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忘年会の欠席者に 現金を渡してもよい?

「忘年会に参加する社員には会社が食事代を負担する。それなら、参加しない社員にも同じ金額を渡したほうが公平ではないだろうか」

年末が近づくと、このように考える経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。育児や介護、家庭の予定などで参加しない社員にも配慮したい。そのお気持ちはよく分かります。

ただし、税務上は、会社が忘年会の費用を負担することと、不参加者に現金を渡すことでは、取扱いが異なります。支給方法によっては、不参加者だけでなく、参加した社員にも給与課税が生じます。

結論:現金を渡す場合は、不参加者だけの問題ではありません

会社が不参加者へ現金を支給する場合、その現金は原則として給与として扱います。「忘年会代」「慰労金」などの名目に変えても、それだけで非課税にはなりません。

さらに、自己都合で参加しなかった社員に、参加の代わりとして金銭を支給すると、参加者と不参加者の全員について、不参加者への支給額に相当する給与の支給があったものとして扱われます。

一方、会社の業務の必要により参加できなかった社員への支給は、参加者への影響について取扱いが異なります。まずは次のように整理しましょう。

忘年会の会社負担と不参加者への現金支給
ケース税務上の基本的な考え方
通常の社内忘年会の費用を会社が負担し、不参加者への現金支給はしない行事の内容や費用などが相当であれば、福利厚生費として処理し、参加者に給与課税をしない取扱いが考えられます。
自己都合の不参加者へ、参加の代わりに現金を支給する不参加者だけでなく、参加者にも、その現金支給額に相当する給与課税が生じます。
会社の業務の必要により参加できなかった社員へ現金を支給する現金を受け取った社員には給与課税が生じます。ただし、その支給だけを理由に、参加者まで同額の給与課税となるわけではありません。

根拠は、所得税基本通達36-30および36-50です。会社都合で参加できなかった場合も、支給した現金自体が非課税になるわけではない点に注意してください。

会社が負担する忘年会費用は、どう考える?

社員の慰労のための通常の費用かを確認する

社員の慰労や親睦を目的とする忘年会で、通常必要と認められる範囲の費用であれば、会社の福利厚生費として処理できると考えられます。また、社会通念上一般的な社内行事の範囲であれば、参加者に給与として課税しなくてよい取扱いがあります。

ただし、領収書に「忘年会」と書いてあればよい、というものではありません。実際の目的、参加対象、会場、費用、会社の負担方法などを確認します。

  • 社員の慰労・親睦を目的とした会社の行事であるか
  • 参加の機会が、対象となる社員に広く設けられているか
  • 会社が負担する金額や行事の内容が、一般的な範囲といえるか
  • 役員や一部の人の私的な飲食になっていないか

全員に案内することと、全員が出席することは別です

実務では、対象となる社員へ広く案内し、参加できる機会を設けていたことが大切です。欠席者がいるだけで、直ちに福利厚生費として扱えなくなるわけではありません。

部署や事業所ごとに開催する場合も、業務体制などの合理的な理由があり、その部署・事業所の社員に広く参加の機会を設けているかを確認します。正社員だけに限定するなど、参加対象に差を設ける場合には、その理由も含めて検討しましょう。

なお、社員旅行について示されている「参加割合50%以上」などの基準を、通常の忘年会へそのまま当てはめることは適切ではありません。

なぜ、現金を渡すと給与課税が問題になるのでしょうか

会社が用意した会食に参加することと、自由に使える現金を受け取ることは、税務上同じではありません。

通常の社内行事への参加によって受ける利益には、給与として課税しなくてよい取扱いがあります。しかし、参加の代わりに現金を受け取れる仕組みにすると、行事に参加するか、お金を受け取るかを選べることになります。

このため、自己都合の不参加者へ代替金を支給した場合には、参加者にも、その代替金に相当する給与があったものとして扱われます。

「現金を受け取った人だけ給与処理をすればよい」と考えないことが、このテーマの重要なポイントです。

具体例:不参加者へ5,000円を渡すとどうなる?

社員20人の会社が、全社員を対象に忘年会を開催したとします。参加者は16人、家庭の予定など自己都合で参加しなかった社員は4人です。

  • 参加者の飲食代:1人当たり8,000円を会社が負担
  • 不参加者への支給:参加の代わりに1人当たり5,000円

この場合、不参加者4人が受け取る各5,000円だけでなく、参加者16人についても、各5,000円の給与の支給があったものとして扱われます。

この取扱いによる給与課税の対象額は、20人×5,000円=100,000円です。これは税額ではなく、給与として課税対象に含める金額です。また、この例で参加者に対応する金額は、飲食代の8,000円ではなく、不参加者への現金支給額である5,000円です。

実際の源泉徴収税額は、各社員の給与等の状況によって異なります。参加者には現金を渡していないため、給与計算でどのように反映するかも確認が必要です。

なお、8,000円や5,000円という金額は説明用の例であり、非課税となる上限額を示すものではありません。

業務のため参加できなかった社員は、分けて確認します

例えば、会社からの指示による顧客対応や当直業務のため、忘年会に参加できなかった社員がいる場合です。

所得税基本通達36-30では、会社の業務の必要に基づいて参加できなかった人を、参加者への課税に影響する代替金支給の対象から除いています。

ただし、その社員に渡した現金は、給与等として課税されます。「会社の仕事で欠席したのだから、現金も非課税でよい」ということにはなりません。

また、育児や介護など配慮すべき事情があることと、税務上の「会社の業務の必要に基づく不参加」に当たることは別です。事情を尊重しつつ、税務上の区分は事実に基づいて確認しましょう。

よくある誤解と注意点

「福利厚生費」で記帳すれば、社員には課税されない?

勘定科目だけで給与課税の有無は決まりません。会社側の費用処理と、社員側の給与課税・源泉徴収は、分けて確認する必要があります。

給与として扱うからといって、直ちに会社の経費にならないという意味でもありません。ただし、役員への支給は、法人税上の役員給与の制限なども別途検討が必要です。

金額が少なければ、現金でも非課税になる?

忘年会の不参加者への代替金について、「少額だから非課税」と判断できる一般的な金額基準はありません。現金支給の性質を確認する必要があります。

「忘年会とは別の慰労金」という名前にすればよい?

名称ではなく、実際の支給目的や条件で判断します。不参加者だけを対象とし、参加費相当額を渡すのであれば、参加に代わる支給ではないかを確認しなければなりません。

忘年会とは独立して支給する手当であっても、原則として給与課税を検討します。現金を商品券に置き換えるだけで非課税になるとも考えないようにしましょう。

残しておきたい記録と、開催前のチェックリスト

税務上の説明に備えるには、領収書と一緒に、行事の実態が分かる資料を残しておくと役立ちます。

  • 開催目的、日時、会場が分かる案内文
  • 案内の対象範囲と、実際の参加者一覧
  • 費用総額、会社負担額、社員負担額、一人当たりの金額
  • 請求書、領収書、支払記録
  • 現金支給の有無、支給対象者、金額、支給理由
  • 業務のため参加できなかった場合は、その業務内容や勤務記録

不参加理由は、税務判断に必要な範囲で記録すれば足ります。家庭事情などの詳細を必要以上に収集する必要はありません。

開催前には、次の点を確認してください。

  • 対象者へ広く参加の機会を設けているか
  • 予算や内容に無理がないか
  • 不参加者への現金支給を予定していないか
  • 予定している場合、参加者への給与課税の影響まで確認したか
  • 業務による不参加と、それ以外の不参加を区分できるか
  • 給与担当者や顧問税理士と、支給前に処理を確認したか

税理士としての見解:公平性は、現金以外の方法でも考えられます

私は、参加できない社員にも配慮したいという会社の姿勢は、大切にしたいと考えています。

ただ、その配慮を「不参加者に同額の現金を渡す」という形にすると、思わぬ給与課税や給与計算の負担が生じます。

例えば、昼間の開催、飲酒を前提にしない会場選び、勤務体制に応じた複数日での開催など、参加の機会を広げる工夫も考えられます。別日開催についても、会社の行事としての実態や費用の相当性を確認することが前提です。

現金でねぎらう方針を採る場合は、税務上の負担を把握したうえで、支給条件と給与処理を設計しましょう。

まとめ:案内や支給を決める前に確認しましょう

通常の社内忘年会の費用負担と、不参加者への現金支給では、税務上の取扱いが異なります。

自己都合の不参加者に参加の代わりとして現金を渡すと、参加者にも同額の給与課税が生じる点に注意が必要です。業務のため参加できなかった場合も、その社員が受け取る現金自体は給与課税の対象です。

すでに「欠席者には現金を渡す」と案内している場合や、支給を済ませている場合は、案内内容と支給記録を整理して、早めに顧問税理士へ確認してください。

東京・品川区の藁総合会計事務所では、社内行事の費用処理や、従業員への支給に伴う税務上の判断についてご相談を承っています。会社の配慮が適切な運用につながるよう、開催・支給前の段階から一緒に整理いたします。

参考資料

本記事は2026年11月2日時点で確認した国税庁公表資料に基づく一般的な解説です。実際の取扱いは、行事の内容、支給条件、不参加の事情などにより異なります。