人が亡くなったときに必要となる行政・社会的な手続き(税務を除く) —いざというときに慌てないための実務ガイド—
1.導入:いざという時に「何から始めるか」が分からない
ご家族や身近な方が亡くなったとき、多くの人が直面するのが「何を、どこに、いつまでに届け出ればいいのか分からない」という戸惑いです。
税金の申告や相続の話はよく耳にしますが、その前段階として必要となる行政手続きや社会保険・年金・公共料金の対応は、思いのほか煩雑です。
特に、企業経営者やバックオフィスの担当者は、社員や役員のご家族から相談を受けることもあります。制度を正確に理解しておくことは、業務上の支援にも役立ちます。
2.制度解説:死亡届を起点とする一連の手続き
人が亡くなったときの最初の手続きは「死亡届」です。これは戸籍法第86条に基づく届出で、死亡の事実を知った日から7日以内に、市区町村役場へ提出する必要があります。
医師が発行する「死亡診断書(または死体検案書)」を添付し、届出を行うと「火葬許可証」や「埋葬許可証」が交付されます。ここから、葬儀・火葬・埋葬の手続きが始まります。
続いて重要なのが、健康保険・年金・各種社会保険の資格喪失届です。
国民健康保険加入者:市区町村役場へ「資格喪失届」+「葬祭費(3~7万円)」の申請
社会保険加入者:勤務先を通じて健康保険組合等へ「埋葬料(5万円)」の請求
年金受給者:年金事務所へ「年金受給権者死亡届」提出、未支給年金の請求手続き
これらはいずれも14日以内が目安とされます。
3.実務上の判断軸:名義・契約・デジタル資産も忘れずに
行政手続きに加えて、実務上は「名義変更・解約・資産確認」も同時並行で行う必要があります。
主な対象は以下の通りです。
| 区分 | 主な対応先 | 注意点 |
|---|---|---|
| 公共料金・通信 | 電気・ガス・水道・携帯電話・インターネット | 解約や名義変更の連絡を速やかに |
| 金融機関 | 銀行・証券会社 | 預金は死亡届により凍結されるため、相続手続きが必要 |
| クレジットカード・保険 | 各社窓口 | 自動引落しの停止・保険金請求を忘れずに |
| デジタル資産 | スマートフォン・SNS・クラウドサービス | ログイン情報の管理・削除手続きを家族が行う必要あり |
特に近年は、スマートフォン内に契約情報・電子通帳・写真・SNSなど、個人の「デジタル遺産」が集中しており、適切な引き継ぎが課題となっています。
4.よくある誤解と修正
誤解①:「死亡届を出せば年金も自動で止まる」
→ 年金受給権者死亡届を別途、年金事務所へ提出しないと支給が継続されてしまうことがあります。誤解②:「口座は相続人が自由に引き出せる」
→ 死亡が確認されると銀行は預金口座を凍結します。遺言書や遺産分割協議書に基づいた正式手続きが必要です。誤解③:「保険会社が自動的に連絡してくれる」
→ 生命保険金や共済金の請求は「申請主義」です。放置すると時効(3年)により受取れない場合もあります。
このような「思い込み」や「連絡漏れ」により、後日トラブルになるケースは少なくありません。
5.現場で役立つチェックポイント
葬儀から1か月以内に整理しておくべき主要な手続きを、以下にまとめます。
| 時期 | 手続き内容 | 提出先 |
|---|---|---|
| 死亡当日〜7日以内 | 死亡届、火葬許可証の交付 | 市区町村役場 |
| 葬儀後〜14日以内 | 健康保険・年金の資格喪失届、葬祭費・埋葬料請求 | 市区町村・年金事務所・勤務先 |
| 1か月以内 | 保険金・弔慰金・未支給年金の請求、公共料金・通信の名義変更 | 各契約先 |
| 3か月以内 | 銀行・証券・ローン契約などの解約・相続関連手続き | 各金融機関 |
| 随時 | デジタル資産(スマホ・SNS等)の整理 | 各サービス事業者 |
必要に応じて、葬儀社や行政書士、社会保険労務士などと連携することで、家族の負担を軽減できます。
6.まとめ:制度理解が「安心」につながる
人が亡くなったときの手続きは、税務や相続以前に、生活上・社会的な整理が欠かせません。
葬儀後の短期間に多くの届出や名義変更を要するため、**「誰が、どの窓口に、いつまでに」**を把握しておくことが、混乱を防ぐ第一歩です。
事前に家族で情報を共有し、必要書類(保険証・年金手帳・通帳・マイナンバーカードなど)をまとめておくことで、万一の際も落ち着いて対応できます。
相続時精算課税を選ぶべきか?―小規模宅地特例との比較で考える
1.相続時精算課税とは
「相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)」とは、
60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫に贈与をした際に選択できる制度です。
この制度を選ぶと、2,500万円までの贈与は非課税(特別控除)となり、
超える部分には一律20%の贈与税がかかります。
ただし、「精算課税」という名のとおり、
その贈与財産は相続時に贈与時の価額で相続財産に加算され、
最終的に相続税を再計算して過不足を精算する仕組みになっています。
したがって、
贈与時の評価で相続財産に組み込まれる
相続時の値上がり分は課税されない
という特徴があります。
2.小規模宅地等の特例との関係
一方で、「小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)」は、
被相続人の自宅や事業用の土地について、一定の条件を満たすと評価額を最大80%減額できる制度です。
しかし、相続時精算課税で生前に贈与してしまうと、その土地は相続財産ではなくなるため、この特例は使えなくなります。
3.どちらが有利か?簡易比較式で考える
では、「精算課税を使って早めに贈与」するのと、
「相続まで持ち続けて小規模宅地特例を使う」のと、
どちらが有利でしょうか。
ここで次のように置きます:
| 記号 | 内容 |
|---|---|
| X | 贈与時の土地評価額 |
| Y | 相続時までの値上がり率(例:1.5倍なら Y=1.5) |
| t | 相続税率(便宜上同一とする) |
精算課税を選ぶ場合:課税対象額=X
相続時に小規模宅地特例を使う場合:課税対象額=0.2 × X × Y(80%減額後)
比較式はこうなります:
X ≶ 0.2XY
これを整理すると:
1 ≶ 0.2Y
⇨ Y ≶ 5
4.結論:「5倍ルール」でざっくり判断
土地が5倍以上に値上がりするなら、
→ 相続時精算課税を使って贈与時点の価格で固定する方が有利。値上がりが5倍未満なら、
→ 相続時精算課税を使わず、相続時に小規模宅地特例(80%減額)を使う方が有利。
もちろん、実際の税額は相続税率や他の財産構成、配偶者控除などによって変わりますが、
この「5倍ルール」は方向性をつかむうえで非常に実務的な目安になります。
5.注意点
相続時精算課税を選ぶと、その贈与者との間では以後すべての贈与が精算課税扱いになり、暦年課税(110万円控除)が使えなくなります。
贈与後に土地を第三者に貸したり、居住をやめたりすると、相続税の非課税メリットが消える可能性があります。
制度選択は**届出が必要(申告期限内に提出)**であり、取り消し不可です。
6.まとめと実務対応
| 比較項目 | 相続時精算課税 | 小規模宅地特例 |
|---|---|---|
| 適用タイミング | 生前贈与時 | 相続時 |
| 評価基準 | 贈与時の価格 | 相続時の価格(最大80%減額) |
| 値上がりリスク | なし(固定) | あり(評価上昇で課税増) |
| 制度の併用 | 不可 | 併用可(他財産次第) |
| 有利になる条件 | 値上がりが大きい | 値上がりが小さい |
7.次のアクション
路線価・倍率方式で**贈与時と相続時の評価差(Y)**を試算する。
相続税率帯(t)を確認し、実効税負担を比較。
贈与後も同居・自宅利用を継続するかを確認。
制度の選択は一度選ぶと取り消せないため、税理士に試算依頼を行う。
📘 参考資料(2025年10月確認)
国税庁『相続時精算課税制度のあらまし』
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4104.htm国税庁『小規模宅地等の特例(居住用)』
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/3302.htm租税特別措置法第69条の4、相続税法第21条の9・15
令和6年路線価は、正誤表を必ず確認して!
令和6年路線価図は、必ず正誤表を確認してください。
東京局の荏原税務署管内と目黒税務署管内の一部の地域の「路線価図等の正誤表」(令和6年12月12日)が掲載されています。
令和7年1月15日(水)現在、路線価図は訂正されていないので、必ず正誤表を確認する必要があります。
国税庁の相続税の事績、調査の状況から読み取れ!
国税庁が公表した「相続税申告の状況について(令和5年事務年度分)」および「相続税調査の状況について(令和5年事務年度分)」という2つのデータから、納税者が相続において、どのようなトラブルや追加負担が防げるかについて説明します。
1. 相続税申告件数や課税件数の傾向から学ぶこと
公表データからは、毎年死亡者のうち約10%の死亡者の遺産が相続税の申告の対象となっています。平成27年の相続税の基礎控除の引き上げによりそれまでの相続税の申告割りありが4.4%から8%に、その後現在の9.9%に増え続きています。
そして、令和5年事務年度の相続税の税収は約3兆円となり、改正以前の1.4兆円から大幅に増えています。
早めの情報収集と試算
相続発生前から大まかな遺産総額や借入金などを整理し、相続税が発生しそうか、申告対象になりそうかを見極めることが重要です。事前におおよその資産評価を行うことで、相続税申告の必要性や、どの程度の税負担が見込まれるかを把握できます。
基礎控除と課税ラインの理解
相続税には基礎控除がありますが、最近の地価上昇や金融資産増大などにより、控除を上回り課税対象となるケースも少なくありません。基礎控除額や法定相続人の数、課税対象となる財産の範囲を正確に理解し、自身が該当するかどうかを把握することが大切です。
2. 相続税調査の状況から見える注意点
相続税調査データでは、1年間で実地調査を8,500件、簡易な接触を18,000件を処理をし、そのうち実地調査では84.2%、簡易な接触では27%の誤りや不正申告を見つけ出しています。約155,000件の約5.5%の実地調査、11.6%の簡易な接触をして居ることになります。これらの数値から、多いとか、少ないとかの判断はそれぞれにお任せするとして、いずれにせよ申告漏れが発生し加算税や重加算税が課税されていることには変わりありません。
このようなトラブルに巻き込まれないように、以下のことに気をつけるべきです。
財産目録の正確な作成:
相続財産には、現金・預貯金・有価証券・不動産のみならず、死亡退職金、生命保険金、海外資産、美術品・骨董品といった動産、さらには相続時に慌ただしく見落としがちな財産まで含まれます。すべての対象財産を正確に洗い出し、申告漏れを防ぐためには、故人が生前に資産リストを整備しておくことや、相続人自身が複数の金融機関や証券会社、保険会社へ照会して正確な情報を得ることが求められます。
適正な財産評価と専門家活用:
調査結果からは、不動産評価の誤りや、株式等の評価が適正でない事例が散見されることが推測されます。不動産は路線価評価が基本ですが、特殊な地形や権利関係による減額要因、また非上場株式の評価は複雑な計算を要します。こうした評価ミスが後から判明すると追徴税が発生し、余計な負担となります。財産評価に不安がある場合、税理士や不動産鑑定士などの専門家に早めに相談し、評価の正確性を高めることが重要です。
海外資産や特殊財産の申告漏れ防止:
国際化に伴い、海外口座や海外不動産などを所有する人も増えていますが、海外資産も相続税の対象です。税務当局は近年、各国間の情報交換協定強化や金融情報共有を通じて海外資産の捕捉力を高めています。海外資産をうっかり申告漏れすることはリスクが大きく、後に調査で発覚すると多額の追徴税やペナルティを科される可能性があります。海外資産がある場合は、専門家や金融機関と相談し、透明性を確保することが肝要です。
3. 前年度比較や長期傾向から読み取れる注意点
相続税制改正への備え:
過去に相続税の基礎控除が引き下げられた際、多くの人が急に課税対象となりました。今後も税制改正や、不動産や株式市場動向、金融資産の評価ルール変更などが起こり得ます。こうした社会・制度変化に柔軟に対応するため、定期的に財産状況を見直し、相続税計算のシミュレーションを行いましょう。
早期の相続対策(生前贈与や信託など)の検討:
相続時点で慌てて対策をしても効果は限定的です。生前贈与や住宅取得資金贈与、生命保険の活用、遺言信託の設定など、長期的な視点で課税額を抑える方法は多様です。最新の調査傾向を踏まえ、税務当局が関心を強めている分野(例えば海外資産、未申告財産、複雑な財産評価スキームなど)を把握し、それらを正しく処理するための対策を時間をかけて検討することが得策です。
4. コンプライアンス意識と信頼関係の構築
調査結果からは、意図的な不正申告だけでなく、知識不足や手続きの不慣れによるミスも少なくないことが窺えます。
正確な申告とコンプライアンス重視:
相続税に対して誠実に向き合い、適正かつ正確な申告を行うことで、後日の調査で追加課税やトラブルを回避できます。特に相続税は、相続人間の関係性や相続財産の分配にも影響するため、公正な手続きと透明性は、親族間の紛争防止にも寄与します。
専門家との連携:
税理士などの専門家は、単なる計算業務以上の役割を果たし得ます。相続人間の合意形成、財産評価の見直し、書類整備、法的手続きなどのトータルサポートによって、申告の正確性や円滑化を図ることができます。その結果、税務当局との無用な対立を避け、将来的なリスクを大幅に低減することが可能です。
まとめ
一般の納税者にとって重要なのは、日頃から正確な資産把握と評価方法を理解し、必要に応じて専門家を活用することです。また、法改正や市場動向に常にアンテナを張り、必要ならば生前贈与や信託などの相続対策を講じることで、調査リスクや将来のトラブルを最小限に抑えることができます。コンプライアンス意識を高め、透明性・適正性を重視した相続準備を行うことで、スムーズかつ公平な相続手続きと、不要な税務上のリスク回避が期待できます。
生命保険予定利率引き上げ
日本生命保険では保険の契約者に約束する利回り(予定利率)を2025年1月に引き上げます。予定利率上げは約40年ぶりとなります。同業各社も同様に引き上げをおこなう旨の報道がされています。
生命保険の予定利率が上がることによるメリットと、相続税における生命保険金の非課税制度について説明します。
生命保険と相続税の非課税制度
相続税の計算において、生命保険金は「500万円×法定相続人の数」という非課税限度額が適用されます(参考:国税庁ウェブサイト)。これは死亡保険金が遺族の生活保障という性質を持つことから、一定額まで相続税の対象から外す仕組みです。そのため、被相続人が生前に保険料を負担することで、現預金や有価証券を減らし、死亡保険金として非課税枠内での財産移転を行うことが可能になります。この非課税枠は、高額資産を保有する層にとって、相続税負担軽減の有効な手段となりえます。
予定利率とは
予定利率とは、生命保険会社が保険料や解約返戻金、将来の運用見込みを計算する際に用いる「想定される運用利回り」のことです。この予定利率は市場の金利環境に影響を受け、長期的な低金利時代が続くと保険会社は予定利率を引き下げる傾向にあります。逆に、金利上昇局面では予定利率が引き上げられる可能性もあります。この変動は、保険商品の貯蓄性や死亡保障部分のバランス、評価額に影響を及ぼし、結果的に相続税対策上の戦略にも関わってきます。
予定利率が上がる場合のメリット
金利上昇局面などで予定利率が上がれば、保険商品の貯蓄性が高まり、将来的な解約返戻金や満期返戻金の増加が見込めます。この状況は主に次のような点でメリットとなります。
資産形成効果の向上:予定利率が高い保険は、同一保険料でもより多くの返戻金を将来得られる可能性があります。相続発生前の段階で資産を効率的に増やし、最終的には死亡保険金として遺族へ移転することで、生活保障や納税資金確保に余裕を持たせられます。
運用効率の改善:貯蓄性の高い保険は、低リスクで長期的な運用を行う手段として有効です。相続時に保険金を受け取るまでの間、相続人にとっては利率上昇により有利な条件で保険価値が育つことになり、トータルで得られる経済価値が拡大します。
まとめ
生命保険は、相続税対策として「非課税枠」という明確な優遇措置を活用できる希少な金融商品です。予定利率の引き下げは、相続発生時の評価額抑制や純粋な死亡保障強化を通じた節税効果につながる一方、予定利率の上昇は、貯蓄性向上による資産形成効果と受取時の保障強化というメリットをもたらします。どちらの局面においても、生命保険は相続対策や納税資金確保の手段として有効であり、市場環境を踏まえて契約内容を見直すことで、より有利な相続設計が可能となると言えるでしょう。
相続登記の義務化
相続登記の義務化について、2024年(令和6年)4月1日から不動産の相続登記が義務化されてます。
これは相続が発生した際に、不動産の名義を被相続人(亡くなった人)から相続人に変更する登記手続きを義務化する制度です。
義務化の背景と目的
相続登記がおこなわれないことによる所有者不明の土地は、荒れ地として放置されることが多く、防災上の問題、犯罪の温床となり、地域住民の危険性が高まります。
また、相続の権利者が、土地を売却使用としたり、土地の活用をすることが難しくなります。
義化の目的は、これらの問題を解消し、不動産の適正な管理を促進することにあります。
義務化の内容
- 相続登記の申請期限: 相続を知った日から3年以内に、相続登記を行う必要があります。
- 遺産分割がまとまっていない場合: まだ遺産分割の話し合いがまとまっていない場合でも、「相続人申告登記」を行うことが可能です。この手続きでは、各相続人が単独で相続を申告できますが、これは権利移転の効力は持ちません。
対応すべき事項
- 令和6年4月1日より前に相続した不動産: 令和9年3月31日までに相続登記を完了する必要があります。
- 相続した不動産を把握していない場合: 所有不動産記録証明書を取得して、不動産の有無や量を確認することができます(令和8年4月までに施行)。
- 相続登記を行わないままにしておくと、権利関係が複雑になり、後々の相続が増えたり、土地をすぐに売却できないといったデメリットが生じるため、早めの対応が推奨されています。
相続登記の義務を怠った場合
10万円以下の過料が科せられる可能性があります。これは罰金とは異なり、刑事罰にはなりませんが、違反したことへの行政上のペナルティとして適用されます。
所有不動産記録証明制度(2026年2月から)
相続登記義務化のNEWSを書こうと思って調べてていたのですが、所有不動産記録証明制度が2026年2月からスタートするようですね。まだ、ずいぶん先の話になりますが、とても良い制度ですね。
これまでは、相続の対象となる不動産の調査のために、固定資産税通知書や固定資産名寄帳兼課税台帳から所有不動産を確認していました。家族や近しい親族で被相続人のことをよく知っていれば問題がないのですが、一人暮らしの高齢者が死亡し、子供がいないと、相続人である兄弟が亡くなった方の財産のことを知らないことが多いものです。そうなると家捜しをして、発見された資料から確認をしていくしかありません。固定資産税課税通知書があれば、所有不動産の確認ができます。固定資産税通知書がない場合には調査の手がかりがありません。
所有不動産記録証明制度の概要
相続人が全国の不動産を一括で調査できる制度で、2026年2月に開始されます。この制度では、不動産の登記名義人の住所と氏名を基に、不動産の所有状況をリスト化した「所有不動産記録証明書」を発行し、漏れなく不動産を把握できるよう支援します。これにより、相続登記の手続きが簡素化され、相続対策にも活用できます。
この文言だけからでは、住所変更などをしていて、古い住所のままであれば、この所有不動産記録証明制度では確認できないということになります。
使いやすい制度になれば良いですね。
生命保険の非課税枠|藁信博税理士事務所
国税庁の資料によると、相続税の課税対象となった被相続人のうち、約7割の方が、生命保険の非課税枠を活用できていません。
生命保険の非課税枠とは?
預貯金はその全額が相続税の課税対象になりますが、生命保険の死亡保険金を受け取った場合には、相続人一人につき500万円までの金額は、非課税で、相続税がかかりません。(相続税法第12条)
お父様が亡くなって、お母様と子供が2人いれば、1,500万円の非課税枠があることになります。
相続の準備に生命保険を利用することで、残された方に、より多くの財産を残すことができます。
また、生命保険を活用することで、死亡保険金の受取人をあらかじめ指定することができます。
生命保険を上手に利用したいものですね。
相続で注意すべき事 | 税務・会計の専門家 藁総合会計事務所
相続があった場合、相続税を支払うのは相続人です。あなたが亡くなった場合はその配偶者や子供らが相続税を支払う義務が生じます。相続税の節税は何のためにするのかといえば、財産を配偶者や子孫に残すためあるいは負担を最小限に抑えるためといえますが、それには生前に何らかの対策を立てることが必要です。というのも、相続税の節税はいざ相続となってからやりくりするより事前の対策による効果が圧倒的に大きいからです。このことをまず理解しなければなりません。
【自分の財産を点検しよう】
相続税の節税を図るためにはまず、自分の財産を点検することから始めます。その上で節税するための方法を考えます。その際には相続税の仕組みを知ることが重要ですが、要点は2点です。「①相続財産を減らす②財産を節税上有利なものに代える」相続財産を減らすというのは、相続時までに配偶者や子に贈与あるいは売却などを行って、相続時の財産を減らし、相続税を少なくすることです。上手に贈与を繰り返せば、相続税をゼロにすることも可能です。また、相続財産は決められた方法で金額評価されますので、不動産などは実際の売却価額をかけ離れることは少なくありません。従って、不利な財産は早めに処分するとか、評価を下げる方策をして相続時の節税を図ることが重要です。以上のことは、相続開始後に実施するのは困難ですから、事前に対策をする必要があります。
【墓地、仏壇などを取得する】
財産には税法の規定で相続税がかからない非課税財産があります。主なものとして墓地、仏壇、祭具等が挙げられます。これらは、相続開始後に購入した場合にはなんら控除をうけることができません。生前に購入しておけば相続財産に含まれませんので、その購入資金分の相続財産が減少することになり節税が図れます。
【生命保険金の非課税枠を利用する】
相続財産には生命保険金も相続により取得したものとみなされます。ただし、生命保険金については残された家族の生活を支えるものとしての配慮から、五百万円×法定相続人で計算した金額が非課税枠として実際の受け取る生命保険金から控除できます。例えば配偶者と子供2人が法定相続人の場合、五百万円×3人=千五百万円までの生命保険金であれば全額が非課税になります。
【死亡退職金の非課税枠を利用する】
死亡に伴い勤めていた会社から死亡退職金や弔慰金を取得する場合も相続財産とみなさます。死亡退職金については生命保険金同様に、五百万円×法定相続人の人数で計算した金額が非課税枠として受け取る死亡退職金から控除できます。また、弔慰金については役員報酬月額の3年分または6ヶ月分までが非課税枠となります。同族会社の役員であれば、この非課税枠を有効に利用して相続税を節税することができます。
【養子縁組をして相続人を増やす】
法定相続人が多ければ多いほど、相続税の節税が図ることができます。法定相続人を増やす方法としては養子縁組による方法があります。ただし安直な養子縁組はトラブルの要因になりかねませんので、家族で十分に話し合い理解を得ることが必要です。また相続間際の養子縁組など租税回避が明らかとされた場合には認められない場合がありますので、健在な間に進めることが必要です。
【相続財産を基礎控除額以下にする】
基礎控除額とは相続財産の合計額から控除される金額で「三千万円+六百万円×法定相続人の数」で算出されます。例えば亡くなった人に配偶者と子供2人がいる場合、三千万円+六百万円×3人=四千八百万円が基礎控除額となり、相続財産が四千八百万円以下であれば相続税はかかりません。生前に財産を配偶者や子に売却あるいは贈与を行っておいて、相続時には相続財産を基礎控除額以下にすれば相続税の節税対策は完璧です。
【配偶者の税額控除枠を利用する】
配偶者は、配偶者が取得した相続財産が法定相続分以下であれば、その金額が相続税額から控除され、配偶者の相続税額はゼロになります。なお、配偶者の取得財産が一億六千万円以下である場合には、法定相続分を超えていても相続税額はゼロになります。
従って、もし相続財産の総額が一億六千万円以下であれば、その全額を配偶者の取得分とすれば、相続税額はゼロになります。
【相続の放棄は慎重にする】
相続人は相続するか放棄するかを自由に選択できます。債務超過などでない場合に相続を放棄するときは注意が必要です。生前贈与などで相続の必要が無いという場合でも、相続放棄をすると、その分の生命保険金及び死亡退職金の非課税枠が無くなるなどデメリットが生じます。この場合は、相続放棄ではなく「何も相続しない」ということで対処するのが節税につながります。
【相続時精算課税制度を利用する】
生前に贈与された財産は贈与され年に贈与税を納めることになりまが、相続時精算課税制度は、生前までに贈与された財産の合計が二千五百万円でについては贈与税がかからず、相時にその贈与分を精算して相続税を計算します。この制度は贈与財産が二千五百万円にするまでは何年も使うことができ、二千五百万円を超えた場合には税率を一律二十%として納付することになります。言わば税金の後払いですが、この制度を利用すれば贈与時の価格で相続税を計算することとなりますので、確実に値上がる財産などに利用するの有利です。また、この制度は、父母の両方の用を受けることができますので、この場合は非課税枠が2人分の五千万円なります。また、二十歳以上の孫が祖父母から財産を贈与を受けた場合にも適用できます。ただし、一度この方法を行うこと決めた場合取り消すことができませので注意しましょう。
【贈与の非課税制度を利用する】
住宅取得資金、配偶者への居住用住宅の贈与、教育資金について非課税で贈与できる制度があります。これらを利用して、財産を移転しておくことができます。
【孫に財産を贈与する】
相続人への相続開始前三年以内の贈与については、その贈与財産は相続財産に含められます。従って、この場合の贈与による節税策は無意味になります。
ただし、相続権のない孫に対する贈与は相続財産に含められません。孫に対する贈与は、世代の飛び越しですので、相続税の2回の課税を1回で済ませる効果があり、贈与税を支払う方が節税になります。
【貸家にして不動産の評価額を下げる】
何も使用していない土地あるいは建物がある土地については、事前に処置をし、その土地の課税価格を下げましょう。空き地であれば、そこに建物を建て貸家とした場合には、その土地の評価額は借家人の権利分が減額され、一般的に2割程度減少します。併せて貸付用に使用しているとして小規模宅地の特例が適用され二百㎡までは五十%が減額されます。その土地に建物がある場合には、貸家にすると同様の減額ができ、その建物土地ともに評価額を減少できます。
【経営者保険を活用する】
同族会社を経営している人は、経営者保険に加入することで会社の節税をしながら、相続税の納税資金の準備ができます。保険の積立部分は経営者が亡くなったとき、会社が受取り、会社が死亡退職金を支給するという仕組みで、退職金の非課税枠が利用できます。また、支払った退職金や積立分以外の保険料は法人の損金に計上できます。
【入院・葬式費用の領収書をそろえておく】
相続財産は借金などの負債が控除できます。負債と同様に葬儀に要した費用、及び入院費用も控除できます。これらの費用については領収書の収集を忘れがちですので、確認して揃えるようにしましょう。また僧侶へのお布施など領収書が受け取れない場合には、支払額を必ずメモしておきましょう。
【相続争いは絶対に避ける】
遺産の分割に際して、相続争いは節税に全くつながらないばかりか、むしろ逆になります。特定居住用宅地の八十%減額や配偶者の税額軽減も相続の分割が確定して、相続税の申告をすることで適用されますので、申告期限の時に未分割であれば適用されません。
【二次相続を考えて遺産分割をする】
配偶者が財産をどれだけ取得するかで相続税額が大きく変わります。ただし、二次相続を考えて遺産分割することが、トータルとしての相続税の節税になることも考慮しましょう。将来において評価額が上昇する可能性のある土地などは、子供との共有にするとか、将来的に減少していく預貯金などは配偶者が主に相続するなどの分割の財産検討が必要です。
【売却する予定の不動産を共有する】
相続後の節税を考える場合、相続した財産を譲渡した場合の譲渡所得を低くするための検討が必要です。居住用財産を譲渡した場合、譲渡益から三千万円を控除することができますが、もし、居住用財産を共有にしていた場合、共有者ごとにそれぞれ三千万円の控除を受けることができます。所得税の譲渡の控除は個々で受けれますので、有効に利用するには、財産を共有で相続するのが良いでしょう。
【バランス良く組み合わせる】
相続税の節税を効果が大きそうな対策一つだけで済まそうとして、逆に借入金の返済に困るなどの笑えない話があります。一つ一つの効果が小さくても、バランス良くリスクの低いものを組み合わせることにより、大きな効果を生むことができます。対策は積極的に、でも無理なく進めていきましょう。
令和6年の路線価の公表 | 税務・会計の専門家 藁総合会計事務所
2024年7月1日、国税庁は令和6年度の路線価を公表しました。全国平均では前年より上昇しており、特に東京都中央区銀座や大阪市北区などの主要商業地での上昇が顕著です。横浜市や名古屋市などでも同様の傾向が見られます。これにより、相続税や贈与税の評価額が変動するため、相続税の申告に影響を与えることが予想されます。
路線価とは
路線価は、国税庁が毎年公表する土地の評価額を示す指標で、道路に面する土地の1平方メートルあたりの価格を指します。相続税や贈与税の算定基準として利用され、公示地価の約80%程度で設定されます。
税理士 藁信博(