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青色申告75万円控除 ソフトと運用の確認点

「令和9年分から、青色申告特別控除が最高75万円になるそうですが、今の会計ソフトで対応できるのでしょうか」

この改正を考えるときは、控除額だけでなく、帳簿の作成方法、修正履歴、保存方法まで確認することが大切です。

今回は、優良な電子帳簿とデジタルシームレス保存の違いを整理したうえで、「年に1回まとめて記帳している場合はどう考えるのか」という実務上の論点も取り上げます。

本記事は2026年11月2日時点の公表資料に基づいています。

結論:まずは現在の会計ソフトと記帳の運用を確認しましょう

すでに会計ソフトで複式簿記による記帳を行っている個人事業者であれば、75万円控除への対応として、まず「優良な電子帳簿」を検討するのが現実的だと考えます。

取引先の請求方法を変えることなく、現在の会計ソフトや記帳の流れを基礎に対応を組み立てやすいためです。ただし、ソフトが対応していることと、実際に要件を満たして利用・保存していることは分けて確認する必要があります。

なお、青色申告特別控除は個人の所得税に関する制度です。法人に75万円の控除が設けられるものではありません。

令和9年分からの75万円控除の基本

令和9年分以後は、65万円控除の要件に加えて、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存の要件を満たす場合、最高75万円の青色申告特別控除を受けられます。

複式簿記による記帳などの基本要件に加え、確定申告書と青色申告決算書(貸借対照表を含む)のデータを、確定申告期限までにe-Taxで送信する必要があります。

通常、令和9年分の改正が反映されるのは、令和10年に行う確定申告です。令和9年の春に申告する令和8年分とは区別してください。

出典:国税庁「75万円の青色申告特別控除」案内

優良な電子帳簿とデジタルシームレス保存の違い

中小規模の個人事業者から見た実務上の比較
比較項目優良な電子帳簿デジタルシームレス保存
対応の中心仕訳帳・総勘定元帳の作成と保存電子取引データの送受信・保存と帳簿との連携
主な確認事項訂正・削除・追加履歴、帳簿間の関連性、検索機能など対応システム、改ざん防止、記帳の適正性、元データと帳簿の相互関連性など
手入力との関係手入力を含む帳簿でも、要件に沿って対応できる対象となるデータの連携・保存方法の確認が必要
導入時の実務負担現行ソフトが対応していれば、設定や保存方法の確認が中心になりやすい利用する銀行・請求システム等との接続や運用確認が必要になる場合がある

デジタルシームレス保存では、所定のデジタルインボイスや預貯金口座の決済データを扱うシステムが想定されています。取引先すべてにデジタルインボイスへの変更を求めることが前提ではありません。

ただし、一般的な「銀行連携」や「自動仕訳」の機能が、そのまま制度の要件を満たすとは限りません。

出典:国税庁「電子帳簿等保存制度」パンフレット

対応ソフトを使っていても、確認したい3つのこと

1.必要な履歴が実際に保存されているか

優良な電子帳簿では、訂正・削除・追加に関する履歴などを確認できることが求められます。

修正自体が禁止される制度ではありません。入力誤りの訂正や決算整理は必要な処理です。重要なのは、修正の事実や内容などを確認できる仕組みになっていることです。

ソフトによって、履歴が自動で保存される場合と、あらかじめ設定などが必要な場合があります。製品名だけでなく、利用中の機能と設定を確認しましょう。

2.税理士とのデータの受渡しで履歴が途切れないか

事業者が入力したデータを税理士に渡し、税理士が修正して戻す場合、必要な履歴をどこで保存するのかが問題になります。

例えば、CSVで別のソフトへ移したとき、元の入力日や修正履歴まで引き継がれるとは限りません。最終的な仕訳の金額が一致していることと、履歴の要件を満たしていることは別です。

こうした受渡しが直ちに不適合になるわけではありませんが、正本となる帳簿と履歴の保存方法を、事業者と税理士で決めておく必要があります。

3.ソフトの変更・解約後も確認できるか

決算後に紙や通常のPDFの帳簿だけを残しても、必要な履歴や検索機能まで保存できているとは限りません。

過年度の帳簿を、法定の保存期間中、必要な要件を満たして確認できるか。ソフトの変更や解約をする前にも、確認したい点です。

認証ソフトを選ぶ場合も、機能以外の保存・運用要件は別途確認します。

参考:国税庁「JIIMA認証情報リスト」

年1回まとめて記帳すると、75万円控除は受けられないのか

ここは、法令の規定と国税庁の説明を分けて読む必要があります。

今回確認した資料からは、「年1回まとめて入力した」という事実だけで、75万円控除を否定する明確な規定は確認できていません。

一方で、追加入力の履歴が残るという一点だけで、帳簿の備付け・記録・保存に関する要件をすべて満たすと判断することもできません。

法令は、通常の期間を過ぎた入力の事実を確認できることを求めている

電子帳簿保存法施行規則では、通常の業務処理期間を経過して入力した場合、その事実を確認できるシステムであることを求めています。

令和9年からの条項は、第5条第4項第1号イ⑵です。令和8年12月31日までは、第5条第5項第1号イ⑵に当たります。

これは、通常の期間を過ぎた入力について、事後に確認できることを求める規定です。「毎日入力すること」や「期間経過後の入力は一律に認めないこと」を直接定めたものではありません。

参考:電子帳簿保存法施行規則

国税庁は、年1回の一括記帳を予定していないと説明している

国税庁の「電子帳簿保存法一問一答」問29は、通常の業務処理期間について、日次・週次・月次などの処理サイクルを説明し、外部委託等を考慮して最長2か月までを通常の期間として扱うとしています。

また、課税期間の開始から帳簿を備え付け、順次記録することを前提とし、1年分を課税期間終了後にまとめて記録するケースは予定していないと説明しています。

ただし、これは国税庁の制度説明です。その表現だけをもって、年1回の記帳を一律に排除する独立した法的要件がある、とまではいえません。

出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答」問28・問29(本文22ページ)

「取引の発生順」と「実際に入力した日」も分けて考える

所得税法施行規則第59条は、仕訳帳に取引の発生順で年月日・内容・勘定科目・金額を記載することを求めています。

取引を発生順に整理することと、その取引をいつ入力したかは、異なる論点です。この規定から、毎日または毎月という具体的な入力期限を直ちに導くことはできません。

参考:所得税法施行規則第59条

税理士として、どう判断するか

税務上の適用を否定するには、具体的にどの法定要件を欠くのかを検討する必要があります。「国税庁が予定していないと書いているから」という説明だけで、年1回の記帳なら控除できないと断定するのは適切ではないと考えます。

同時に、履歴が残るソフトを使っていることだけを理由に、控除を受けられると保証することもできません。

課税期間の最初からの帳簿の備付け・保存、実際の記録方法、履歴、検索機能、届出、期限内の電子申告などを確認し、判断する必要があります。

なお、これは年1回の記帳が適法・適用可能であると結論づけるものではありません。入力頻度だけで結論を出せない、という論点の整理です。

75万円控除を検討するときのチェックポイント

  • 現在のソフトと利用プランは、優良な電子帳簿の要件に対応しているか
  • 必要な履歴保存の機能・設定が、適用年の当初から働くか
  • 税理士とのデータの受渡し後も、必要な履歴を確認できるか
  • 保存期間中、帳簿・履歴の表示や必要な検索等ができるか
  • 所定の届出と、期限内のe-Tax申告に対応できるか

65万円から75万円への変更で増えるのは、税額ではなく、所得から差し引ける額です。追加の費用や作業と、経理が整う効果を併せて考えましょう。

藁総合会計事務所では、会計ソフトの仕様だけでなく、記帳の進め方や税理士との役割分担も踏まえて、対応方法を検討します。令和9年分からの適用を考えている方は、年が変わる前に現在の運用を確認しておくことをおすすめします。

東京・品川区の税理士
藁総合会計事務所