メインコンテンツに移動
【下半期に向けて】利益が出そうな会社こそ、今からやる「利益の管理術」

「今期は、例年より利益が出そうです」

業績が順調なのは、うれしいことです。一方で、「税金はいくらになるのか」「設備投資をしても大丈夫か」「利益は出ているのに、なぜ預金が増えないのか」といった疑問が出てくる時期でもあります。

利益が見えてきた会社ほど、下半期に入る段階で、決算までの見通しを整理しておくことが大切です。

まず取り組みたいのは、年間利益の予測、納税資金の確保、そして投資後に残るお金の確認です。この3つをつなげると、利益を会社の成長と安定に生かしやすくなります。

今回は、東京・品川区の税理士、藁総合会計事務所の藁信博が、下半期から始めたい「利益の管理術」をお伝えします。

※本記事の「下半期」は、各社の事業年度の後半を指します。主に法人を想定した内容であり、個人事業主とは税務上の取扱いが異なる部分があります。

利益の管理は「決算でいくら残るか」を先に考えること

利益の管理というと、経費を細かく削ることや、決算直前の節税対策を思い浮かべるかもしれません。

もちろん経費の点検も必要ですが、それだけでは十分ではありません。経営判断に役立てるには、次の3つを分けて把握する必要があります。

  • 会計上の利益:売上から原価や経費などを差し引いた、会社の業績を示す数字
  • 税務上の所得:会計上の利益に、税務上必要な加算・減算を行った、税額計算の基礎となる数字
  • 手元資金:実際に支払いや返済に使える現預金

この3つは一致しません。利益が増えても、売掛金が未回収だったり、在庫が増えていたりすれば、手元のお金は増えにくくなります。

また、借入金の元本返済はお金が出ていきますが、通常、その返済額は経費にはなりません。

「黒字だから使っても大丈夫」と考える前に、利益と資金の両方を確認しましょう。

管理術1:上半期の数字を整え、年間利益を予測する

上半期の利益を単純に2倍にしない

上半期に500万円の利益が出たからといって、年間利益が1,000万円になるとは限りません。

繁忙期が下半期にある会社もあれば、上半期に大きな案件が集中していた会社もあります。賞与、採用費、修繕費など、これから発生する支出も違います。

まずは、売上や仕入れの計上漏れ、未払費用、在庫、減価償却費などを確認し、上半期の数字を実態に近づけます。そのうえで、次の式で予測します。

年間利益の見込み=上半期の実績+下半期の売上見込み-下半期の原価・経費見込み

下半期の売上は、確定している受注と、まだ見込み段階の案件を分けると判断しやすくなります。

「標準・慎重・好調」の3通りで考える

予測は、1つに決めつける必要はありません。

  • 標準:現在の受注状況や商談の進み具合から見込むケース
  • 慎重:受注の遅れや原価の上昇などを織り込むケース
  • 好調:追加受注などが実現したケース

特に確認したいのは、慎重なケースでも、納税や返済、通常の支払いを続けられるかどうかです。

毎月、予測と実績の差を確認すれば、採用や投資の時期も修正しやすくなります。

管理術2:納税額を見積もり、支払いまでの予定を作る

年間利益の見通しが立ったら、税理士と税額の概算を確認します。

その際、「利益の何%を税金として取っておけばよい」と一律に考えないことが大切です。会社の規模、所在地、所得の金額、繰越欠損金、税額控除の適用などによって、税負担は変わります。

納税資金を考えるときは、法人税だけでなく、地方法人税、法人住民税、法人事業税なども含めて確認します。消費税の課税事業者であれば、その納付見込みも別に計算する必要があります。

消費税は、会計上の利益に一定の率を掛けて求めるものではありません。適用している計算方法や取引内容などを踏まえて見積もりましょう。

さらに、年間の税額と、決算後に追加で支払う金額は分けて整理します。中間納付済みの金額があれば、それを踏まえて確定申告時の納付見込みを確認します。

法人税の確定申告分の納期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。自社に適用される期限と、中間納付を含む今後の支払日程を確認しておきましょう。

納税用の預金口座などで資金を分けて管理すると、設備投資や通常の運転資金に使ってしまうことを防ぎやすくなります。

管理術3:投資は「税金が減る額」より「投資後の資金」で判断する

利益が出そうになると、「今期中に何か買ったほうがよいでしょうか」というご相談をいただくことがあります。

必要な設備や人材への投資を検討することは大切です。ただし、支出によって税金が減っても、支払ったお金がそのまま戻るわけではありません。

100万円使った場合の、単純化した例

仮に、追加支出100万円がその期に全額損金となり、その支出による税負担の減少を30万円と仮定します。

追加支出による資金への影響
項目金額
追加で支払うお金100万円
税負担が減る額(仮定)30万円
支出しない場合と比べて減る手元資金70万円

※考え方を説明するための仮定です。実際の税率や税額を示すものではなく、消費税、税額控除、支払時期などの影響は考慮していません。

その投資によって、作業時間が減る、売上が増える、品質が安定するなど、会社に必要な効果が得られるかを確認しましょう。

判断の基準は、次の3つです。

  • その支出は、事業に必要か
  • 期待する効果と、回収までの期間はどのくらいか
  • 納税・返済・通常の支払いを済ませても、必要な資金が残るか

「支払えば今期の経費になる」とは限らない

利益を見ながら支出を検討するときは、税務上の処理にも注意が必要です。

  • 設備の購入:原則として資産に計上し、減価償却を通じて費用化します。特例の適用可否や、事業に使い始めた時期などの確認が必要です。
  • 商品の仕入れ:期末に売れ残った商品は、原則として在庫になります。仕入代金を支払っただけで、その全額が当期の売上原価になるわけではありません。
  • 翌期分の費用の前払い:原則として、サービスを受ける期間に対応させます。短期前払費用として支払時の損金にできる取扱いには、一定の要件があります。
  • 役員報酬の増額:利益が増えたという理由で期中に増額しても、増額部分などが税務上の損金として認められない場合があります。

契約や発注、報酬の変更を決める前に、処理方法と要件を確認しておくことが大切です。

下半期に用意したい「利益と資金の見通し表」

最初から複雑な管理資料を作る必要はありません。まずは、次の内容を1枚にまとめてみましょう。

確認する内容主なポイント
年間利益の見込み上半期実績、残りの売上、原価、固定費、臨時費用
今後の納税見込み税目ごとの金額、支払月、中間納付済みの金額
売掛金・在庫回収予定、回収の遅れ、過剰な在庫
借入金の返済毎月の元本返済、一括返済の予定
予定している投資必要性、支払時期、効果、税務上の処理
月末の預金残高決算後の納税月まで含めて、資金が不足する月がないか

預金残高は、決算日だけで判断せず、決算後の納税まで追って確認しましょう。

税理士としてお伝えしたいこと

私は、利益が出たときこそ、経営者の方に「会社にどのくらいお金を残したいか」を考えていただきたいと思っています。

納税後に残した利益は、売上が落ちたときの備えにも、次の設備投資や採用の原資にもなります。

税負担を適切に把握し、使える制度を確認することは大切です。そのうえで、会社の将来に必要なお金まで使い切ってしまわないことが、安定した経営につながります。

決算直前になるほど、検討できる時間は短くなります。下半期の早い段階から相談すれば、投資の必要性、実施時期、資金への影響を落ち着いて比較できます。

まずは、年間利益と納税後の預金残高を確認しましょう

利益が出そうな会社が、今から取り組みたいことは次の3つです。

  1. 最新の試算表を整え、年間利益を予測する
  2. 税額と納付時期を見積もり、納税資金を確保する
  3. 投資や借入返済を織り込み、決算後までの資金を確認する

「利益は出そうだが、自由に使えるお金が分からない」「今期中に投資してよいか判断したい」という場合は、最新の試算表、受注見込み、借入返済予定、投資計画をそろえて、税理士に相談してみてください。

藁総合会計事務所では、利益の見通しと納税・資金繰りをつなげながら、会社の状況に応じた判断をお手伝いします。

東京・品川区の税理士
藁総合会計事務所 藁信博

参考資料

※2026年10月27日時点で確認した公表資料に基づく一般的な解説です。実際の税務処理や制度の適用は、事業年度、取引内容、会社の状況によって異なります。