「社長が会社のお金を一時的に借りたい」「資金繰りが厳しい関係会社を支援したい」「子どもの住宅購入資金を貸してあげたい」。身近な相手とのお金の貸し借りでは、金利や返済条件を後回しにしてしまうことがあります。
しかし、税務では、利息を取らないことで相手に与えた利益も検討の対象になります。
関係者間の貸付金に、すべて共通する「適正金利」はありません。誰から誰への貸付けなのかを整理し、金利の根拠と実際の返済を確認することが大切です。
本稿では、国内の会社・役員・親族間の貸付けを中心に解説します。情報確認日:2026年9月8日。
まず確認したい「お金の向き」
| 貸す人 → 借りる人 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 会社 → 役員・従業員 | 利息相当額の評価と、無利息・低利による給与課税 |
| 会社 → 関係会社 | 通常の金利、寄附金の扱い、再建支援の合理性 |
| 役員個人 → 会社 | 無利息とする理由、受取利息の所得税申告 |
| 親 → 子などの親族間 | 貸付けの実態、返済能力、元本・利息相当額の贈与 |
「役員貸付金」は会社が役員に貸したお金、「役員借入金」は会社が役員から借りたお金です。名前は似ていますが、税務の確認事項は異なります。
会社から役員・従業員へ貸す場合
令和8年の一定の貸付けでは年1.3%が基準
所得税基本通達36-49では、会社が外部から借りた資金をそのまま貸したことが明らかな場合、その借入金の利率で利息相当額を評価します。それ以外の場合には、貸付けを行った年の「利子税特例基準割合」を使います。
| 貸付けを行った年 | 外部借入金の利率によらない場合の評価利率 |
|---|---|
| 令和4年~令和7年 | 年0.9% |
| 令和8年 | 年1.3% |
令和8年の1.3%は、所得税基本通達36-49の定めと、国税庁が公表する令和8年の利子税特例基準割合を照合したものです。これは役員・従業員が受ける利益を所得税上評価するための基準であり、関係者間の契約金利を一律に指定するものではありません。
また、上の区分は「利息を計算する年」ではなく「貸付けを行った年」です。過去の貸付残高を、令和8年になったという理由だけで一律に1.3%へ変更するものではありません。追加貸付けや借換えがある場合は、貸付日と契約内容を個別に確認します。
根拠:国税庁・所得税基本通達36-49、国税庁・延滞税の割合(参考欄の利子税特例基準割合)。
無利息・低利の場合は差額が給与になるのが原則
基準となる利息と実際に支払う利息との差額は、原則として役員・従業員への給与として課税されます。ただし、災害や病気に伴う合理的な生活資金の貸付け、会社の平均調達金利などに基づく合理的な利率での貸付け、年間の利息差額が5,000円以下の場合などには、給与課税しなくてよい取扱いがあります。
5,000円は貸付元本の上限でも、常に差し引ける控除額でもありません。低い金利を設定する場合は、どの取扱いによるのかを説明できるようにします。根拠:国税庁「No.2606 金銭を貸し付けたとき」。
給与課税が生じる場合は、源泉徴収も確認します。会社側でその経済的利益を損金にできるかは別の問題です。役員への利益が毎月おおむね一定であるなど、定期同額給与に該当する場合もあるため、「認定された利息は必ず役員賞与となり、全額損金不算入」と一律にはいえません。根拠:国税庁「No.5202 役員等に対する経済的利益」。
計算例:500万円を1年間貸す場合
令和8年に貸し付け、年1.3%で評価するケースを考えます。貸付残高は1年間500万円のままで、災害等の例外や合理的な別の利率による取扱いは適用しない前提です。
- 評価上の利息:500万円 × 1.3% = 65,000円
- 実際の契約金利が年0.5%の場合の利息:500万円 × 0.5% = 25,000円
- 給与課税の対象となる差額:65,000円 − 25,000円 = 40,000円
40,000円は税額ではなく、給与として扱う利益の額です。途中で返済・追加貸付けがあれば、残高と期間に応じて計算し直します。
関係会社へ貸す場合は、通常の取引条件を確認する
法人間の貸付けでは、役員向けの年1.3%をそのまま使えばよいとは限りません。貸し手の資金調達状況や市場金利を確認し、実務上は貸付期間、担保、返済条件なども踏まえて金利の根拠を整理します。
国税不服審判所の平成18年12月14日裁決には、複数の借入金を原資とした貸付けについて、借入利率の加重平均を用いることに合理性を認めた事例があります。すべての貸付けで平均調達金利が正解という意味ではありませんが、金利の数字だけでなく算定根拠が重要であることが分かります。出典:国税不服審判所・貸付金利息の裁決事例要旨。
合理的な理由なく無利息・低利で利益を与えると、貸し手側で利息相当額の収益を認識し、その利益供与を寄附金として扱う問題が生じます。一般の寄附金には損金算入限度額があるため、実際に利息を受け取っていなくても法人税の負担につながり得ます。根拠:国税庁「No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算」。
なお、法人による完全支配関係がある内国法人間では、寄附金は全額損金不算入、対応する受贈益は益金不算入となる特則があります。同じ個人が両社の株式を100%持つ場合にまで、この特則をそのまま当てはめることはできません。根拠:国税庁・完全支配関係にある内国法人間の支援損について。
経営再建のための支援には例外がある
業績不振の子会社等の倒産を防ぐため、合理的な再建計画に基づいて行うなど相当な理由のある無利息貸付けは、利益供与を寄附金としない取扱いがあります。
単に「赤字だから」「同じグループだから」という説明で済ませず、支援の必要性、金額、期間、再建の見通しを記録します。再建状況を定期的に確認し、倒産の危機を脱した後も漫然と金利免除を続けないことが大切です。根拠:法人税基本通達9-4-2、国税庁・再建管理の有無。
役員個人から会社へ貸す場合も、無利息の理由を残す
社長が個人資金で会社の支払を支える場面はあります。会社から社長への貸付けとは異なるため、前述の給与課税の基準を逆向きに適用するものではありません。
ただし、「個人から自分の会社への貸付けなら、無利息で常に問題ない」と断定することもできません。令和7年3月7日の裁決では、同族会社への無利息貸付けについて経済合理性が認められず、所得税法157条により利息相当額を個人の雑所得の収入に算入する判断がされています。
この裁決は、通常の資金繰り支援を一律に否定したものではありません。貸付目的、金額、期間、会社の資金状態などを踏まえ、無利息とする理由を説明できるようにすることが実務上の教訓です。出典:国税不服審判所・令和7年3月7日裁決。
利息を受け取る場合、貸金業などに当たらない個人の貸付利息は原則として雑所得です。同族会社の役員等がその会社から給与のほかに貸付金の利子を受け取る場合は、給与所得者の「給与以外の所得が20万円以下なら申告不要」という取扱いの対象外となるため注意してください。根拠:国税庁「No.1500 雑所得」、国税庁・確定申告が必要な方。
親族間では、金利とともに「本当に返す借入れか」を確認する
親から子への貸付けは、返済能力や実際の返済状況から本当の貸付けと認められれば、元本そのものが贈与になるわけではありません。一方、返すつもりのない資金を貸付金と表示しただけの場合や、返済をいつまでも求めないような場合は、元本が贈与として扱われます。
無利息による利益についても贈与の問題があります。ただし、利益が少額である場合や課税上の弊害がない場合には、課税上あえて取り上げなくてもよい通達上の取扱いがあります。「無利息なら必ず贈与税が発生する」とも、「契約書さえあれば大丈夫」ともいえません。
親族間でも、借入目的や期間に見合う金利を検討し、返済日・返済額を決め、振込などで履歴を残しましょう。役員向けの年1.3%を、親族間貸付けの一律の基準にしないことも大切です。根拠:国税庁「No.4420 親から金銭を借りた場合」、相続税法基本通達9-10。
貸付けの前と決算前に確認したい6項目
- 相手と資金の出所:誰から誰へ、どの資金を貸すのか。
- 金利の根拠:借入利率、平均調達金利、比較した融資条件などを保存しているか。
- 契約:金額、貸付日、利率、利払日、返済期限、返済方法を明記しているか。
- 返済能力:収入や資金繰りから、無理なく返せる計画になっているか。
- 実際の入出金:元本返済・利払の履歴が契約と一致しているか。
- 残高と見直し:未収利息や追加貸付けが積み上がっていないか。支援理由が続いているか。
帳簿に未収利息を計上するだけで、何年も回収しない状態は避けたいところです。返済が難しくなった場合は放置せず、事情を確認して契約や支援方針を見直します。
税理士としての見解――金利の説明と返済の実態をセットに
私が関係者間の貸付けで大切にしたいのは、「なぜ、その条件にしたのか」を第三者にも説明できることです。近しい相手ほど話が早く進みますが、その分、条件が曖昧になりがちです。
金利だけを決めても、返済期限がなく、元本も利息も回収されなければ、実態を説明しにくくなります。金利の根拠、契約書、実際の返済を一つの組として管理することが、会社の資金と関係者との信頼を守ることにつながります。
決算書に役員貸付金や関係会社貸付金が残っている場合は、まず残高と最後の返済日を確認してみてください。金額が大きい場合、長期化している場合、無利息の理由が整理されていない場合は、決算を待たずに税理士へ相談することをお勧めします。
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