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社会貢献で節税も?寄付金の扱いと注意点― 制度の正確な理解が、適切な経費化と税務リスク回避につながる ―

1.導入:社会貢献への関心の高まりと“寄付金”の落とし穴

近年、企業による社会貢献活動が注目され、NPOへの寄付や災害支援、地域活動への協賛など、寄付金を支出する機会が増えています。
しかし一方で、「良いことをしたから経費になるはず」「寄付金は全部落とせる」といった誤解も少なくありません。

寄付金には、法人税法上の厳密な区分があり、その扱いに誤りがあると、税務調査で否認される可能性があります。
適切な判断のためには制度の理解が不可欠です。本稿では、寄付金の種類・限度額・注意点を整理し、実務で迷わないための基礎知識を解説します。


2.制度解説:寄付金の基礎と法人税法上のルール

(※2025年時点の法令に基づく)

法人税法では寄付金を次の3区分に分類しています。

●① 国や地方公共団体への寄付金

全額損金算入が認められます。
災害義援金などが代表的です。

●② 特定公益増進法人(学校法人、認定NPO法人など)への寄付金

「損金算入限度額」と「税額控除」のどちらか有利な方を選択可能です。
認定NPO法人への寄付金は、中小企業でも利用されるケースが増えています。

●③ 一般寄付金(上記に該当しないもの)

損金算入限度額が設定されており、全額を経費にすることはできません
協賛金や地域イベント支援が該当しますが、広告宣伝としての性質があれば「広告宣伝費」として扱える場合もあります。

▼寄付金の限度額は、次の2要素で計算

  • 資本金等の額

  • 所得金額(当期利益)

限度額計算は複雑なため、実務では慎重な判断が求められます。


3.実務上の判断軸:迷いやすいポイント

寄付金を扱う際には、以下の点で判断が必要になります。

●① 寄付先がどの区分か

認定NPOか一般NPOかで扱いが大きく異なります。
名称が似ていても税務区分が異なるケースがあるため要確認です。

●② 寄付の「目的」と「対価性」

・広告枠を与えられる
・ホームページに企業名が掲載される
など、対価性が認められれば寄付金ではなく「広告宣伝費」として扱える場合があります。

●③ 契約書・領収書・決議書の有無

税務調査では、合理的な支出であることを示す「証拠」が求められます。

●④ 税額控除を使うか、損金算入を選ぶか

金額・利益状況により有利不利が変わるため、ケースごとに比較検討が必要です。


4.よくある誤解と修正

寄付金には、実務でよく見られる間違いがあります。

❌ 誤解①:寄付金は“全額経費”になる

→ 一般寄付金は限度額があり、超過部分は経費にできません。

❌ 誤解②:NPOに寄付すれば税額控除が使える

→ 「認定NPO」である必要があります。一般NPOは対象外です。

❌ 誤解③:協賛金はすべて寄付金扱い

→ 対価性(広告の提供)があれば「広告宣伝費」として損金算入可能。

誤解のまま処理すると、否認・追徴課税・加算税のリスクにつながります。


5.現場で役立つチェックポイント

寄付金の取り扱いで迷わないために、次の項目を確認することをおすすめします。

▼寄付を検討する前に確認すること

  • 寄付先の法人格・区分(認定NPOかどうか)

  • 支出目的(寄付か広告宣伝か)

  • 寄付金の限度額に余裕があるか

  • 税額控除との比較検討

▼寄付をした後に必ず行うこと

  • 領収書・契約書・振込記録の保管

  • 社内決裁の書面化(取締役会議事録など)

  • 会計処理の区分(寄付金/広告宣伝費)の明確化

これらの手順を整えることで、節税効果と税務の安全性を両立できます。


6.まとめ・行動のすすめ

寄付金は、社会に貢献しながら企業の価値を高める重要な取組です。
しかし税務の世界では、寄付先・金額・目的によって取り扱いが大きく異なるため、正確な制度理解が欠かせません。

「この寄付は経費にできるのか?」
「税額控除を使えるのか?」
こうした疑問が生じた際は、早めに専門家へ相談することで、税務リスクを抑えつつ最適な選択ができます。

寄付についてのご不明点や、制度適用の可否判断などございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
御社の意思決定をサポートし、最善の処理方法をご提案いたします。

この記事を書いた人

税理士 藁信博(代表者プロフィール
藁総合会計事務所 代表
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