2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とする大きな地震が発生し、宇城市と氷川町で最大震度7を観測しました。
テレビや新聞で被災地の様子を見て、「自分にも何かできないだろうか」と感じている方も多いと思います。
今回の地震では、東日本大震災を経験した東北地方や、能登半島地震で被災した地域からも、物資の提供、職員の派遣、募金活動などの支援が始まっています。台湾からも政府、企業、市民による支援が表明され、被災経験や地域、国境を越えて支援の輪が広がっています。
一方、善意であっても、支援物資を確認せずに送ったり、募集状況を確認しないまま現地へ向かったりすると、かえって被災地の負担になることがあります。
今回は、熊本の被災地を支援したい方に向けて、義援金、支援金、ふるさと納税、物資支援、災害ボランティアの違いと、寄附をした場合の税務上の取扱いを整理します。
最初に結論――今すぐできる支援は「公式窓口への寄附」
被災地を支援したい場合、現時点で最も参加しやすく、現地の負担も少ない方法は、熊本県、日本赤十字社などが設けている公式窓口を通じた寄附です。
支援方法は、大きく次のように分けられます。
- 被災した方に届ける「義援金」
- 現地で活動する団体を支える「支援金」
- 自治体の復旧・復興事業を支える「寄附金・ふるさと納税」
- 自治体などが募集する「支援物資」
- 現地で活動する「災害ボランティア」
どれが最も優れているというものではありません。誰に、どのような形で届けたいかによって、選ぶべき支援方法が変わります。
熊本地震の被害状況と広がる支援の輪
全国社会福祉協議会が公表した2026年8月4日午前11時現在の情報では、福岡県、熊本県、大分県、鹿児島県で被害が確認され、人的被害161人、住宅被害7,285棟が報告されています。
被害状況は現在も確認が続いているため、人数や棟数は今後変わる可能性があります。最新情報は、熊本県や消防庁などの公式発表をご確認ください。
支援は熊本県内だけにとどまりません。
東日本大震災を経験した宮城県では、東松島市が八代市にブルーシートや簡易トイレを送り、東北地方整備局や仙台市も職員、給水車などを派遣しています。能登半島地震で被害を受けた石川県の奥能登地域でも、熊本への募金や支援活動が始まりました。
台湾でも、政府が義援金500万台湾元を寄附すると発表したほか、頼清徳総統らによる個人寄附、企業による支援が表明されています。
災害を経験した地域が、次に被災した地域を支える――。こうした支援の連鎖は、金額だけでは表せない大きな意味を持っています。
「義援金」と「支援金」は届け先が異なる
義援金は被災した方に配分される
義援金は、被災した方の生活再建を支えるためのお金です。
熊本県や日本赤十字社などが受け付けた義援金は、被災地に設置される義援金配分委員会を通じ、被害状況などに応じて被災した方へ配分されます。
被災した方へ直接届くことが大きな特徴ですが、被害の認定や配分基準の決定が必要となるため、実際に届くまで時間がかかることがあります。
支援金は現地で活動する団体に使われる
支援金は、NPOやNGOなどが行う救援活動のためのお金です。
たとえば、次のような活動に使われます。
- 避難所への食料や生活用品の提供
- 高齢者、障害者、子どもなどへの支援
- 災害ボランティアの受入れや調整
- 被災家屋の片付けや生活環境の復旧
- 中長期的な地域再建
義援金よりも早い段階から現場で活用されやすい一方、団体によって活動内容が異なります。寄附をする前に、運営団体、使途、活動実績、報告方法を確認しましょう。
主な支援方法
1.熊本県の義援金口座
熊本県は、被災した方を支援するため「令和8年熊本地震義援金」の受付口座を開設しています。
受付予定期間は、2026年7月29日から10月30日までです。受付期間は延長・変更されることがあります。
振込先は必ず熊本県の公式ページで確認してください。SNSの転載画像や、出所の分からない口座情報だけを見て振り込むことは避けましょう。
2.日本赤十字社の災害義援金
日本赤十字社も「令和8年熊本地震災害義援金」を受け付けています。
集まった義援金は、義援金配分委員会を通じて被災した方へ届けられます。
3.自治体への寄附・ふるさと納税
熊本県や被災した市町村に対し、寄附金やふるさと納税として支援する方法もあります。
義援金が被災した方へ配分されるのに対し、自治体への復旧・復興寄附金は、道路、公共施設、地域産業などの復旧・復興事業に使われることがあります。
返礼品を受け取らない「災害支援型ふるさと納税」を選べる場合もあります。寄附金の使途や受付方法は自治体ごとに異なるため、必ず自治体の公式サイトを確認してください。
4.NPO・NGOへの支援金
現場で支援活動を行うNPOやNGOに寄附する方法です。
日本財団やジャパン・プラットフォームなども、熊本地震の被災者支援に向けた取組を始めています。
ただし、NPOや募金団体への寄附がすべて同じ税務上の取扱いになるわけではありません。「認定NPO法人か」「寄附金控除の対象となる寄附か」「受領証が発行されるか」を確認することが大切です。
5.支援物資
食料や衣類などを直接送りたいと考える方もいるでしょう。
しかし、個人から届く少量・多品種の物資は、受取場所、保管場所、仕分け作業、配送手段が必要になるため、かえって被災地の負担になることがあります。
物資を送る場合は、次の点を必ず確認してください。
- 自治体や支援団体が正式に募集しているか
- 募集している品目、数量、サイズ、荷姿
- 未使用品・未開封品などの条件
- 受付期間と送付先
- 個人からの物資を受け付けているか
募集されていない物資を、避難所や市役所へ直接送ることは控えましょう。
6.災害ボランティア
熊本県内では、市町村ごとに災害ボランティアセンターの開設や募集準備が進められています。
ただし、活動開始時期、募集地域、年齢条件、事前登録、必要な装備などは市町村ごとに異なります。県内在住者や近隣地域の住民に限定している場合もあります。
募集を確認せずに現地へ向かうと、交通渋滞、宿泊場所の不足、事故など、新たな負担を生むおそれがあります。
参加する場合は、現地の災害ボランティアセンターが発信する最新情報を確認し、ボランティア活動保険への加入、交通手段、宿泊場所、食事、飲料水、暑さ対策などを自分で準備することが原則です。
個人が寄附した場合の税務上の取扱い
個人が支出した義援金や寄附金が、所得税法上の「特定寄附金」に該当する場合には、確定申告により寄附金控除を受けられます。
一般的な寄附金控除額は、次の算式で計算します。
寄附金控除額=その年に支出した特定寄附金の合計額-2,000円
ただし、特定寄附金の合計額は、その年の総所得金額等の40%相当額が上限です。
熊本県や被災した市町村への寄附は、要件を満たせば、ふるさと納税として所得税と個人住民税の控除対象になることがあります。
ただし、寄附先によって次の点が異なります。
- 所得税の寄附金控除の対象になるか
- 住民税の寄附金税額控除の対象になるか
- ふるさと納税のワンストップ特例を利用できるか
- 所得控除と税額控除のどちらを選べるか
「災害募金であれば、どこに寄附しても全額が税金から戻る」というわけではありません。
寄附の証明書類を残しておく
寄附金控除を受けるためには、寄附先が発行する受領証、領収書、預り証などが必要です。
専用口座へ振り込んだ場合には、次のような資料が証明書類として認められることがあります。
- 金融機関の振込金受取書
- ATMの利用明細票
- インターネットバンキングの振込完了画面
- 募金要綱や公式ページの写し
何を保存すべきかは寄附先や送金方法によって異なります。寄附をした時点で、公式ページ、領収書、振込記録を一緒に保存しておくことをおすすめします。
法人が義援金・寄附金を支出した場合
会社として被災地を支援する場合には、寄附先によって法人税上の損金算入額が変わります。
| 主な寄附先 | 法人税上の基本的な取扱い |
|---|---|
| 国・地方公共団体 | 原則として全額損金算入 |
| 最終的に自治体へ拠出される日本赤十字社等の専用義援金口座 | 要件を満たせば全額損金算入 |
| 指定寄附金 | 全額損金算入 |
| 認定NPO法人等 | 特別損金算入限度額の範囲内 |
| その他の団体 | 一般寄附金として損金算入限度額の対象となる場合がある |
会社が支出した寄附金が、すべて無条件で全額損金になるわけではありません。
全額損金算入を前提にする場合は、寄附先が国・地方公共団体に該当するか、専用義援金口座に集められた全額が自治体へ拠出される仕組みになっているかなどを確認してください。
法人税の申告では、寄附金に関する明細を申告書に記載し、受領証や振込記録などを保存する必要があります。
支援するときに注意したい3つのこと
1.募金詐欺や偽サイトに注意する
大きな災害の直後には、実在する自治体や団体を装ったメール、SNS投稿、偽の募金サイトが現れることがあります。
検索広告やSNSに掲載されたリンクをそのまま開くのではなく、自治体や団体の公式サイトから寄附ページへ進みましょう。個人名義の口座への振込みや、使途の説明がない募金には慎重な確認が必要です。
2.物資やボランティアは「求められてから」
支援は、送り手の善意だけで完結するものではありません。現地で受け取り、整理し、必要な人へ届けるところまで考える必要があります。
物資や人手については、被災地が発信するニーズを確認してから行動することが重要です。
3.一度だけでなく、復旧段階でも関心を持つ
発災直後には多くの支援が集まりますが、住宅や事業の再建、地域産業の回復には長い時間がかかります。
今すぐ寄附をすることに加え、少し時間がたってから熊本の商品を購入する、観光が受け入れられる状況になった後に訪問するなど、継続的な応援も大切です。
支援前のチェックリスト
- 自治体や団体の公式サイトから申し込んでいるか
- 義援金と支援金の違いを理解しているか
- 寄附金の具体的な使途を確認したか
- 寄附金控除の対象になるか確認したか
- 受領証や振込記録を保存したか
- 物資を送る場合、正式な募集があるか
- ボランティアの募集地域や参加条件を確認したか
- 会社からの寄附は、法人税上の区分を確認したか
税理士としてお伝えしたいこと
寄附金控除や法人税の損金算入は、支援を後押しする制度です。しかし、税金が安くなることだけを目的に寄附を考える必要はありません。
大切なのは、自分がどのような支援をしたいのかを考え、信頼できる窓口を選ぶことです。
被災した方の生活再建を直接支えたいのであれば義援金、現地で活動する団体を支えたいのであれば支援金、道路や公共施設を含む地域の復旧・復興を支えたいのであれば自治体への寄附という選択肢があります。
東北や能登、そして台湾などから熊本へ支援が寄せられていることは、過去に受けた支援を次の被災地へ返していく「支え合いの循環」でもあります。
テレビを見て「何かしたい」と思った気持ちを、無理のない範囲で、被災地にとって役立つ形に変えていく。そのために、まずは公式情報を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
熊本地震の被災地を支援する方法には、義援金、支援金、ふるさと納税、支援物資、災害ボランティアなどがあります。
現時点で参加しやすいのは、熊本県や日本赤十字社などの公式窓口を通じた寄附です。物資支援やボランティアについては、現地の募集状況と条件を確認してから行動してください。
また、個人の寄附金控除や、法人の損金算入の可否は寄附先によって異なります。受領証や振込記録を保存し、税務上の取扱いが分からない場合は税理士へご相談ください。
藁総合会計事務所では、個人・法人による災害義援金、寄附金、ふるさと納税の税務上の取扱いについてご相談を承っています。
※本記事は2026年8月5日現在の公表情報に基づいています。被害状況、受付期間、募集条件は変更されることがあります。寄附やボランティアへの参加前に、各機関の公式サイトで最新情報をご確認ください。