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関連者間取引に係る書類の整理保存の特例とは?契約書だけでは足りない場合に注意

親会社、子会社、兄弟会社、社長の別会社など、いわゆる関連会社との取引は、中小企業でも珍しくありません。

たとえば、グループ会社に経営指導料を支払っている、関連会社からシステム利用や管理業務の提供を受けている、親族会社に業務委託料を支払っている、といったケースです。

これまでも、関連会社との取引については、金額の妥当性や取引実態が税務調査で確認されることがありました。そこに加えて、令和8年4月1日以後開始事業年度から、「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」が適用されます。

この制度で特に重要なのは、契約書や請求書があるだけでは足りない場合があるという点です。取引の内容や対価の計算方法が書類上明らかでない場合には、それを補う書類を申告期限までに取得または作成し、保存しておく必要があります。

制度の基本的な考え方

この特例は、青色申告法人が、関連者との間で一定の取引を行った場合に関係します。

対象となるのは、主に法人が関連者から工業所有権等の譲渡・貸付けを受ける場合や、一定の役務提供を受ける場合です。実務上は、次のような支払いが問題になりやすいと考えられます。

  • 親会社や関連会社への経営指導料
  • グループ会社への管理料、業務委託料
  • 関連会社へのシステム利用料
  • 商標、著作権、ノウハウ、ソフトウェアなどの使用料
  • 研究開発、広告宣伝、共同事業に関する費用負担金
  • 専用資産の使用料や維持管理費

これらの取引について、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などの取引関係書類に、必要な事項が記載されていない場合には、その不足している事項を明らかにする書類を別途保存する必要があります。

この補足書類を、条文上は「特定事項記載書類」といいます。

契約書があっても安心できない理由

中小企業でよくあるのは、契約書や請求書には次のように記載されているケースです。

「経営指導料 月額50万円」

「業務委託料 一式」

「システム利用料 月額30万円」

このような記載だけでは、税務上、十分な説明資料にならない場合があります。なぜなら、書類を見ても、何の業務を受けたのか、その業務が自社にどう役立ったのか、金額をどのように決めたのかが分からないからです。

この制度で確認すべきなのは、単なる支払名目ではありません。実務上は、次のような内容を説明できる状態にしておく必要があります。

  • どのような役務提供を受けたのか
  • その役務は自社の事業にどう関係しているのか
  • 誰が、いつ、どのように業務を行ったのか
  • 対価の金額はどのように計算したのか
  • 費用配賦の基準は合理的か
  • 無形資産の場合、その権利の内容や使用実態は何か

つまり、「契約書があるか」だけでなく、「契約書や関連資料を見れば、取引内容と金額の根拠が分かるか」が重要になります。

関連者の範囲は資本関係だけではない

関連者というと、親会社や子会社だけをイメージしがちです。しかし、この制度における関連者の範囲は広く、資本関係だけではなく、実質的な支配関係も含まれます。

主な関係は次のとおりです。

  • 一方の法人が他方の法人の株式等を50%以上、直接または間接に保有している関係
  • 同一の者により、二つの法人がそれぞれ50%以上保有されている兄弟会社関係
  • 役員の兼務などにより、事業方針を実質的に決定できる関係
  • 取引依存、資金依存、保証関係などにより、実質的な支配がある関係
  • これらの関係が連鎖するグループ会社関係

特に注意すべきなのは、株式保有割合だけで判断しないことです。

たとえば、株式保有が50%未満であっても、役員の多くが同じ、売上の大部分を特定の会社に依存している、資金調達を特定の会社からの借入や保証に依存している、といった事情がある場合には、関連者に該当するかどうかを慎重に確認する必要があります。

判定時点は取引が行われた時

関連者に該当するかどうかは、それぞれの取引が行われた時の現況で判定します。

そのため、期末時点だけを見て判断するのは危険です。

たとえば、期中に株式移動があった場合、役員構成が変わった場合、グループ再編があった場合には、取引時点ごとに関連者に該当するかを確認する必要があります。

決算時にまとめて確認するだけでは、取引時点の状況を正確に把握できないことがあります。グループ再編や株式譲渡がある会社では、期中管理が重要です。

第三者を挟んだ取引にも注意

この制度では、形式上は非関連者との取引であっても、実質的に関連者間取引とみなされる場合があります。

たとえば、関連者が外部業者と契約し、その成果物やサービスを最終的に自社が受けることがあらかじめ決まっている場合です。さらに、その対価が実質的に自社と関連者との間で決められていると認められる場合には、自社と関連者との取引とみなされる可能性があります。

実務上は、次のようなケースに注意が必要です。

  • 親会社が外部ベンダーと契約し、その費用を子会社に配賦している
  • 関連会社がグループ全体のシステム契約を行い、各社に利用料を請求している
  • 広告宣伝や研究開発を関連会社が一括して行い、各社に費用負担を求めている
  • 外部業者を挟んでいるが、実質的な条件決定はグループ内で行われている

「請求書の相手が外部業者だから関係ない」と単純に判断するのではなく、取引の実態を確認することが必要です。

電子取引の場合の誤解にも注意

特定事項を電子取引により取得した場合には、この条文上の取扱いについて特別な定めがあります。

ただし、これは「電子データで受け取ったものは保存しなくてよい」という意味ではありません。

メールで受け取った業務報告書、クラウド上の費用配賦表、電子契約書、PDFの請求明細、ワークフロー上の承認記録などは、電子帳簿保存法上の電子取引データとして、適切に保存する必要があります。

紙で印刷してファイルしているだけでは、電子取引データの保存として十分でない場合があります。電子帳簿保存法の保存要件もあわせて確認しておくことが重要です。

実務上の注意点

この制度への対応で、実務上特に注意すべき点は次のとおりです。

  • 関連者との取引を期中から洗い出すこと
  • 契約書や請求書だけで内容が分かるか確認すること
  • 業務内容、成果物、計算根拠を別紙で残すこと
  • 対価の計算方法を説明できるようにすること
  • 費用配賦の基準を明確にすること
  • 申告期限までに資料を取得または作成すること
  • 電子取引データの保存方法も確認すること

特に重要なのは、申告期限までに書類を準備しておくことです。税務調査が来てから説明資料を作ればよい、という制度ではありません。

よくある失敗例

中小企業でありがちな失敗例として、次のようなものがあります。

  • 社長の別会社に毎月定額の業務委託料を支払っているが、業務内容の記録がない
  • 親族会社に管理料を支払っているが、何を管理しているのか説明できない
  • グループ会社に経営指導料を支払っているが、会議記録や指導内容が残っていない
  • システム利用料を支払っているが、利用範囲や計算方法が不明確
  • 費用配賦を売上比や人数比で行っているが、その基準を決めた資料がない
  • 契約書はあるが、「業務一式」「管理業務」など抽象的な記載しかない
  • 電子契約書やPDF資料を保存しているつもりだが、電子帳簿保存法上の保存体制が整っていない

これらの取引は、単に書類保存の問題にとどまりません。場合によっては、寄附金、役員給与、交際費、同族会社の行為計算否認など、別の税務論点につながる可能性もあります。

経営者・実務担当者が確認すべきポイント

関連者間取引については、次のチェックリストを使って確認するとよいでしょう。

  • 関連会社、親族会社、社長の別会社との取引を一覧にしているか
  • 取引先が関連者に該当するか確認しているか
  • 取引ごとに契約書、請求書、見積書、発注書があるか
  • 契約書に業務内容や対価の計算方法が具体的に書かれているか
  • 業務報告書、成果物、議事録、メールなどの実態資料が残っているか
  • 金額の決め方を説明できる資料があるか
  • 費用配賦の基準が合理的に説明できるか
  • 申告期限までに不足資料を作成・保存できる体制があるか
  • 電子データの保存方法が電子帳簿保存法に対応しているか

この制度は、税務部門だけで対応するものではありません。経営者、経理担当者、グループ会社の管理部門が連携して、取引の実態と資料を整理する必要があります。

保存しておきたい資料

関連者間取引については、次のような資料を取引ごとに整理しておくとよいでしょう。

  • 関連者判定表
  • 資本関係図、役員関係図
  • 関連者間取引一覧表
  • 契約書、覚書、発注書、請求書、見積書
  • 業務内容の明細
  • 業務報告書、成果物、会議資料、議事録
  • 対価の計算資料
  • 費用配賦基準の説明資料
  • 取締役会議事録、稟議書、承認記録
  • メール、ワークフロー、電子契約データなどの電子記録

重要なのは、「後から説明できるか」という視点です。形式的な書類をそろえるだけではなく、実際に業務が行われ、その対価として支払ったことが分かる資料を残しておく必要があります。

まとめ

関連者間取引に係る書類の整理保存の特例は、単なる書類保存の話ではありません。

関連者への支払いについて、「何をしてもらったのか」「なぜその金額なのか」「どのように計算したのか」を、申告期限までに説明できる状態にしておくことが求められます。

特に、経営指導料、管理料、業務委託料、システム利用料、ブランド使用料、研究開発費や広告宣伝費の負担金などは、注意が必要です。

中小企業では、社長の別会社、親族会社、グループ会社との取引が日常的に行われることがあります。その場合、契約書や請求書だけで安心せず、取引内容と金額の根拠を具体的に整理しておくことが重要です。

決算時に慌てて対応するのではなく、期中から関連者間取引を一覧化し、必要資料を残す運用に変えていきましょう。

藁総合会計事務所へのご相談

藁総合会計事務所では、東京都品川区を拠点に、中小企業の税務、会計、決算、資金繰り、税務調査対応、グループ会社間取引の整理などを支援しています。

関連会社、親族会社、社長の別会社との取引は、日常的な処理のように見えて、税務調査では重要な確認事項になることがあります。

「契約書はあるが内容が抽象的で不安」「経営指導料や業務委託料の根拠を整理したい」「関連者間取引の一覧を作りたい」といった場合には、早めに専門家へご相談ください。

参考資料

  • 法人税法施行規則 第59条の2 関連者間取引に係る書類の整理保存の特例
  • 法人税法施行規則 第59条 帳簿書類の整理保存
  • 電子帳簿保存法 電子取引データの保存制度
  • 税務研究会「関連者間取引 申告期限までに対価の算定根拠等の記載書類を準備」