【42年ぶり改正】食事補助の非課税枠が「月3,500円→7,500円」に拡大!実務への影響を税理士が解説
「社員へのランチ補助を増やしたい」
「物価高で従業員の負担が重くなっている」
「でも、給与課税されると意味がない…」
このような悩みを抱える会社にとって、大きな改正が行われました。
令和8年度税制改正に伴い、会社が役員・従業員へ支給する食事について、給与として課税されない非課税限度額が、42年ぶりに引き上げられます。
具体的には、所得税基本通達36-38の2の改正により、 会社負担額の非課税限度額が「月額3,500円以下」から「月額7,500円以下」へ 引き上げられる予定です。
さらに、深夜勤務時の夜食代についても、 1回300円以下 → 650円以下 へ引き上げられます。
今回は、この改正の内容と、会社実務への影響を詳しく解説します。
■ そもそも「食事補助」はなぜ課税されるのか?
会社が従業員へ無償で食事を提供すると、 従業員は「経済的利益」を受けたことになります。
そのため、原則論では、 会社負担分は給与として課税対象になります。
しかし、食事支給には福利厚生的な性格も強いため、 一定要件を満たす場合には、 所得税基本通達36-38の2により、 給与課税しなくてよい取扱いが認められています。
■ 非課税となる2つの要件
今回の改正後も、非課税要件そのものは変わりません。
次の2つを両方満たす必要があります。
① 従業員が食事代の50%以上を負担していること
例えば、1食1,000円の弁当なら、 従業員自身が500円以上負担している必要があります。
② 会社負担額が月7,500円以下であること
今回ここが改正されました。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 会社負担の非課税限度額 | 月3,500円以下 | 月7,500円以下 |
| 夜食代(深夜勤務) | 300円以下 | 650円以下 |
適用開始は、 令和8年4月1日以後に支給する食事 からです。
■ 「42年間据え置き」だった異常さ
実は、この月3,500円という基準、 昭和59年(1984年)から据え置かれていました。
つまり、 約42年間変更されていなかった のです。
1984年当時と現在では、 物価水準も外食価格も大きく異なります。
現在では、 コンビニ弁当やランチでも 1食700円~1,000円程度かかるケースも珍しくありません。
そのため、 「実態に合っていない」 という指摘が長年続いていました。
今回の改正は、 近年の急激な物価高への対応として行われたものです。
■ 実務上、特に注意すべきポイント
① 「7,500円までなら何でも非課税」ではない
ここは誤解されやすいポイントです。
非課税になるのは、 あくまで 「食事の支給」 です。
単純に「食事手当」として現金を支給すると、 通常は給与課税されます。
つまり、
- 社員食堂
- 会社購入弁当
- 食事チケット
- 福利厚生型の食事サービス
など、 実態として「食事支給」であることが重要です。
② 従業員負担50%要件は残る
今回の改正でも、 「本人負担50%以上」のルールは維持されています。
会社が全額負担すると、 原則として給与課税となる可能性があります。
つまり、
- 会社だけが負担する
- 本人負担が形式だけ
- 給与天引き実態がない
というケースは、 税務調査で問題になりやすいため注意が必要です。
③ 消費税の取扱いにも注意
非課税限度額判定は、 消費税等を除いた金額で行います。
さらに、 10円未満は切り捨てとなります。
給与計算・福利厚生システム側でも、 改正対応が必要になる可能性があります。
■ 深夜勤務の夜食代も改正
所得税基本通達36-24では、 深夜勤務者への夜食について、 現物支給が困難な場合には、 一定額まで金銭支給でも給与課税しない取扱いがあります。
こちらも、
- 300円以下 → 650円以下
へ引き上げられます。
コンビニ価格や外食価格の上昇を考えると、 こちらも実態に合わせた見直しと言えるでしょう。
■ 中小企業にとっては「第3の賃上げ」になる可能性
近年、
- ベースアップ
- 社会保険料負担増
- 最低賃金上昇
- 物価高
などにより、 中小企業の人件費負担は大きくなっています。
その中で、 食事補助は、 従業員満足度を高めながら、 比較的効率的に福利厚生を充実できる制度です。
実際、 「第3の賃上げ」として注目されています。
■ まとめ
今回の改正は、 単なる通達改正ではありません。
42年間据え置かれていた制度が、 物価高という現実に合わせて、 ようやく見直されたという点に大きな意味があります。
ただし、
- 本人負担50%以上
- 「食事支給」であること
- 現金支給との区別
- 月額管理
など、 従来通り注意すべきポイントも残っています。
制度を正しく活用すれば、 従業員支援と福利厚生強化の両立につながります。
自社の食事補助制度が適切か不安な場合は、 給与課税や源泉徴収の問題も含め、 税理士へ確認することをおすすめします。