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最近、消費税について大きなニュースが出ています。

政府は、令和9年(2027年)4月1日から2年間、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品について、消費税率を1%に引き下げる基本方針を閣議決定しました。

「消費税が1%になる」というインパクトの大きな話ですから、経営者や経理担当者の関心がそちらに向くのは当然です。

しかし、実務を担当する立場から見ると、その前に対応しなければならない日があります。

令和8年(2026年)10月1日です。

10月1日から、インボイス制度に伴う経過措置が変わります。来年4月の制度変更について考える前に、まず目前に迫った10月1日の対応を確認しておきましょう。

最初に結論――10月1日に確認したいことは3つです

中小企業と個人事業者が確認したいポイントは、大きく次の3つです。

  1. 一般課税の場合、インボイス未登録事業者からの仕入れに対する控除割合が80%から70%になる
  2. インボイス登録を機に課税事業者となった事業者は、「2割特例」がいつまで使えるのか決算期ごとに確認する
  3. 2割特例終了後に簡易課税を利用する場合、今回設けられた届出期限の特例を確認する

会社によって必要な対応は異なります。特に、「一般課税なのか」「簡易課税なのか」「2割特例を使っているのか」によって対応が大きく変わります。

2027年4月の「1%」は飲食料品についての話です

まず、現在話題になっている消費税1%について整理しておきましょう。

政府の基本方針では、令和9年4月1日から2年間、軽減税率の対象となっている飲食料品について、現在8%の消費税率を1%とすることとされています。

したがって、「消費税が全部1%になる」という話ではありません。

また、これは政府の基本方針として決定された段階です。実際の事業者の対応については、今後の法制化や具体的な制度設計、請求書・レジ・会計システムなどへの対応方法を確認していく必要があります。

一方、2026年10月1日からのインボイス制度の変更については、既に令和8年度税制改正として内容が決まっています。

将来予定されている大きな変更より、まず確定している目前の変更に対応することが重要です。

10月1日から「80%控除」が「70%控除」になります

インボイス制度では、原則としてインボイス発行事業者以外の事業者から仕入れた場合、仕入税額控除をすることができません。

ただし、制度開始による急激な負担増を避けるため、経過措置が設けられています。

課税仕入れの時期控除できる割合
2023年10月1日~2026年9月30日80%
2026年10月1日~2028年9月30日70%
2028年10月1日~2030年9月30日50%
2030年10月1日~2031年9月30日30%
2031年10月1日以後控除不可

もともとは2026年10月から50%になる予定でしたが、令和8年度税制改正により、70%、50%、30%と段階的に縮小する制度に変更されました。

11万円の外注費ならどう変わる?

たとえば、インボイス未登録の外注先へ税込11万円を支払ったとします。

消費税相当額を1万円と単純化して考えると、9月30日まではその80%である8,000円相当を仕入税額控除できます。

10月1日以後は70%ですから、7,000円相当になります。

つまり、同じ11万円を支払っても、会社側の実質的な負担は1,000円増える計算です。

個々の金額は小さく見えても、毎月継続して外注費や家賃などを支払っている場合には年間では一定の金額になります。

ただし、すべての会社が70%になるわけではありません

ここで注意したいのが、「インボイス未登録先から仕入れたら、10月から全部70%」と考えてしまうことです。

実際には、会社の消費税の計算方法によって扱いが違います。

簡易課税の場合

簡易課税では、実際の仕入税額ではなく、売上に係る消費税額に業種ごとの「みなし仕入率」を乗じて仕入税額控除を計算します。

したがって、簡易課税を適用している会社では、今回の80%から70%への変更は、原則として納付税額に直接影響しません。

2割特例の場合

インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者となり、2割特例を利用している事業者についても、仕入先ごとに実際の仕入税額控除を計算して納税額を求める制度ではありません。

そのため、2割特例を使っている期間については、80%から70%への変更を必要以上に心配する必要はありません。

税込1万円未満なら「少額特例」もあります

基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者については、令和11年9月30日まで、税込1万円未満の課税仕入れについて一定の帳簿保存のみで仕入税額控除が認められる「少額特例」があります。

これは取引先がインボイス登録事業者であるかどうかを問いません。

そのため、小さな領収書まで取引の都度「相手はインボイス登録事業者か」と確認するような過度に複雑な運用をする必要はありません。

2割特例は「2026年9月30日に全社一斉終了」ではありません

ここは非常に誤解しやすいところです。

2割特例は、「令和8年9月30日で、すべての法人が一斉に使えなくなる」という制度ではありません。

令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日が属する課税期間について適用することができます。

たとえば3月決算法人の場合、

2026年4月1日~2027年3月31日の事業年度

には2026年9月30日が含まれています。

したがって、要件を満たしていれば、令和9年3月期についても2割特例を利用できます。

法人の場合は決算月によって2割特例を最後に使える事業年度が異なりますので、顧問税理士と確認しておくことをおすすめします。

2割特例の後は「一般課税か簡易課税か」を検討します

法人については、2割特例終了後に個人事業者向けの「3割特例」はありません。

そのため、2割特例が終わった後は、原則として一般課税または簡易課税で消費税を計算することになります。

ここで重要なのが、令和8年度税制改正で設けられた簡易課税への円滑な移行措置です。

通常、簡易課税を選択する場合には、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しなければなりません。

しかし、2割特例を適用した課税期間の翌課税期間から簡易課税を選択する場合には、一定の要件のもと、その翌課税期間の確定申告期限までに届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税を適用できます。

3月決算法人ならどうなる?

たとえば、令和9年3月期まで2割特例を利用した3月決算法人を考えます。

令和9年3月期2026年4月1日~2027年3月31日要件を満たせば2割特例を利用可能
令和10年3月期2027年4月1日~2028年3月31日2割特例は利用不可

令和9年3月期に2割特例を適用し、その翌期である令和10年3月期から簡易課税へ移行するのであれば、原則として令和10年5月31日までに簡易課税制度選択届出書を提出することで、令和10年3月期から簡易課税を適用できます。

これは非常に大きな実務上のメリットです。

期首になる前に一般課税と簡易課税のどちらが有利かを予測して決めるのではなく、一定の場合には、実際にその事業年度が終了してから数字を比較した上で判断できるからです。

なお、簡易課税を選択すると原則として2年間継続して適用する必要があります。単年度の納税額だけで判断するのではなく、今後の設備投資なども含めて検討する必要があります。

では、会社側では何をすればよいのでしょうか

クライアント企業側で、10月1日から請求書の受け取り方を全面的に変える必要があるわけではありません。

むしろ、日常業務としては次の点を意識していただければ十分です。

  • 9月・10月の請求書や領収書を漏れなく保存する
  • インボイス未登録の外注先や大家などへ継続して大きな金額を支払っている場合は税理士へ伝える
  • 自社で会計入力している場合は、会計ソフトが10月からの70%控除に対応しているか確認する
  • インボイス未登録先に対して、一律に登録や値下げを求めるのではなく、取引条件は個別に検討する

特に9月から10月にまたがる外注、修繕、広告制作、システム開発などは、どの時点の課税仕入れになるのか確認が必要になることがあります。

会計事務所側では、むしろ今から準備が必要です

今回の改正は、顧客側よりも会計事務所や経理担当者側の対応の方が大きいと考えています。

当事務所では、顧問先について次のような確認が必要だと考えています。

  • 一般課税・簡易課税・2割特例の区分
  • インボイス未登録の継続取引先の有無
  • 少額特例の対象となるか
  • 会計ソフトの70%控除への対応状況
  • 2割特例を最後に利用できる事業年度
  • その後、一般課税と簡易課税のどちらを選択するか
  • 簡易課税制度選択届出書の提出期限

特に2割特例から簡易課税への移行については、顧問先ごとに決算月が異なります。

一律に「9月末までに届出を出しましょう」と考えるのではなく、会社ごとに適用期間と届出期限を管理することが重要です。

税理士として考えること――大きなニュースほど、目の前の実務を忘れない

2027年4月から飲食料品の消費税率を1%にするという政府方針は、消費者だけでなく、小売業、飲食業、卸売業、会計システムなどに非常に大きな影響を与える可能性があります。

今後、制度設計が具体化すれば、改めて企業側の対応を考えなければなりません。

しかし、税務実務では「将来大きく変わるらしい」というニュースと、「既に法律が変わり、来月から対応しなければならないこと」を分けて考えることが大切です。

まず対応すべきなのは2026年10月1日です。

一般課税の会社は70%控除への対応を確認する。

2割特例を利用している事業者は、自社がいつまで利用できるのかを確認する。

そして、その後の一般課税・簡易課税を比較する。

ここまで準備しておけば、来年4月に予定されている飲食料品の税率変更についても、制度の詳細が決まり次第、落ち着いて対応できます。

まとめ

消費税は今後しばらく制度変更が続く可能性があります。

ニュースの見出しだけを追うのではなく、「自社にはいつから、何が影響するのか」を整理することが大切です。

特に今回の10月1日の変更では、一般課税、簡易課税、2割特例によって必要な対応が異なります。

自社がどの制度を利用しているのか分からない場合や、2割特例終了後に一般課税と簡易課税のどちらを選択すべきか迷っている場合には、決算を待たず、早めに顧問税理士へ確認しておくことをおすすめします。

藁総合会計事務所では、消費税・インボイス制度について、制度そのものだけでなく、それぞれの会社の取引内容や今後の設備投資などを踏まえて実務的に検討しています。

東京・品川区の税理士
藁総合会計事務所

参考資料

  • 内閣官房「飲食料品に係る消費税率の引下げ及び給付付き税額控除(政府の基本方針)について」
  • 国税庁「令和8年度税制改正特集」
  • 国税庁「2割特例 特設ページ」
  • 国税庁「少額特例の概要」