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2026年9月8日時点の公表資料・報道に基づく記事です。食料品の税率引下げは政府方針の段階であり、本稿は関連法の成立・施行を前提にした確定的な案内ではありません。税率は、消費税と地方消費税の合計で表記しています。

食料品の消費税を1%に引き下げる方針が、注目されています。家計への影響や財源をめぐる議論に加え、経営者や経理担当者に知っていただきたい論点があります。現在、食料品と同じ8%が適用されている「定期購読の新聞」の扱いです。

食料品が1%、定期購読の新聞が8%、その他が原則10%となれば、消費税の税率は3本立てになります。私は、定期購読の新聞も標準税率10%に見直し、他の情報媒体と税率をそろえるべきだと考えています。食料品の減税を機に、新聞に残る8%の特例も整理することを提言します。

食料品だけが1%になれば、8%は新聞に残る

政府が示しているのは、2027年4月1日から2年間、現在の軽減税率の対象となる飲食料品の消費税率を1%にする方針です。対象は「軽減税率が適用される商品すべて」ではなく、飲食料品です。内閣官房・2026年8月5日閣議決定の基本方針

新聞についても報道はあります。8月25日の共同通信記事では、小野寺五典・自民党税調会長が、定期購読の新聞は8%を据え置く方針を示したと伝えています。共同通信「定期購読の新聞は消費税8%据え置き」

現在の税率と、示されている方針どおりに実施された場合の比較
対象現行実施された場合
酒類・外食を除く飲食料品8%1%(2年間の方針)
要件を満たす紙の新聞の定期購読8%8%据え置き
新聞の店頭購入・電子版10%10%継続
一般の書籍・雑誌・電子書籍10%10%継続
酒類・外食・文房具など10%10%継続

新聞の軽減税率は、定期購読契約に基づく、週2回以上発行などの要件を満たすものに限られます。表の書籍等は通常の課税取引を想定しており、教科用図書などの非課税取引は含みません。国税庁・軽減税率制度国税庁・新聞の取扱い

新聞の軽減税率には、どのような理由があったのか

2016年2月16日の国会答弁で、政府は、新聞が広く日常的に利用される情報媒体であること、購読料の税負担が低所得者ほど相対的に重くなることなどを理由に挙げました。読者の負担増を抑えるという説明です。衆議院本会議録・2016年2月16日

一方、日本新聞協会は、知識を得ることへの課税を抑え、民主主義を支える新聞・書籍・雑誌などに軽減税率を適用すべきだと主張していました。情報を得る機会と活字文化を支える、という考え方です。日本新聞協会・2015年9月17日の声明

新聞が取材や検証を重ね、地域社会や政治、経済の情報を届ける役割には、大きな意義があります。情報を得るための負担に配慮するという政策目的も、理解できます。

同じ新聞でも、紙の定期購読は8%、電子版は10%

問題は、その目的に対して、対象の線引きが適切なのかという点です。

紙の新聞を定期購読すれば8%ですが、同じ新聞を売店で購入すると10%です。電子版を継続して購読していても10%になります。国税庁・消費税のしくみ

電子版は税法上、紙の新聞の譲渡とは異なるサービスとして扱われます。しかし、この法的な分類は、現在の税率を説明するものであって、税率に差を設ける政策上の必要性まで説明するものではありません。

知識や情報へのアクセスを支えるのであれば、なぜ一般の書籍や雑誌、電子書籍、電子版の新聞は10%なのか。同じ情報を得るにも、購入方法や媒体によって税負担が変わることについて、納得できる説明が必要です。

ここでいう新聞の「優遇」とは、標準税率10%に対して8%が適用されることです。今回、新たな優遇が追加されるという意味ではなく、既存の優遇を引き続き残すことの妥当性を問っています。

3税率の管理は、食品を売らない会社にも関係する

税率が増える影響は、小売店だけにとどまりません。例えば、一般企業が来客用のお茶、定期購読の新聞、事務用の文房具を購入するとします。

方針どおりに実施された場合の経理例
支出税率確認する点
来客用の茶葉・ペットボトルのお茶1%飲食料品の購入として区分
要件を満たす紙の新聞の定期購読8%従来の8%を継続
文房具・電子版の新聞10%標準税率として区分

現在の「軽減8%」を、会計ソフト上で一括して「1%」に変更すると、新聞の税率まで変えてしまうおそれがあります。取引内容ごとの設定、請求書の確認、経費精算ルールの更新が必要になります。

原則課税の事業者では、購入にかかった税額の誤りが、仕入税額控除を通じて納税額にも影響します。ソフトが計算をしてくれても、その前提となる税区分が正しいかどうかの確認は欠かせません。

また、2年間の措置が終了する際にも、税率を戻すための対応が想定されます。返品や値引きなど、税率変更前の取引に関連する処理もあるため、単に設定値を上書きすれば済むとは限りません。具体的な処理は、成立する法律と公表される実務資料の確認が必要です。

定期購読の新聞を10%に見直すべき理由

私の提言は、定期購読の新聞に適用される8%の特例を廃止し、標準税率10%にそろえることです。理由は、次の四つの視点から整理できます。

  • 目的:低所得者の負担軽減なのか、情報へのアクセス支援なのか。何を達成する制度なのかを明確にする。
  • 公平性:紙の定期購読と電子版、新聞と書籍・雑誌との間に税率差を設ける合理性を検証する。
  • 効果:実際にどの所得層の負担をどの程度減らし、情報を得る機会の確保につながっているかを確認する。
  • 実務負担:税率を一つ残すことで必要になる改修費、確認作業、教育、誤処理への対応も政策評価に含める。

情報を得るための支援が必要であれば、図書館での新聞・雑誌・書籍の閲覧環境や、必要な人への購読・通信費支援など、媒体を限定しない方法を検討するべきです。支援策にも費用と事務負担は生じますが、対象者と効果を明確にして比較できます。紙の新聞の定期購読だけを優遇する現在の制度を、そのまま維持する理由にはなりません。

10%への見直しによる負担増にも、正面から向き合う

8%から10%に変われば、購読者には負担増が生じ得ます。例えば、税抜月額4,000円を据え置いて税率変更分を価格に反映した場合、税込4,320円が4,400円となり、月80円、年960円の増加です。実際の購読料金は新聞社の価格設定によって変わります。

購読者や販売店への影響を検証し、十分な周知と準備期間を設けることは必要です。負担増があることを明示したうえで、他の媒体との公平性、支援の効果、社会全体の事務負担から判断するべきです。

税理士として、分かりやすく説明できる税制を求めたい

経営者や経理担当者は、制度が決まれば対応しなければなりません。その時間や費用も、社会が負担するコストです。

新聞の社会的役割を評価することと、現在の優遇を維持することは、別々に検討できます。新聞を含む報道機関にも、自らの商品に適用される税制について、導入の理由と見直しの論点を読者に分かりやすく伝えることを期待します。

定期購読の新聞も10%にそろえれば、食料品減税の期間中、通常の課税取引に適用する税率を食料品1%とその他原則10%の2本に整理できます。新聞に残る8%の特例を見直すことを、食料品減税とあわせて議論するべきです。

もちろん、食品の対象範囲の判定や、変更前の取引に係る返品等への対応までなくなるわけではありません。10%に統一した新聞についても、移行時には設定変更が必要です。それでも、将来の通常取引で新聞だけの8%区分を持ち続ける負担は減らせます。

以上は制度見直しの提言であり、新聞の10%への変更が決まったわけではありません。実際の経理は、その時点で施行されている制度に従ってください。

事業者の皆さまは、まず自社の支出に食料品、紙の新聞、電子版の新聞が含まれているかを確認してください。法案・実務資料の公表に合わせて、会計ソフトの対応と税区分の設定を確認していきましょう。

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