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【注意喚起】賃上げ促進税制の「補填額」に要注意― 名称だけで判断せず、交付要件で確認を ―

1. 結論

賃上げ促進税制の計算において、給与等の支給額から控除すべき「補填額」は、交付要件等で「給与負担の軽減目的」と明示されている補助金・助成金に限られます。
一方で、名称に「賃上げ」「処遇改善」「人材育成」などの文言が含まれていても、目的が異なれば補填額に該当しない場合があります。
したがって、補助金・助成金の名称だけで判断せず、交付要綱・支給決定通知書の内容確認が極めて重要です。

2. 背景と法的根拠

賃上げ促進税制(租税特別措置法第42条の12の5等)では、雇用者給与等支給額を算定する際、

「国又は地方公共団体から交付を受ける補助金等のうち、給与等の支給額の負担を軽減する目的で支給されるものの金額」

を控除する(=補填額として除く)と定められています(措法42の12の5第6項、同施行令29の7)。
しかし「補填額」に該当するかどうかの判断は、補助金の交付目的・交付要件によって個別に異なります。

3. 名称だけで判断できない理由

(1)「賃上げ」や「処遇改善」と書かれていても目的が異なることがある

例えば、

  • 看護職員処遇改善評価料
  • 介護職員処遇改善加算
  • 社会保険適用時処遇改善コース(キャリアアップ助成金)

これらはいずれも「賃上げ」「処遇改善」と名がつきますが、**医療・介護報酬や保険料制度に基づく対価(役務提供の報酬)**であるため、補填額には含まれません

(2)逆に、名称に「賃上げ」が含まれなくても補填額になるものもある

たとえば、

  • キャリアアップ助成金(正社員化コース)
  • 人材開発支援助成金(訓練中賃金助成)
  • 特定求職者雇用開発助成金

などは、賃金負担を直接支援する仕組みであり、交付要綱に「賃金負担軽減」や「賃金助成」の趣旨が明記されているため、補填額に該当します。

4. 実務での確認ポイント

補助金・助成金を受け取った場合には、以下の3点を確認することが重要です。

チェック項目内容実務対応
① 交付要綱の目的欄「賃金」「給与」「人件費」「雇用主負担軽減」などの文言があるか記載があれば補填額の可能性が高い
② 支給対象経費欄「賃金助成」「給与補助」など具体的に給与支給額を対象としているか対象なら補填額の可能性あり
③ 支給決定通知書「交付目的」や「助成対象事業」が明記されているか不明な場合は要照会・要メモ

 

5. 税務上の留意点

  • 補填額は「受領した日の属する事業年度」の給与等支給額から控除します。
  • 令和6年度以降は、役務の提供対価(医療・介護報酬など)を補填額に含めないとする取扱いが明確化されています。
  • 交付要綱の目的が複合的な場合(例:設備投資+賃金支援)、按分処理が求められることもあります。

6. よくある誤認パターン

誤認例正しい考え方
「業務改善助成金」は設備投資だから補填額にならない実際は最低賃金引上げとセットで賃金支援を行う制度。交付要件に「賃金引上げ」があり、補填額となる可能性がある。
「処遇改善加算」も給与アップのための支給だから補填額だ実際はサービス提供の対価として受け取る報酬。補填額には含まれない。
「キャリアアップ助成金」はすべて補填額になる社会保険適用時処遇改善コースなど一部は補填額に含めない扱い。コースごとに要確認。

7. まとめと実務アクション

  1. 補助金・助成金を受給したら、必ず交付要綱・通知書を確認する。
  2. 「賃金負担軽減」「給与補助」等の記載があれば、補填額の可能性あり。
  3. 不明な場合は、補助金事務局または税務署に事前照会を行う。
  4. 税務申告時には、補填額の控除根拠を**文書で保存(交付要綱・通知書コピー添付)**する。

8. 参考リンク(確認日:2025年10月17日)

この記事を書いた人

税理士 藁信博(代表者プロフィール
藁総合会計事務所 代表
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