葬祭費(3~7万円)」の申請
社会保険加入者:勤務先を通じて健康保険組合等へ「埋葬料(5万円)」の請求
年金受給者:年金事務所へ「年金受給権者死亡届」提出、未支給年金の請求手続き
これらはいずれも14日以内が目安とされます。
3.実務上の判断軸:名義・契約・デジタル資産も忘れずに
行政手続きに加えて、実務上は「名義変更・解約・資産確認」も同時並行で行う必要があります。
主な対象は以下の通りです。
| 区分 | 主な対応先 | 注意点 |
|---|---|---|
| 公共料金・通信 | 電気・ガス・水道・携帯電話・インターネット | 解約や名義変更の連絡を速やかに |
| 金融機関 | 銀行・証券会社 | 預金は死亡届により凍結されるため、相続手続きが必要 |
| クレジットカード・保険 | 各社窓口 | 自動引落しの停止・保険金請求を忘れずに |
| デジタル資産 | スマートフォン・SNS・クラウドサービス | ログイン情報の管理・削除手続きを家族が行う必要あり |
特に近年は、スマートフォン内に契約情報・電子通帳・写真・SNSなど、個人の「デジタル遺産」が集中しており、適切な引き継ぎが課題となっています。
4.よくある誤解と修正
誤解①:「死亡届を出せば年金も自動で止まる」
→ 年金受給権者死亡届を別途、年金事務所へ提出しないと支給が継続されてしまうことがあります。誤解②:「口座は相続人が自由に引き出せる」
→ 死亡が確認されると銀行は預金口座を凍結します。遺言書や遺産分割協議書に基づいた正式手続きが必要です。誤解③:「保険会社が自動的に連絡してくれる」
→ 生命保険金や共済金の請求は「申請主義」です。放置すると時効(3年)により受取れない場合もあります。
このような「思い込み」や「連絡漏れ」により、後日トラブルになるケースは少なくありません。
5.現場で役立つチェックポイント
葬儀から1か月以内に整理しておくべき主要な手続きを、以下にまとめます。
| 時期 | 手続き内容 | 提出先 |
|---|---|---|
| 死亡当日〜7日以内 | 死亡届、火葬許可証の交付 | 市区町村役場 |
| 葬儀後〜14日以内 | 健康保険・年金の資格喪失届、葬祭費・埋葬料請求 | 市区町村・年金事務所・勤務先 |
| 1か月以内 | 保険金・弔慰金・未支給年金の請求、公共料金・通信の名義変更 | 各契約先 |
| 3か月以内 | 銀行・証券・ローン契約などの解約・相続関連手続き | 各金融機関 |
| 随時 | デジタル資産(スマホ・SNS等)の整理 | 各サービス事業者 |
必要に応じて、葬儀社や行政書士、社会保険労務士などと連携することで、家族の負担を軽減できます。
6.まとめ:制度理解が「安心」につながる
人が亡くなったときの手続きは、税務や相続以前に、生活上・社会的な整理が欠かせません。
葬儀後の短期間に多くの届出や名義変更を要するため、**「誰が、どの窓口に、いつまでに」**を把握しておくことが、混乱を防ぐ第一歩です。
事前に家族で情報を共有し、必要書類(保険証・年金手帳・通帳・マイナンバーカードなど)をまとめておくことで、万一の際も落ち着いて対応できます。
相続時精算課税を選ぶべきか?―小規模宅地特例との比較で考える
1.相続時精算課税とは
「相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)」とは、
60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫に贈与をした際に選択できる制度です。
この制度を選ぶと、2,500万円までの贈与は非課税(特別控除)となり、
超える部分には一律20%の贈与税がかかります。
ただし、「精算課税」という名のとおり、
その贈与財産は相続時に贈与時の価額で相続財産に加算され、
最終的に相続税を再計算して過不足を精算する仕組みになっています。
したがって、
贈与時の評価で相続財産に組み込まれる
相続時の値上がり分は課税されない
という特徴があります。
2.小規模宅地等の特例との関係
一方で、「小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)」は、
被相続人の自宅や事業用の土地について、一定の条件を満たすと評価額を最大80%減額できる制度です。
しかし、相続時精算課税で生前に贈与してしまうと、その土地は相続財産ではなくなるため、この特例は使えなくなります。
3.どちらが有利か?簡易比較式で考える
では、「精算課税を使って早めに贈与」するのと、
「相続まで持ち続けて小規模宅地特例を使う」のと、
どちらが有利でしょうか。
ここで次のように置きます:
| 記号 | 内容 |
|---|---|
| X | 贈与時の土地評価額 |
| Y | 相続時までの値上がり率(例:1.5倍なら Y=1.5) |
| t | 相続税率(便宜上同一とする) |
精算課税を選ぶ場合:課税対象額=X
相続時に小規模宅地特例を使う場合:課税対象額=0.2 × X × Y(80%減額後)
比較式はこうなります:
X ≶ 0.2XY
これを整理すると:
1 ≶ 0.2Y
⇨ Y ≶ 5
4.結論:「5倍ルール」でざっくり判断
土地が5倍以上に値上がりするなら、
→ 相続時精算課税を使って贈与時点の価格で固定する方が有利。値上がりが5倍未満なら、
→ 相続時精算課税を使わず、相続時に小規模宅地特例(80%減額)を使う方が有利。
もちろん、実際の税額は相続税率や他の財産構成、配偶者控除などによって変わりますが、
この「5倍ルール」は方向性をつかむうえで非常に実務的な目安になります。
5.注意点
相続時精算課税を選ぶと、その贈与者との間では以後すべての贈与が精算課税扱いになり、暦年課税(110万円控除)が使えなくなります。
贈与後に土地を第三者に貸したり、居住をやめたりすると、相続税の非課税メリットが消える可能性があります。
制度選択は**届出が必要(申告期限内に提出)**であり、取り消し不可です。
6.まとめと実務対応
| 比較項目 | 相続時精算課税 | 小規模宅地特例 |
|---|---|---|
| 適用タイミング | 生前贈与時 | 相続時 |
| 評価基準 | 贈与時の価格 | 相続時の価格(最大80%減額) |
| 値上がりリスク | なし(固定) | あり(評価上昇で課税増) |
| 制度の併用 | 不可 | 併用可(他財産次第) |
| 有利になる条件 | 値上がりが大きい | 値上がりが小さい |
7.次のアクション
路線価・倍率方式で**贈与時と相続時の評価差(Y)**を試算する。
相続税率帯(t)を確認し、実効税負担を比較。
贈与後も同居・自宅利用を継続するかを確認。
制度の選択は一度選ぶと取り消せないため、税理士に試算依頼を行う。
📘 参考資料(2025年10月確認)
国税庁『相続時精算課税制度のあらまし』
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4104.htm国税庁『小規模宅地等の特例(居住用)』
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/3302.htm租税特別措置法第69条の4、相続税法第21条の9・15
相続登記の義務化
相続登記の義務化について、2024年(令和6年)4月1日から不動産の相続登記が義務化されてます。
これは相続が発生した際に、不動産の名義を被相続人(亡くなった人)から相続人に変更する登記手続きを義務化する制度です。
義務化の背景と目的
相続登記がおこなわれないことによる所有者不明の土地は、荒れ地として放置されることが多く、防災上の問題、犯罪の温床となり、地域住民の危険性が高まります。
また、相続の権利者が、土地を売却使用としたり、土地の活用をすることが難しくなります。
義化の目的は、これらの問題を解消し、不動産の適正な管理を促進することにあります。
義務化の内容
- 相続登記の申請期限: 相続を知った日から3年以内に、相続登記を行う必要があります。
- 遺産分割がまとまっていない場合: まだ遺産分割の話し合いがまとまっていない場合でも、「相続人申告登記」を行うことが可能です。この手続きでは、各相続人が単独で相続を申告できますが、これは権利移転の効力は持ちません。
対応すべき事項
- 令和6年4月1日より前に相続した不動産: 令和9年3月31日までに相続登記を完了する必要があります。
- 相続した不動産を把握していない場合: 所有不動産記録証明書を取得して、不動産の有無や量を確認することができます(令和8年4月までに施行)。
- 相続登記を行わないままにしておくと、権利関係が複雑になり、後々の相続が増えたり、土地をすぐに売却できないといったデメリットが生じるため、早めの対応が推奨されています。
相続登記の義務を怠った場合
10万円以下の過料が科せられる可能性があります。これは罰金とは異なり、刑事罰にはなりませんが、違反したことへの行政上のペナルティとして適用されます。
所有不動産記録証明制度(2026年2月から)
相続登記義務化のNEWSを書こうと思って調べてていたのですが、所有不動産記録証明制度が2026年2月からスタートするようですね。まだ、ずいぶん先の話になりますが、とても良い制度ですね。
これまでは、相続の対象となる不動産の調査のために、固定資産税通知書や固定資産名寄帳兼課税台帳から所有不動産を確認していました。家族や近しい親族で被相続人のことをよく知っていれば問題がないのですが、一人暮らしの高齢者が死亡し、子供がいないと、相続人である兄弟が亡くなった方の財産のことを知らないことが多いものです。そうなると家捜しをして、発見された資料から確認をしていくしかありません。固定資産税課税通知書があれば、所有不動産の確認ができます。固定資産税通知書がない場合には調査の手がかりがありません。
所有不動産記録証明制度の概要
相続人が全国の不動産を一括で調査できる制度で、2026年2月に開始されます。この制度では、不動産の登記名義人の住所と氏名を基に、不動産の所有状況をリスト化した「所有不動産記録証明書」を発行し、漏れなく不動産を把握できるよう支援します。これにより、相続登記の手続きが簡素化され、相続対策にも活用できます。
この文言だけからでは、住所変更などをしていて、古い住所のままであれば、この所有不動産記録証明制度では確認できないということになります。
使いやすい制度になれば良いですね。
生命保険の非課税枠|藁信博税理士事務所
国税庁の資料によると、相続税の課税対象となった被相続人のうち、約7割の方が、生命保険の非課税枠を活用できていません。
生命保険の非課税枠とは?
預貯金はその全額が相続税の課税対象になりますが、生命保険の死亡保険金を受け取った場合には、相続人一人につき500万円までの金額は、非課税で、相続税がかかりません。(相続税法第12条)
お父様が亡くなって、お母様と子供が2人いれば、1,500万円の非課税枠があることになります。
相続の準備に生命保険を利用することで、残された方に、より多くの財産を残すことができます。
また、生命保険を活用することで、死亡保険金の受取人をあらかじめ指定することができます。
生命保険を上手に利用したいものですね。
相続で注意すべき事 | 税務・会計の専門家 藁総合会計事務所
相続があった場合、相続税を支払うのは相続人です。あなたが亡くなった場合はその配偶者や子供らが相続税を支払う義務が生じます。相続税の節税は何のためにするのかといえば、財産を配偶者や子孫に残すためあるいは負担を最小限に抑えるためといえますが、それには生前に何らかの対策を立てることが必要です。というのも、相続税の節税はいざ相続となってからやりくりするより事前の対策による効果が圧倒的に大きいからです。このことをまず理解しなければなりません。
【自分の財産を点検しよう】
相続税の節税を図るためにはまず、自分の財産を点検することから始めます。その上で節税するための方法を考えます。その際には相続税の仕組みを知ることが重要ですが、要点は2点です。「①相続財産を減らす②財産を節税上有利なものに代える」相続財産を減らすというのは、相続時までに配偶者や子に贈与あるいは売却などを行って、相続時の財産を減らし、相続税を少なくすることです。上手に贈与を繰り返せば、相続税をゼロにすることも可能です。また、相続財産は決められた方法で金額評価されますので、不動産などは実際の売却価額をかけ離れることは少なくありません。従って、不利な財産は早めに処分するとか、評価を下げる方策をして相続時の節税を図ることが重要です。以上のことは、相続開始後に実施するのは困難ですから、事前に対策をする必要があります。
【墓地、仏壇などを取得する】
財産には税法の規定で相続税がかからない非課税財産があります。主なものとして墓地、仏壇、祭具等が挙げられます。これらは、相続開始後に購入した場合にはなんら控除をうけることができません。生前に購入しておけば相続財産に含まれませんので、その購入資金分の相続財産が減少することになり節税が図れます。
【生命保険金の非課税枠を利用する】
相続財産には生命保険金も相続により取得したものとみなされます。ただし、生命保険金については残された家族の生活を支えるものとしての配慮から、五百万円×法定相続人で計算した金額が非課税枠として実際の受け取る生命保険金から控除できます。例えば配偶者と子供2人が法定相続人の場合、五百万円×3人=千五百万円までの生命保険金であれば全額が非課税になります。
【死亡退職金の非課税枠を利用する】
死亡に伴い勤めていた会社から死亡退職金や弔慰金を取得する場合も相続財産とみなさます。死亡退職金については生命保険金同様に、五百万円×法定相続人の人数で計算した金額が非課税枠として受け取る死亡退職金から控除できます。また、弔慰金については役員報酬月額の3年分または6ヶ月分までが非課税枠となります。同族会社の役員であれば、この非課税枠を有効に利用して相続税を節税することができます。
【養子縁組をして相続人を増やす】
法定相続人が多ければ多いほど、相続税の節税が図ることができます。法定相続人を増やす方法としては養子縁組による方法があります。ただし安直な養子縁組はトラブルの要因になりかねませんので、家族で十分に話し合い理解を得ることが必要です。また相続間際の養子縁組など租税回避が明らかとされた場合には認められない場合がありますので、健在な間に進めることが必要です。
【相続財産を基礎控除額以下にする】
基礎控除額とは相続財産の合計額から控除される金額で「三千万円+六百万円×法定相続人の数」で算出されます。例えば亡くなった人に配偶者と子供2人がいる場合、三千万円+六百万円×3人=四千八百万円が基礎控除額となり、相続財産が四千八百万円以下であれば相続税はかかりません。生前に財産を配偶者や子に売却あるいは贈与を行っておいて、相続時には相続財産を基礎控除額以下にすれば相続税の節税対策は完璧です。
【配偶者の税額控除枠を利用する】
配偶者は、配偶者が取得した相続財産が法定相続分以下であれば、その金額が相続税額から控除され、配偶者の相続税額はゼロになります。なお、配偶者の取得財産が一億六千万円以下である場合には、法定相続分を超えていても相続税額はゼロになります。
従って、もし相続財産の総額が一億六千万円以下であれば、その全額を配偶者の取得分とすれば、相続税額はゼロになります。
【相続の放棄は慎重にする】
相続人は相続するか放棄するかを自由に選択できます。債務超過などでない場合に相続を放棄するときは注意が必要です。生前贈与などで相続の必要が無いという場合でも、相続放棄をすると、その分の生命保険金及び死亡退職金の非課税枠が無くなるなどデメリットが生じます。この場合は、相続放棄ではなく「何も相続しない」ということで対処するのが節税につながります。
【相続時精算課税制度を利用する】
生前に贈与された財産は贈与され年に贈与税を納めることになりまが、相続時精算課税制度は、生前までに贈与された財産の合計が二千五百万円でについては贈与税がかからず、相時にその贈与分を精算して相続税を計算します。この制度は贈与財産が二千五百万円にするまでは何年も使うことができ、二千五百万円を超えた場合には税率を一律二十%として納付することになります。言わば税金の後払いですが、この制度を利用すれば贈与時の価格で相続税を計算することとなりますので、確実に値上がる財産などに利用するの有利です。また、この制度は、父母の両方の用を受けることができますので、この場合は非課税枠が2人分の五千万円なります。また、二十歳以上の孫が祖父母から財産を贈与を受けた場合にも適用できます。ただし、一度この方法を行うこと決めた場合取り消すことができませので注意しましょう。
【贈与の非課税制度を利用する】
住宅取得資金、配偶者への居住用住宅の贈与、教育資金について非課税で贈与できる制度があります。これらを利用して、財産を移転しておくことができます。
【孫に財産を贈与する】
相続人への相続開始前三年以内の贈与については、その贈与財産は相続財産に含められます。従って、この場合の贈与による節税策は無意味になります。
ただし、相続権のない孫に対する贈与は相続財産に含められません。孫に対する贈与は、世代の飛び越しですので、相続税の2回の課税を1回で済ませる効果があり、贈与税を支払う方が節税になります。
【貸家にして不動産の評価額を下げる】
何も使用していない土地あるいは建物がある土地については、事前に処置をし、その土地の課税価格を下げましょう。空き地であれば、そこに建物を建て貸家とした場合には、その土地の評価額は借家人の権利分が減額され、一般的に2割程度減少します。併せて貸付用に使用しているとして小規模宅地の特例が適用され二百㎡までは五十%が減額されます。その土地に建物がある場合には、貸家にすると同様の減額ができ、その建物土地ともに評価額を減少できます。
【経営者保険を活用する】
同族会社を経営している人は、経営者保険に加入することで会社の節税をしながら、相続税の納税資金の準備ができます。保険の積立部分は経営者が亡くなったとき、会社が受取り、会社が死亡退職金を支給するという仕組みで、退職金の非課税枠が利用できます。また、支払った退職金や積立分以外の保険料は法人の損金に計上できます。
【入院・葬式費用の領収書をそろえておく】
相続財産は借金などの負債が控除できます。負債と同様に葬儀に要した費用、及び入院費用も控除できます。これらの費用については領収書の収集を忘れがちですので、確認して揃えるようにしましょう。また僧侶へのお布施など領収書が受け取れない場合には、支払額を必ずメモしておきましょう。
【相続争いは絶対に避ける】
遺産の分割に際して、相続争いは節税に全くつながらないばかりか、むしろ逆になります。特定居住用宅地の八十%減額や配偶者の税額軽減も相続の分割が確定して、相続税の申告をすることで適用されますので、申告期限の時に未分割であれば適用されません。
【二次相続を考えて遺産分割をする】
配偶者が財産をどれだけ取得するかで相続税額が大きく変わります。ただし、二次相続を考えて遺産分割することが、トータルとしての相続税の節税になることも考慮しましょう。将来において評価額が上昇する可能性のある土地などは、子供との共有にするとか、将来的に減少していく預貯金などは配偶者が主に相続するなどの分割の財産検討が必要です。
【売却する予定の不動産を共有する】
相続後の節税を考える場合、相続した財産を譲渡した場合の譲渡所得を低くするための検討が必要です。居住用財産を譲渡した場合、譲渡益から三千万円を控除することができますが、もし、居住用財産を共有にしていた場合、共有者ごとにそれぞれ三千万円の控除を受けることができます。所得税の譲渡の控除は個々で受けれますので、有効に利用するには、財産を共有で相続するのが良いでしょう。
【バランス良く組み合わせる】
相続税の節税を効果が大きそうな対策一つだけで済まそうとして、逆に借入金の返済に困るなどの笑えない話があります。一つ一つの効果が小さくても、バランス良くリスクの低いものを組み合わせることにより、大きな効果を生むことができます。対策は積極的に、でも無理なく進めていきましょう。
令和5年審査請求の概要の公表 | 税務・会計の専門家 藁総合会計事務所
審査請求は、納税者が税務署長や国税局長の処分に不服がある場合に、国税不服審判所に取消しや変更を求める制度です。
処分をした税務署長や国税局長ではなく、国税不服審判所が公正な第三者の立場で、納税者の正当な権利利益の救済を図ることを目的となっています。
令和5年度には3,917件の審査請求がありました。
理岩5年の審査請求の処理件数は2,873件で、認容割合は9.7%で、納税者にとっては厳しい判断をくだされています。
戸籍広域交付制度(令和6年3月1日から) | 税務・会計の専門家 藁総合会計事務所
戸籍広域交付とは
本籍地でのみ交付していた戸籍証明書等が最寄りの区市町村窓口で取得できます。
例えば、品川区在住・在勤で本籍地が目黒区にある人も、品川区の区役所・支所で請求ができます。
広域交付の対象にならない証明書
以下の証明書は、戸籍のある市区町村(本籍地)にご請求ください。
- 戸籍一部事項証明書、戸籍個人事項証明書
- 除籍一部事項証明書、除籍個人事項証明書
- 除籍抄本
- 再製原戸籍
- 改製不適合戸籍
- 告知書
広域交付で証明書を請求できる人
- 本人
- 配偶者
- 父母、祖父母等(直系尊属)
- 子、孫等(直系卑属)
※兄弟・姉妹、法定代理人、委任状による代理人請求は不可
交付を受けるために必要なもの
窓口に来た方の本人確認書類1点(顔写真付きのもの)
広域交付制度のパンフレット
2024年から変わる新NISA | 税務・会計の専門家 藁総合会計事務所
■はじめに
NISAが変わりますと見聞きしたことがある人も多いと思いますが、そもそも、NISAとはなんでしょうか。通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して利益がでたり、配当を受け取った場合には、利益や、配当に対して約20%の税金がかかります。NISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり税金がかからなくなる制度です。イギリスのISA(Individual Savings Acount=個人貯蓄口座)をモデルとした日本版ISAとして、NISA(Nippon Individual Savings Account)という愛称がついています。2023年までのNISAは、成人が利用できる一般NISA、つみたてNISA、未成年が利用できるジュニアNISAの3種類があります。一般NISAは、株式、投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。つみたてNISAは、一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有できます。ジュニアNISAは、株式、投資信託等を年間80万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。なお、2020年度制度改正において、ジュニアNISAについては、新規の口座開設が2023年までとされ、2024年以降は新規購入ができないこととされました。また、令和5年度制度改正の大綱等において、2024年以降のNISA制度の抜本的拡充・恒久化の方針が示されました。
■新NISAで変わること
1.つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能に
2023年までのNISA制度は、「つみたてNISA」と「一般NISA」があり、どちらかを選択する方式ですが、新NISA制度では、これが一体化されます。つみたてNISAは「つみたて投資枠」、一般NISAは「成長投資枠」とそれぞれ名称が変わり、併用が可能になります。
2.年間投資枠が最大360万円に拡大
2023年までのNISA制度での年間投資枠は、つみたてNISAを選んだ場合は40万円、一般NISAを選んだ場合は120万円ですが、新NISA制度では、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円、併せて年間360万円と大幅に拡大します。
3.非課税保有限度額が最大1800万円に
新NISA制度では「非課税保有限度額」が新設され、買付金額ベースで一人あたり合計1800万円(成長投資枠は1200万円)に設定されました。さらに、2023年までのNISA制度では商品を売却しても非課税枠は復活しませんが、新NISA制度では売却した場合、その非課税保有限度額が翌年以降に復活して再利用が可能となります。
4.非課税保有期間の無期限化
2023年までのNISA制度では、一般NISAで5年間、つみたてNISAで20年間と、非課税保有期間が限られており、一般NISAでは非課税保有期間を延長する場合には移管手続きが必要でした。しかし、新NISA制度では、非課税保有期間がつみたて投資枠、成長投資枠ともに無期限となるため、移管の手続きは不要となりました。
5.新NISAと2023年までのNISAの口座は別枠
新NISA制度の非課税保有限度額は、2023年までのNISA制度とは別枠とみなされます。つまり、つみたてNISAまたは一般NISAで保有している資産は、2024年以降、新NISAの非課税保有限度額とは別に保有することが可能です。ただし、2023年までのNISA制度での新規買い付けが可能なのは2023年中となりますので、ご注意ください。
■「つみたて投資枠」「成長投資枠」とは?
「つみたて投資枠」は、長期の積立、分散投資に適した一定の投資信託(金融庁の基準を満たした投資信託に限定)。「成長投資枠」は、上場株式、投資信託等で、整理、監理銘柄、信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託及びデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外しています。なお、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を別々の金融機関で利用することはできません。
税理士 藁信博(