メインコンテンツに移動

「仕事で使うパソコンを買い替えたい」「利益が出ているので、決算前に機械を導入しておきたい」。設備投資を考えるとき、気になるのが「どこまで経費にできるのか」という点ではないでしょうか。

事業に必要な買い物でも、支払った金額をそのまま、その年の経費にできるとは限りません。数年間使う機械やパソコンは、原則として資産に計上し、減価償却によって費用を配分します。一方、一定の少額資産には、全額を経費にできる制度もあります。

判断のポイントは「取得価額」「使い始めた時期」「適用できる制度」の3つです。そして、経費にできることと、その投資が会社にとって有益であることは、分けて考える必要があります。

今回は、中小企業の経営者・経理担当者に向けて、機械やPCの購入時に確認したい税務上の基本を整理します。主に法人の取扱いを説明し、個人事業主に関する注意点も補足します。

※2026年9月8日時点で公表されている制度に基づいています。本文では、法人税の「損金」と所得税の「必要経費」を、分かりやすさのため「経費」と表現する箇所があります。

まず結論:高額だから経費にできないのではなく、経費にする時期が違います

事業用の機械やPCは、通常、複数年にわたって仕事に役立ちます。そのため、取得にかかった費用も、原則として数年に分けて経費にします。これが「減価償却」です。

例えば、新品の一般的なパソコンの法定耐用年数は4年です。ただし、サーバー用のものはこの4年の区分に含まれません。機械装置も一律に何年と決まっているわけではなく、設備の種類や業種などに応じて判断します。

なお、法定耐用年数は「その年数で買い替えなければならない」という意味ではありません。税務上、費用を配分するための基準です。

参考:国税庁「減価償却のあらまし」国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

取得価額で見る、経費処理の選択肢

通常1単位として取引される資産ごとの「取得価額」を基準に、主な選択肢を整理すると、次のようになります。

1単位の取得価額主な処理方法確認したい条件
10万円未満使用開始した期に全額を経費にする取扱い法人では、その期に全額を損金経理することなどが必要
10万円以上20万円未満通常の減価償却、または3年間で経費にする「一括償却資産」対象となる中小企業者等は、下記の少額資産の特例も選択肢
20万円以上40万円未満通常の減価償却、または要件を満たして少額資産の特例を適用特例は青色申告、企業規模、取得時期、年間の合計額などの要件あり
40万円以上原則として通常の減価償却別の設備投資税制に該当すれば、即時償却・特別償却・税額控除を検討できる場合あり

※この表の40万円基準は、2026年4月1日以後に取得等をする資産についての改正後の取扱いです。10万円未満・20万円未満の制度は、青色申告を要件とする40万円未満の特例とは別制度です。貸付用資産は、貸付けを主要な事業として行う場合を除き、これらの少額資産の制度から除外されます。使用可能期間が1年未満の資産にも別途取扱いがあります。

「未満」なので、10万円ちょうど、20万円ちょうど、40万円ちょうどは、それぞれの金額を下回る資産向けの制度には入りません。

参考:国税庁「少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」中小企業庁「少額減価償却資産の特例」

令和8年度改正で「30万円未満」から「40万円未満」へ

従来、「中小企業なら30万円未満のPCを一括で経費にできる」と聞いたことがある方も多いと思います。

この少額減価償却資産の特例は、令和8年度税制改正により、対象資産の取得価額が40万円未満に引き上げられました。適用期限は2029年3月31日まで延長されています。

ただし、金額だけで適用できるわけではありません。法人の場合は、主に次の点を確認します。

  • 青色申告書を提出する、対象となる中小企業者等であること
  • 資本金・出資関係・所得規模などの要件を満たすこと
  • 常時使用する従業員数について、改正後の要件を満たすこと(一般の対象法人では400人以下)
  • 対象期間内に取得等をし、事業で使用すること
  • 特例の対象とする取得価額の合計が、年300万円の限度内であること
  • 使用開始した事業年度に損金経理し、申告書に必要な明細を添付すること

法人の事業年度が1年未満の場合、300万円の限度額は月数に応じて計算します。大企業の子会社など、資本金が小さくても対象外となるケースがあります。個人事業主にも対応する特例がありますが、青色申告や中小事業者としての要件を別途確認します。

「40万円未満なら、誰でも何台でも全額経費にできる」という制度ではありません。

参考:経済産業省「少額減価償却資産の特例を拡充しました」中小企業庁「少額減価償却資産の特例」

実務で間違えやすい、4つの判断

1.価格表示だけでなく、送料や設置費も確認する

取得価額には、本体代金のほか、原則として購入のための運賃や、使用するために直接必要となる据付費なども含めます。

例えば、本体38万円の機械に、その機械の取得価額に含めるべき運搬・据付費が3万円かかれば、取得価額は41万円です。本体だけを見て40万円未満の特例を適用することはできません。

一方、保守契約や別個のサービスまで、すべて機械代に含めるとは限りません。見積書の明細と契約内容で判断します。

参考:国税庁「減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用」国税庁「特別償却の適用を受ける機械の引取運賃、据付費」

2.税込・税抜は、自社の経理方式で判定する

取得価額の金額判定は、自社が採用している消費税の経理方式に従います。税抜経理なら原則として税抜金額、税込経理なら税込金額です。免税事業者は税込金額で判定します。

例えば、税抜37万円・消費税3万7,000円のPCなら、税抜経理では37万円、税込経理では40万7,000円が基準になります。税抜経理なら40万円未満の要件に収まりますが、税込経理では収まりません。ここでは付随費用がなく、消費税等について特別な調整を要しない取引を想定しています。

参考:国税庁「消費税等の経理処理方式の違いによる少額の減価償却資産の判定」

3.請求書を分けても、別の資産になるとは限らない

金額は、通常1単位として取引される単位で判定します。独立して使うPCを複数台まとめて購入した場合と、複数の部品で一つの機能を果たす装置を購入した場合とでは、考え方が異なります。

一体の設備を請求書上だけ分割して、それぞれを少額資産にすることはできません。逆に、請求書の合計額が高いからといって、独立した複数のPCを必ず一つの資産として扱うわけでもありません。

PC本体・周辺機器・ソフトウェアを同時に購入するときも、取引単位や機能、契約内容を確認します。

参考:国税庁「少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」国税庁「租税特別措置法関係通達67の5-2・取得価額の判定単位」

4.「支払った日」ではなく「使い始めた日」が重要

決算前に注文や支払いを済ませても、まだ届いていない機械や、箱に入れたままで業務に使っていないPCは、それだけで当期の経費にはできません。

機械については、工場に搬入しただけでは足りず、据付け・試運転を終え、本来の目的で使い始めたかを確認します。納品書に加えて、設置完了日や稼働開始日が分かる記録も残しておきましょう。

例えば9月決算法人が9月中に代金を支払っても、納品・使用開始が10月なら、原則として翌期から減価償却などを検討することになります。

参考:国税庁「事業の用に供した日」

PCの購入例で、経費になる金額を比べてみましょう

以下は、すべて業務専用の新品PCについて、付随費用等を含めて取得価額が確定しているものとします。

例1:35万円のPCを購入し、その期に使い始めた

2026年9月に35万円のPCを取得し、その月から仕事で使用したとします。

青色申告を行う対象の中小企業者等で、年間の特例枠が35万円以上残っており、その他の要件も満たす場合には、35万円全額を使用開始した期の経費にできます。通常の減価償却を選ぶことも可能です。

同じPCを9台購入した場合、合計は315万円です。この315万円全額には特例を使えません。他に特例対象の購入がないとして、8台・280万円に特例を適用し、残り1台は通常の減価償却をする、といった処理を検討します。残った20万円の枠を、9台目の取得価額の一部分だけに適用することはできません。

例2:18万円のPCを「一括償却資産」にする

18万円のPCは20万円未満なので、一括償却資産として扱う選択肢があります。

法人で各事業年度が12か月の場合、経費にできる限度額は、基本的に18万円÷3年=1年あたり6万円です。通常の減価償却と異なり、初年度の使用月数で月割りしません。事業年度が短い場合には別途計算が必要です。

40万円未満の特例を利用できる事業者なら、全額を経費にする方法と、一括償却資産にする方法を比較できます。後述する償却資産税の扱いも異なるため、「一括で経費にするのが常に有利」とは限りません。

例3:60万円のPCを通常の減価償却で処理する

取得価額60万円の一般的なPCについて、法定耐用年数4年・定額法を適用し、事業年度のうち6か月使用した場合を考えます。特別な設備投資税制は使わない前提です。

60万円×定額法償却率0.250×6か月÷12か月=7万5,000円

この例の当期の減価償却費は7万5,000円です。60万円を支払っても、その全額が当期の経費になるわけではありません。

これは定額法を適用する場合の例であり、法人のPCが常に定額法になるという意味ではありません。適用する償却方法によって経費になる金額は変わります。また、通常の減価償却では、最終的に備忘価額1円を残す取扱いがあります。

参考:中小企業庁「少額減価償却資産の特例」国税庁「少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」国税庁「収支内訳書(一般用)の書き方・償却率表」

一括で経費にしても、償却資産の申告が必要です

機械やPCでは、法人税・所得税とは別に、固定資産税のうち「償却資産」に対する税金も確認します。

少額減価償却資産の特例で全額を経費にした機械やPCも、原則として償却資産の申告対象です。帳簿上の残高がなくなったからといって、申告対象から外れるわけではありません。

機械・PCの税務上の処理償却資産の申告対象
10万円未満の資産として全額を経費処理対象外
20万円未満の一括償却資産として3年間で処理対象外
中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額を経費処理原則として対象
通常の減価償却原則として対象

申告対象であっても、必ず税金が発生するわけではありません。課税標準額の合計が免税点未満である場合などは課税されませんが、申告の要否とは別の話です。経費処理した資産も、取得日・金額・設置場所・廃棄日などを管理しておきましょう。

参考:加西市「償却資産に対する課税」加須市「償却資産について」。申告先や地域の手続きは、東京都主税局「固定資産税(償却資産)」もご確認ください。

高額な機械は、購入前に設備投資税制を確認しましょう

40万円以上の機械についても、通常の減価償却以外の制度を利用できることがあります。

代表的なものに「中小企業投資促進税制」や「中小企業経営強化税制」があります。対象となる事業者・業種・設備などの要件を満たせば、通常より多くの償却費を計上する特別償却、即時償却、または税額から一定額を差し引く税額控除を検討できます。

ただし、すべての機械やPCが対象になるわけではありません。計画認定や証明書などが必要な制度もあります。購入後に経費処理を相談するより、見積もりの段階で確認することが大切です。

即時償却・特別償却は、主として経費にする時期を早める仕組みです。税額控除は税額そのものから差し引く仕組みであり、効果が異なります。当期だけでなく、翌期以降の利益見込みも含めて比較しましょう。

参考:国税庁「中小企業投資促進税制」中小企業庁「中小企業経営強化税制」

個人事業主は、仕事で使う部分を区分します

個人事業主が仕事と私生活の両方で使うPCを購入した場合、経費にできるのは、合理的に区分した業務使用分です。

また、少額資産に該当するかどうかの金額判定は、原則として業務使用割合を掛ける前の、その資産全体の取得価額で行います。例えば、50万円のPCを仕事で60%使うからといって、「事業分は30万円なので40万円未満の特例を使える」とはなりません。

仕事で使用する時間や用途など、説明できる根拠を残しておきましょう。

参考:国税庁「減価償却のあらまし」国税庁「租税特別措置法第28条の2関係通達」

税理士としてお伝えしたいこと:「経費になる」だけで買わない

35万円のPCを全額経費にできるとしても、35万円がそのまま戻ってくるわけではありません。

説明を単純にするため、課税所得が十分にあり、その35万円に対応する税負担が30%減ると仮定します。この場合、税金の減少額は10万5,000円です。35万円の支出に対し、税負担の減少を差し引いても24万5,000円の資金負担は残ります。消費税や固定資産税などはこの試算に含めていません。

この30%は説明用の仮定であり、実際の税負担は会社の所得や税率、欠損金などによって変わります。また、全額を先に経費にした分は、翌期以降に改めて減価償却することはできません。

私が設備投資の相談で重視するのは、「いくら経費にできるか」とあわせて、次の点を確認することです。

  • 作業時間や待ち時間を、どれくらい減らせるか
  • 売上、品質、安全性、情報管理の改善につながるか
  • 導入後の教育・保守・更新費用まで見込んでいるか
  • 支払後も、納税や運転資金を確保できるか

例えば、PCの入替えによって1人1日10分の待ち時間を減らせるとします。10人が年間240日使うなら、単純計算で年間400時間です。実際にその時間をどの仕事に振り向けられるかまで考えれば、税金以外の面からも投資の価値を判断できます。

業務に合う設備を選び、資金を確保し、利用できる税制を適切に使う。その順番で考えることが、無理のない設備投資につながります。

購入前に確認しておきたいチェックポイント

  • 何の業務に使い、どのような効果を期待する設備か
  • 送料・据付費などを含めた取得価額はいくらか
  • 税込・税抜のどちらで金額を判定するか
  • 通常の取引単位で、1台・1組を正しく判定しているか
  • いつ取得し、いつから業務で使用できるか
  • 自社が少額資産の特例の対象となり、年間の枠が残っているか
  • ほかの設備投資税制に必要な事前手続きはないか
  • 翌期以降の利益、償却資産の申告、支払後の資金繰りまで確認したか

見積書、設備の仕様、納品予定日、使用開始予定日がそろえば、税務上の処理と資金への影響を具体的に検討しやすくなります。決算が近いときほど、注文前のご相談をおすすめします。

東京・品川区の藁総合会計事務所では、設備投資に伴う税務処理から、利益予測・納税資金の確認まで、事業の状況に応じたご相談に対応しています。

あわせて、当サイトの利益予測や税務DXに関する関連記事、事務所紹介をご覧ください。設備投資のご相談は、当サイトのお問い合わせ窓口からお寄せください。

東京・品川区の税理士
藁総合会計事務所
税理士 藁 信博