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一人一人はそれぞれ個性的ですが、集団や組織になると、所属する個人の性格や特徴が現れるのではなく、集団の性格や特徴が生まれます。
もっと大きな集団である国家の「お国柄」とは、国の性格や特徴を言語化したものです。
どの国家も、その成り立ち、位置的状況や環境などが異なりますが、先進国に共通する経済に注目すると、どの国も工業化が進み、都市へ人口が集中し、行政の官僚化が進み、中間層が増大し、夫婦とその子供からなる小家族が増大し、教育水準が向上、社会福祉の充実など、同様な現象が生じます。経済的発展が国の特徴を形成することはないようです。
日本の特徴は、非常に単一性が強く、一体感があり、結束力の強いと言われます。基礎的な集団の家族は、他のあらゆる人間関係に優先します。日本では、血を分けた他家に嫁いだ娘より、よそから入ってきた血縁関係の無い妻や嫁が重要です。江戸時代には、奉公人や番頭が家業を運営する集団の一員として堂々と集団構成しました。番頭を娘の夫として家を継がせることもおこなわれていました。「うち」と「そと」というなじみのある言葉は、集団の「うち」と「そと」を明確に区分し、差別化し、連帯感を強めます。集団の「うち」にいるか「そと」にいるかが重要で、「そと」は明確に区別され敵とさえみなされます。

「資格」と「場」


集団や組織の特徴や性格は、一般的には「資格」と「場」の二つにあると言われています。
「資格」とは、男や女といった性別、出身地、氏のように生まれたときに既に持っているものの他に、学歴、地位、職業などの生まれた後に獲得するものがあります。例えば、あるゴルフ場では男でなければ会員になることができません。これは男という資格で女性と区別し、男であることが入会の資格になるのです。学校の同窓会に入るには、その学校を卒業していることが資格になります。他の者と区別できる属性の全てが資格になります。
もう一つの「場」と呼ばれるものは、一定の地域や所属機関などのように、資格がなくとも枠の中に入ることによって集団となっている場合です。会社などの組織は「場」によって集団が構成されます。もちろん会社の中には資格を有しないとできない仕事がありますが、資格が組織化の要素ではなく、会社という「場」によって組織化されています。
日本のお国柄や日本の家族の特徴は、「場」が強調され、特徴付けられた社会であり集団です。場の共通性によって生まれた集団は、その場によって閉ざされた世界をつくり、集団の中での長い接触時間により、強固で一体感を持つことなります。更に日本では場により作られた集団に「タテ」の関係を持ちこむことで更に日本の特徴を強めています。

タテの関係


小さな集団では、その集団の中の人々の間について特定の関係は必要ありません。小さな会社には、社長と社員の関係があれば、それ以上の組織の必要はありません。しかし、集団が大きくなると、個人と個人の関係を作る必要があります。上に社長を置き、縦に伸びていく組織図の関係です。
この「タテ」の特徴は、同一集団内の同一資格を有する者であっても、何らかの方法で「差」を造りだし、この差により上下の関係を作ることで、組織をまとめます。例えば、同じ様な入社年度で、同じ様な仕事をしている社員を、主任とかリーダーと称号でマーキングし、組織内の全ての人に周知させることで、どちらが上でどちらが下であることを明確にします。

タテと平等主義


タテの関係は、平等主義の日本社会で大きな役割を果たします。人は生まれながら能力差があるはずですが、それを無視し「頑張ればできる。」という前提を置くことで、自信を持たせ、努力を惜しまず続けさせます。タテの関係は、努力した個人にとっては、出世するためのはしごを提供し、ますますこのタテの関係が強化されます。

タテと平等主義の効果


タテの関係は、社会からみれば、常に人々の活動を活発にし、競争が大きな刺激となって、近代化の推進力となったことは疑う余地もありませんが、「頑張れば、うちにもできるはずだ!」という前提により、同じ様な仕事を行う会社が多く生まれ、激しい競争により体力を削がれることで、日本は付加価値の低い国となってしまいました。一方で、努力しても結果が伴わない人にとっては、「努力が足りない人間だ。」、「あの人は頑張れない人だ!」というマーキングされ、一層惨めな思いをすることになります。タテの関係はヨコの関係を排除するため、同じ境遇にいる人たちのネットワークは広がりません。ヨコの関係が無いため、弱い者同士がお互いに助け合うことができません。そういった意味では、日本のタテの文化は、敗者には厳しい社会です。
このタテの関係は、社長には、大きな制約となります。社長は全ての社員と直接ではなく、幹部を通じて間接的に情報を収集し、指示し、運営することになります。このことは幹部の発言権を強いものとします。またその幹部も支配下にある社員の利益代表的存在でしかなく、強力なリーダーシップがあるのでもありません。結局は、社長も幹部も調整役的な立場に立たされます。このことが前例踏襲という悪弊が生み出します。

良い点、悪い点


タテの関係の良い点は、一体感を持った組織となり、情報伝達は、速やかに行われます。能力が低くても上司に認められれば出世も可能となります。そして平等主義と相まって、活動が活発となり、競争が促進されます。しかし、このタテの関係になじめない人にとっては地獄となります。努力が足りない人間、役立たずの烙印が押され、その烙印は消えることはありません。タテの社会では同じ境遇にある人とのコミュニケーションもとれず、孤独と戦わなければなりません。
江戸時代の徳川幕府は日本をタテの関係とヨコの関係を見事に調和させることで、二百六十年の長きにわたり日本を統治しました。タテは、将軍を頂点とし、大名と主従関係を結び組織化された幕藩体制で、ヨコは士農工商です。ただ、鎖国による長きにわたる平和は、タテの緊張関係が緩み、将軍と大名の主従関係を希薄化し、黒船は将軍の敵で主従関係による忠義ではなく、共通の敵とすることで将軍の権威が失墜し、大政奉還に進むことにはなるのですが・・。

特別な知識や道具


特定の知識、道具、その他の技術を作り出し、使うことは、単に知識や道具の使い方を知っているということを意味しません。活動の中で特定の知識や道具を作り出したり使うことは、「自分は、あなたと同じ仲間だ」といったことを社会的に表示していることになります。例えば、業界用語を使うということは、同じ業界の人に対しては、「自分は、あなたと同じ仲間だ」と示していることになります。広告代理業の人が単語を逆さにするのは、有名ですね。証券業で「マル」というのは、”なし”や”ゼロ”にするという意味になります。例えば、「さっきの注文はマルにしといて!」というのは、「注文を取り消して」という意味になります。知ってないと大変なことになります。

オープンツール


メンバーが互いに何を理解したか、どの様なことを行っているかを相互に観察可能にする道具を”オープンツール”と呼びます。例えば、大型船舶をチームで運航している場合、作図係が海図に刻々と変化する船舶の位置を記録する行為は、作図係が何を理解しているかを他のメンバーに可視化し、メンバー相互の認知を拡大します。作図係が位置を間違えて記録した場合に、他のメンバーによる援助を可能にします。しかし、海図がオープンツールの性格を持っているのではなく、海図がオープンツールになり得るかどうかは、メンバーの相互に海図を認識し、海図を活用しているか、どこに海図が配置されているかに依存します。海図を他のメンバーがいない別室で一人に記録している場合には、オープンツールとしての役割を担っていません。チーム活動で、オープンツールがメンバー間で重要視され、会話の中で取り上げられることで、重要なものとなります。

組織の性格を変える


性格や特徴を変えることは、大変な作業です。どの様な集団を作るとしても、計画を立てて実行することでは、何も変わりません。結果を予想することもできません。
例えば、鍛冶屋は、良い刀を作る為に作業を始めますが、具体的な手順もなく、頭の中にもありません。次に何をするかは、鉄片の状態や形に応じて決まります。熱を加え、叩いてみる、その都度、対象を形作るという行為の中で、徐々にその姿を現し、特定されます。目的は、対象を形作る中で、又、様々な道具を用いる中で徐々に形が現れるのです。ある瞬間に次の詳細は、作られつつある対象の中にあるのです。
組織を変えるのも同様です。何か小さな事を変えてみる、そのフィードバックを受けて、次の事を試してみるという試行錯誤の中で、次第に形作られます。その際に、タテとヨコ、特別な知識や道具、オープンツールを理解し、利用してみてください。望む結果でないかもしれませんが、そのときの環境に適合した良い成果であると信じましょう。

【参考文献】
中根千枝. (1967). タテ社会の人間関係. 講談社.
上野直樹. (1999). 仕事の中での学習 : 状況論的アプローチ. 東京大学出版会. 
Schumpeter, J. A., 木村元一, & 小谷義次. (1983). 租税国家の危機. 岩波書店.
 

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