※本記事は法案成立前の税制改正大綱をもとにした速報解説です
はじめに
年末に公表された税制改正大綱では、インボイス制度を前提とした消費税の取扱いについて、一定の整理が行われています。
制度開始後、特に個人事業主を中心に多くの実務上の声が寄せられてきました。
今回の税制改正大綱では、そうした声が一部、経過措置の整理という形で反映されたと読める点がある一方で、明確に変わらなかった点もあります。
本記事では、
小規模な個人事業主について示された経過措置
法人について変わらなかった点
を分けて、速報として整理します。
1.小規模な個人事業主に対する消費税の経過措置(123ページ以降)
税制改正大綱では、消費税の項目(123ページ以降)において、
インボイス制度への対応を理由に課税事業者となった小規模な個人事業主について、
経過措置が明確に整理されています。
(1)対象となる個人事業主
今回の経過措置の対象として想定されているのは、次のような個人事業主です。
もともと免税事業者であった
インボイス制度への対応のため
課税事業者を選択し、インボイス発行事業者となった個人事業主
※この経過措置は、法人には適用されません。
(2)「2割特例」終了後の新たな経過措置(重要)
税制改正大綱では、いわゆる2割特例の終了後について、
次のような経過措置が示されています。
インボイス発行事業者となった小規模な個人事業主について
一定の期間に限り
納付すべき消費税額を「売上に係る消費税額の3割」とすることができる
という特例的な取扱いです。
これは、
仕入税額控除の積上げ計算
簡易課税の業種区分判断
といった実務負担を軽減しつつ、
納税額を一定水準に抑えるための経過措置と整理されています。
(3)適用期間は「時限措置」
この「売上税額の3割を納付する」取扱いは、
恒久措置ではなく、一定期間に限った経過措置とされています。
インボイス制度への移行期における負担緩和が目的
将来的には、原則的な消費税の計算方法へ移行する前提
である点は、税制改正大綱でも明確です。
※具体的な適用期間・細かな要件は、今後の法案・政省令で確定する予定です。
(4)個人事業主であっても「制度が緩和されたわけではない」
重要な点として、
インボイス制度そのものが見直されたわけではない
仕入税額控除の仕組みが恒久的に緩和されたわけでもない
という前提は維持されています。
今回の整理は、あくまで
制度への対応を理由に課税事業者となった個人事業主に対する、移行期の経過措置
という位置づけです。
2.法人について変わらなかった点(控除率50%)
(1)法人は経過措置・配慮措置の対象外
税制改正大綱における、
いわゆる「小規模事業者向け」とされる消費税の配慮措置は、
原則として個人事業主のみを対象としており、法人は含まれていません。
売上規模が小さい法人、いわゆる「小規模法人」であっても、
今回の経過措置や配慮措置の対象にはなりません。
(2)令和8年10月1日以降の法人の控除率
法人については、免税事業者等からの仕入れに係る
仕入税額控除の経過措置が段階的に縮減される前提が維持されています。
税制改正大綱に基づく整理は、次のとおりです。
令和8年10月1日以降
免税事業者等からの仕入れに係る
仕入税額控除の割合:50%
つまり、法人が免税事業者等から仕入れを行った場合、
支払った消費税相当額の 半分のみが控除対象 となり、
残りの半分は控除できません。
この点について、法人向けに新たな軽減措置や特例を設ける方向性は、
税制改正大綱には示されていません。
3.個人事業主と法人の整理(速報時点)
税制改正大綱の内容を、速報段階で整理すると次のとおりです。
小規模な個人事業主
→ インボイス対応を理由に課税事業者となった場合、
売上税額の3割納付とする経過措置(時限)が示された法人
→ 経過措置の対象外
令和8年10月1日以降、控除率50%を前提に制度対応
この違いは、売上規模ではなく、
事業形態(個人か法人か)による整理です。
4.実務上の注意点
今回の税制改正大綱を踏まえると、
個人事業主の場合
→ 自身が「3割納付の経過措置」の対象となるか
今後示される要件・適用期間の確認が重要法人の場合
→ 控除率50%を前提として
取引条件・価格・契約内容の見直しを検討する必要あり
という整理になります。
まとめ
本記事は、法案成立前の税制改正大綱をもとにした速報解説です
小規模な個人事業主については、
売上税額の3割を納付する経過措置(時限)が示されています一方で法人はその対象外とされ、
令和8年10月1日以降、免税事業者等からの仕入れに係る控除率は50%
という前提は変わっていません今後の法案・政省令・通達により、詳細は確定していく予定です