年末こそ“帳簿のメンテナンス”を
1. はじめに ― 年末は「帳簿の大掃除」のベストタイミング
12月は、会計上も税務上も「区切りの時期」です。
日々の忙しさで後回しになっていた帳簿や書類が、気がつけば積み上がっている…そんな声をよく聞きます。
しかし、年末に帳簿を整えておくことで、
決算の精度が上がり、税金リスクも減り、翌年のスタートを軽くする
という、大きなメリットがあります。
今日は、実務で押さえておきたい“帳簿メンテナンスのポイント”を整理します。
2. このタイミングで見直したい「5つの帳簿」
① 売掛金・買掛金の未収・未払の漏れチェック
・請求書の出し忘れ
・相手からの請求書未着
・入金済みだが入金処理が未記帳
こうしたズレは決算数値を歪めます。
得意先・仕入先ごとに突合して、漏れを確実に洗い出しましょう。
② 立替金・仮払金・預り金の“残高放置”は危険
仮払金・立替金は“残高が動かない勘定科目”として、税務調査で必ず確認されます。
・担当者が退職した
・処理し忘れた
・領収書がどこかにあるはず
こうした曖昧な残高は放置しないことが重要です。
③ 固定資産の棚卸・除却忘れの確認
実態として使用していない資産を除却せず、
帳簿上だけ“存在し続けている”ケースが非常に多く見られます。
・壊れて捨てた
・入れ替えたのに古い資産が残っている
・中古で売却したのに処理していない
固定資産は年度末だけでなく、年末の時点でも棚卸をしておくと誤差が減ります。
④ 現金・小口現金の突合
小口現金はズレが起こりやすい科目です。
特に、誰が管理しているのか不明確な場合はリスクが高いです。
この時期に残高を突き合わせ、“宙に浮いた現金”をゼロにしましょう。
⑤ 経費の計上漏れ ― 特に「12月に発生したが請求は1月」の費用
・広告費
・通信費
・外注費
・社会保険料
など、12月分の費用が翌月請求になるものは、計上漏れが起こりやすいポイントです。
3. 帳簿のメンテナンスで得られる3つのメリット
① 決算がスムーズに進む
年明けの処理が軽くなり、決算スケジュールが短縮できます。
② 税務リスクが下がる
仮払金・未払金の放置は“調査で疑われるポイント”です。
年末に整理することで、余計な指摘を避けられます。
③ 経営判断の精度が上がる
正しい数値は、経営の羅針盤です。
「年末の棚卸」の積み重ねが、翌年の意思決定を確実なものにします。
4. まとめ ― 年末は「帳簿の健康診断」を
帳簿のメンテナンスは、華やかな業務ではありませんが、
最も効果が出る“地味だけど効く”管理業務です。
今の忙しさを少しだけ止めて、
12月に帳簿を整える時間を取ってみてください。
きっと、翌年の経営と経理が「格段にラクになる」ことを実感していただけると思います。
税理士 藁信博(