生命保険予定利率引き上げ
日本生命保険では保険の契約者に約束する利回り(予定利率)を2025年1月に引き上げます。予定利率上げは約40年ぶりとなります。同業各社も同様に引き上げをおこなう旨の報道がされています。
生命保険の予定利率が上がることによるメリットと、相続税における生命保険金の非課税制度について説明します。
生命保険と相続税の非課税制度
相続税の計算において、生命保険金は「500万円×法定相続人の数」という非課税限度額が適用されます(参考:国税庁ウェブサイト)。これは死亡保険金が遺族の生活保障という性質を持つことから、一定額まで相続税の対象から外す仕組みです。そのため、被相続人が生前に保険料を負担することで、現預金や有価証券を減らし、死亡保険金として非課税枠内での財産移転を行うことが可能になります。この非課税枠は、高額資産を保有する層にとって、相続税負担軽減の有効な手段となりえます。
M&Aに係るトラブル(悪質)
悪質なM&Aが発生しているようです。
例えば、経営者の連帯保証つきの借金がある会社の株式をM&Aで株式を取得し、あえて旧経営者の連帯保証を解除せずに、買い手の新しい経営者が会社を倒産させ、連帯保証のために旧経営者の借金の返済の義務が残っているという悪質な行為です。
中小企業庁では、譲り渡し側の経営者保証を引受けることなく、譲り渡し側の現預金等の資産を移 行し、譲り渡し側の支払いに問題を生じさせ、倒産に至らせるといった行為を複数 回にわたって実施した不適切な譲り受け側の存在が指摘しています。 中小企業庁としては、令和 6 年 8 月 30 日に「中小 M&A ガイドライン(第3 版)」(以下「中小 M&A ガイドライン」という。)を公表し、経営者保証の扱いに 係る対応及び不適切な譲り受け側の排除のための対応等、仲介者・FA に求められ る対応について示し、遵守徹底を求めているところです。
売り手側は、売ってしまえば、お終りではないことを、肝に銘じなければなりません。
慎重な行動が必要です。
相続登記の義務化
相続登記の義務化について、2024年(令和6年)4月1日から不動産の相続登記が義務化されてます。
これは相続が発生した際に、不動産の名義を被相続人(亡くなった人)から相続人に変更する登記手続きを義務化する制度です。
義務化の背景と目的
相続登記がおこなわれないことによる所有者不明の土地は、荒れ地として放置されることが多く、防災上の問題、犯罪の温床となり、地域住民の危険性が高まります。
また、相続の権利者が、土地を売却使用としたり、土地の活用をすることが難しくなります。
義化の目的は、これらの問題を解消し、不動産の適正な管理を促進することにあります。
義務化の内容
- 相続登記の申請期限: 相続を知った日から3年以内に、相続登記を行う必要があります。
- 遺産分割がまとまっていない場合: まだ遺産分割の話し合いがまとまっていない場合でも、「相続人申告登記」を行うことが可能です。この手続きでは、各相続人が単独で相続を申告できますが、これは権利移転の効力は持ちません。
対応すべき事項
所有不動産記録証明制度(2026年2月から)
相続登記義務化のNEWSを書こうと思って調べてていたのですが、所有不動産記録証明制度が2026年2月からスタートするようですね。まだ、ずいぶん先の話になりますが、とても良い制度ですね。
これまでは、相続の対象となる不動産の調査のために、固定資産税通知書や固定資産名寄帳兼課税台帳から所有不動産を確認していました。家族や近しい親族で被相続人のことをよく知っていれば問題がないのですが、一人暮らしの高齢者が死亡し、子供がいないと、相続人である兄弟が亡くなった方の財産のことを知らないことが多いものです。そうなると家捜しをして、発見された資料から確認をしていくしかありません。固定資産税課税通知書があれば、所有不動産の確認ができます。固定資産税通知書がない場合には調査の手がかりがありません。
所有不動産記録証明制度の概要
相続人が全国の不動産を一括で調査できる制度で、2026年2月に開始されます。この制度では、不動産の登記名義人の住所と氏名を基に、不動産の所有状況をリスト化した「所有不動産記録証明書」を発行し、漏れなく不動産を把握できるよう支援します。これにより、相続登記の手続きが簡素化され、相続対策にも活用できます。
税務調査の効率化・情報化
税務署が利用するpipitLINQシステムは、NTTデータが提供する預貯金照会業務の電子化サービスで、税務署が税務調査で利用しています。
このシステムは、税務調査において納税者の資産状況を把握し、適正な課税を行うために金融機関から情報を取得する際に役立ちます。従来の手作業による情報照会よりもスピーディで正確なデータ提供が可能となり、税務調査の効率化と透明性の向上を目指しています。
pipitLINQ(ピピットリンク)は、以下の特徴があります。
・預貯金照会のデジタル化:金融機関への照会業務を電子化。
・セキュリティの強化:安全なデータ処理。
・業務の効率化:手作業を削減。
・迅速な対応:応答時間の短縮。
・法令遵守サポート:規制に適合。
・ペーパーレス:書類の削減。
・データの正確性:自動化によるエラー削減。
・リアルタイム監視:状況をリアルタイムで確認。
・使いやすいインターフェース:操作が簡単。
・システム連携:他のシステムとの統合が可能。
事前確定届出給与について
事前確定届出給与とは、役員に支給する給与の金額や支給時期を事前に確定し、税務署に届け出る制度です。これを利用するためには、株主総会決議から1ヶ月以内、または事業年度開始から4ヶ月以内の早い時期に税務署へ届出が必要です。この制度は、役員に支払う給与やボーナスを損金算入するために重要です。届出た内容(支給額や支給時期)を守らない場合、その給与は損金に算入されません。
事前確定届出給与のポイントは以下の通りです:
役員報酬の改定について(経営状況の著しい悪化)
役員報酬
役員報酬とは、企業の取締役や監査役などの役員に対して支払われる報酬を指します。役員報酬には、給与、ボーナス、ストックオプション、退職金などが含まれ、税法上の取り扱いとして、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与の3つに分類されます。
中小企業における役員報酬の取り扱いで知っておくべきことは、定期同額給与と事前確定届出給与となります。
定期同額給与の改定
定期同額給与とは、法人税法上、役員に毎月同じ金額を支給する給与のことを指します。
この給与は、事業年度の途中で変更することができず、決められた期間中は一律の金額で支給される必要があります。
改定の時期は、事業年度開始日から3ヶ月以内であれば、理由を問わず変更可能です。
定時の改定以外には、役員の職務内容の変更や経営状況の悪化など、特定の理由が必要です。
経営状況の悪化について
「経営状況の悪化」とは、企業の収益性や財務状況が著しく低下することを指します。この悪化の理由には、売上の急減、取引先の倒産、自然災害、技術革新による市場環境の変化などがあります。これにより、企業は負債が増加し、資金繰りに困難を抱えるようになり、事業の継続が危ぶまれる事態に至ることもあります。
令和6年分年調ソフト公表(国税庁)
年末調整ソフト(令和6年分)について
国税庁は令和6年分の年末調整に対応するソフトウェアを公表しました。このソフトは、年末調整の計算を簡便化し、正確に処理できるよう設計されています。
主な特徴:
- 簡単な操作:必要な項目を入力するだけで、年末調整の計算が自動で行われます。
- 最新の税制対応:令和6年分の税制改正に対応しており、最新の税額控除や所得控除の計算が可能です。
- データ管理の効率化:従業員の情報を一元管理できるため、複数の従業員の年末調整を迅速に行えます。
推奨ユーザー:
- 企業や事業主の方で、従業員の年末調整を行う担当者
- 税理士や会計事務所などの専門家
ダウンロード方法:
国税庁の公式サイトから、以下のリンクをクリックしてソフトをダウンロードしてください。 年末調整ソフトダウンロードページ
合同会社と株式会社の違い(スタートアップは合同会社がおすすめです)
合同会社 (LLC) と株式会社 (Corporation) は、どちらも日本における法人形態ですが、いくつかの重要な違いがあります。以下にその違いを説明します。
生命保険の非課税枠|藁信博税理士事務所
国税庁の資料によると、相続税の課税対象となった被相続人のうち、約7割の方が、生命保険の非課税枠を活用できていません。
生命保険の非課税枠とは?
預貯金はその全額が相続税の課税対象になりますが、生命保険の死亡保険金を受け取った場合には、相続人一人につき500万円までの金額は、非課税で、相続税がかかりません。(相続税法第12条)
お父様が亡くなって、お母様と子供が2人いれば、1,500万円の非課税枠があることになります。
相続の準備に生命保険を利用することで、残された方に、より多くの財産を残すことができます。
また、生命保険を活用することで、死亡保険金の受取人をあらかじめ指定することができます。
生命保険を上手に利用したいものですね。