経営者として1年のはじめに考えたい『税務の棚卸し』
新しい年が始まると、事業計画や営業戦略に意識が向きがちです。
ただ、「税務」も年初に一度“棚卸し”しておくと、1年を通しての手戻りやムダな税務リスクを大きく減らせます。
ここでいう「税務の棚卸し」とは、難しい節税テクニックではなく、
- 去年の処理・提出で“抜け”がないか
- 今年の体制・取引に税務上の“地雷”がないか
- 今年の納税・申告スケジュールが“見える化”されているか
を、経営者目線で点検することです。
1. 税務の棚卸しを年初にやるべき3つの理由
(1)ミスの“早期発見”が一番安い
税務のミスは、発見が遅れるほど修正コストが跳ね上がります。
「記帳が溜まった」「証憑が見つからない」「締切が過ぎた」——この状態になる前に、年初に整えるのが最も効率的です。
(2)資金繰りに直結する(納税は“イベント”)
納税は、利益が出た後にまとめてやってきます。
早めに見通しを立てておけば、資金繰りの“事故”を避けやすくなります。
(3)経営判断が速くなる(税務は経営の翻訳機)
「この支出は経費になる?」「人を雇う?外注にする?」
税務の前提が整理されるほど、意思決定がスムーズになります。
2. まずは60分でできる「税務の棚卸し」全体像
年初の棚卸しは、完璧を目指すより“見える化”が先です。おすすめは次の3点セット。
- ① 去年の“提出・納付”チェック(期限ものの漏れ防止)
- ② 今年の“変化点”チェック(税務リスクの芽を摘む)
- ③ 今年の“運用ルール”整備(記帳・証憑・承認フロー)
以下、順番に見ていきます。
3. 【①】去年の“提出・納付”に漏れがないか(年初の要注意ポイント)
年明けは、税務の「提出物」が集中します。代表例としては次のようなものがあります(会社の状況により該当が変わります)。
- 源泉所得税(納期の特例を使っている場合は特に注意)
- 法定調書(支払調書など)
- 給与支払報告書(住民税に関係)
- 償却資産申告(固定資産税)
期限が「○月○日」と定まっているものは、“担当者任せ”にすると漏れやすいのが実務の現場感です。
年初に一度、経営者が「提出物の一覧」を見ておくのが効果的です。
4. 【②】今年の“変化点”を洗い出す(ここが税務の地雷になりやすい)
税務トラブルの多くは、取引や体制が変わったのに、処理が去年のまま——というズレから起きます。
年初に、次の「変化点」をチェックしてください。
変化点チェックリスト(該当があれば要注意)
- 売上が伸びそう/取引先が増えそう(請求書・消費税の論点が増える)
- 新規事業を始める/商品・サービスの中身が変わる(課税区分・契約書が重要)
- 人を採用する/役員報酬を変える(給与・源泉・社保、役員報酬のルール)
- 外注が増える(外注と給与の線引き、源泉の要否)
- 高額な設備投資を予定している(資産計上・減価償却、補助金との関係)
- 交際費・出張・会議が増える(証憑ルールが弱いと否認されやすい)
- 在庫を持つ/在庫が増える(棚卸の精度が利益に直結)
ここで大切なのは、結論を年初に全部出すことではありません。
「今年はここが動きそうだ」という地図を作るだけで十分価値があります。
5. 【③】今年の“運用ルール”を整える(最小のルールで最大の効果)
税務は、制度よりも運用で差が出ます。おすすめは「3つだけルール化」することです。
ルール1:領収書・請求書の“置き場”を1つに固定
紙でも電子でも構いません。重要なのは、保存場所が分散しないこと。
(机の引き出し/個人のカバン/メール添付…が混在すると、決算で必ず詰まります)
ルール2:支出は「目的」と「相手」が分かるメモを残す
交際費・会議費・出張費などは、金額より説明可能性が重要です。
最低限、何のため(目的)/誰と(相手)が分かるメモがあるだけで、税務調査対応が大きく変わります。
ルール3:判断が分かれる支出は“保留箱”に入れる
「これ経費?」「資産?」「源泉いる?」と迷う支出は、処理を止めてOKです。
迷ったものを一覧化して税理士にまとめて確認できると、スピードも精度も上がります。
6. 税務の棚卸しは「節税」よりも先に“事故防止”
年初に税務の棚卸しをしておくと、結果として節税につながることもあります。
ただ、優先順位はあくまで、
- 漏れ・遅れ・誤りを減らす(リスクを潰す)
- 今年の変化点を見える化する(迷いを減らす)
- 運用ルールを固める(決算をラクにする)
です。ここが整った会社ほど、必要なときに的確な打ち手(投資判断や税務判断)が取れるようになります。
7. まとめ:年初に“税務の地図”を作ると、1年がラクになります
税務の棚卸しは、年末の慌ただしさを減らし、経営判断を速くし、資金繰りの不安を小さくする——地味ですが効く取り組みです。
もし、今年の変化点が多い(採用・外注増・設備投資・新規事業など)場合は、年初のうちに一度整理しておくことをおすすめします。
「うちは何から見ればいい?」という段階でも大丈夫です。
状況に合わせて、優先順位をつけて一緒に整理しますので、お気軽にご相談ください。