【AI時代をどう歩くか】 ― 税理士としてChatGPTと向き合い、活用し続けている理由 ―
■ はじめに:静かな変化の真っただ中で
ChatGPTが登場してから、世の中は急速に変わり始めました。
ただ、変化というものは外から見ると“突然の大波”のように見えますが、
実際はとても静かに、少しずつ、しかし確実に進んでいくものです。
私自身、AIが騒がれ始めた頃は、
「税理士業務にどこまで役に立つのだろう?」
「制度改正や判例のような専門領域に対応できるのか?」
と半信半疑でした。
ところが、使い始めて2年半。
今では次のように考えています。
“AIは、税理士がより税理士らしくあるための道具である。”
つまり、AIに仕事を奪われるのではなく、
AIを使うことで、税理士としての価値をむしろ高められる。
この感覚を、今は確信を持って持っています。
その理由と、私自身がどんなふうにAIを活用してきたか──
今日は少し長めにお話ししたいと思います。
■ ChatGPTを「いつから」「どう」使い始めたのか
私のアカウント作成は、およそ 134週間前(約2年半前)。
ただ、アカウントを作っただけでは何も起こりません。
実際に使い始めて、仕事に組み込んでいく中で、
AIはようやく“仕事の相棒”になっていきました。
最初に驚いたのは、
「文章をまとめる力」 です。
専門的な内容を、読み手に合わせて噛み砕いてくれる。
アメブロ向けの柔らかい文章も、公式サイト向けの専門的文章も、
どちらも数秒で下書きを出してくれる。
税理士の業務では、説明する場面が非常に多い。
ブログ、Facebook、顧客向けの案内文、研修資料…。
これらに割く時間は少なくありません。
その煩雑な部分をAIが引き受けてくれることで、
私は “判断” と “設計” と “経営の意思決定” に
より多くの時間を使えるようになりました。
AIの価値は、単に“文章生成”に留まりませんでした。
■ 私がAI活用で得た4つの柱
ChatGPTが示してくれた私自身の利用傾向は、
大きく4つの軸にまとめることができます。
① 税務判断の「視点整理」
税務の世界は、最終的な判断に至るまで、
「要件の確認 → 法令の読み解き → 事実認定 → 適用可能性チェック」
というプロセスを経ます。
このプロセスにおいて、
ChatGPTは“答えを出す存在”ではなく、
論点を浮かび上がらせ、視点漏れを防ぐ存在です。
例えば、
「その制度が適用されるために必要な条件は?」
「例外規定との関係性は?」
「事実認定のステップは適切か?」
こうした問いかけ型の対話ができる。
最終判断はもちろん税理士の仕事です。
しかし、判断のための材料を揃えるスピードと精度は
AIを使うことで圧倒的に上がります。
② 発信(アメブロ・Facebook・公式WEB)の質と速度の向上
私は複数の媒体で情報発信をしていますが、
その目的はひとつです。
専門的な情報を、必要な人へ、必要な形で届けること。
AIは読み手別の「最適な語り口」を一瞬で切り替えられます。
アメブロ → 語りかけ、柔らかさ、親近感
Facebook事務所ページ → 要点整理、専門性、誠実さ
個人Facebook → 人柄と専門性の“ちょうどいい距離感”
公式サイト → 体系的で信頼性の高い文体
この切り替えは、人間がやると意外に大変です。
しかしAIは、その場その場で最適解を出してくれる。
結果として、
同じ情報でも、読者層に合わせて伝わり方が変わる。
これは専門家として非常に大きな強みです。
③ 税制改正の「即時対応」
税制改正は、速報での判断がとても大切です。
とくに、
何が変わったのか
どう実務に影響するのか
顧客へどう説明すべきか
社内ルールは変更が必要か
これらを短時間で整理する必要があります。
たとえば今回の
「通勤手当の非課税限度額引き上げ(2025年11月19日改正)」
のようなケース。
AIは、
「事実(改正内容)」と「実務影響」を切り分けて整理するのが得意です。
そのうえで、私は税理士として、
“どう伝えるか” “お客様は何を知れば安心できるか”
を考えながら文章にまとめます。
AIが下支えしてくれるからこそ、
専門家としての発信の質を落とさず、スピードも維持できます。
④ 事務所の業務改善・IT導線の相談相手
税理士の仕事は“税務だけ”ではありません。
事務所を経営する以上、
ITインフラ(AWS、Windows Server)
ホームページ(Drupal)
社内ネットワーク
セキュリティ
スタッフ教育
こうした領域も避けて通れません。
ChatGPTは、
「ITの深い専門家」ではないものの、
相談することで自分の考えを整理し、選択肢を増やし、
意思決定を支えてくれる“参謀的な役割”を果たしています。
■ 使い方には「個性」が出る
ChatGPTのメタデータによれば、
私は以下の特徴を持つ使い方をしているようです。
● 必要なときに深く使う「点の集中型」
● 毎回、結果物の改善を要求する“プロ品質型”
● 専門性とクリエイティブ(文章)を両方求める
● 発信媒体ごとにトーンを細かく変える
● 専門家としての判断とAIの情報整理を組み合わせる
AIに任せっぱなしではなく、
AIの出力を土台にして、自分の専門性で磨き上げる。
このスタイルが、
私にとっての“正しいAIとの向き合い方”なのだと思います。
■ AIは脅威ではなく、知性を映す鏡である
AIを使っていると、あることに気づきます。
AIは、使う人の思考の質をそのまま映し出す鏡である。
曖昧な質問を投げれば、曖昧な答えが返ってきます。
良い質問をすれば、深い洞察が返ってきます。
結局、
“どれだけ考えているか”
“どこまで構造化できるか”
が、AIの答えに反映されます。
つまりAIは、
専門家の知性を押し上げてくれる存在なのです。
税理士という職業は、
AIを敵視する必要はありません。
むしろ、AIと組むことで人間にしかできない価値に集中できます。
一人ひとりの事情を踏まえたアドバイス
背景事情や心理面への寄り添い
企業の“これから”を共に考える仕事
紙の裏に隠れた「真意」を読み取る仕事
お客様との信頼関係を築く仕事
これらは、AIには絶対に代替できません。
そして、この領域こそ税理士の真価です。
■ 最後に:AIと共に歩む税理士であるために
これからの時代、
AIを使いこなす税理士と、
AIに抵抗して変化を止めてしまう税理士と、
二極化していくかもしれません。
私自身は、後者にはなりたくない。
AIを恐れるのではなく、
使いこなし、理解し、
自分自身の専門性と組み合わせることで、
お客様にもっと大きな価値を返せる税理士であり続けたい。
そして何より、
AIを使うことで生まれた“時間の余白”を
お客様のために、スタッフのために、
そして自分の学びのために使えることは、
私にとってとても大きな意味があります。
AI時代において、
税理士はより“人間らしい”仕事に集中できる。
私はそう信じています。
これからもAIと共に歩み、
学びを深め、お客様に還元していきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。