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8月は「利益の中間確認」に最適な月です|決算シミュレーションで年末の慌ただしさを防ぐ

「利益が出ていることは分かっていたけれど、税額までは予想していなかった」

「決算直前になってから、設備投資や賞与を慌てて検討した」

「売上は増えているのに、なぜか手元に現金が残っていない」

決算の時期になると、このようなご相談が増えます。

そこで中小企業におすすめしたいのが、8月に行う「利益の中間確認」です。

8月という月に税務上の特別な制度があるわけではありません。しかし、夏季休暇などで業務がいったん区切られ、年末までの見通しも立ち始めるため、売上、利益、納税額、資金繰りを確認するには適した時期です。

特に3月決算法人にとっては、8月末で事業年度の5か月が経過します。上半期の着地が見え始める時期なので、9月末の半期決算を待たず、一度シミュレーションしておく意味があります。

最初に結論|決算シミュレーションは「節税策を探す作業」ではありません

決算シミュレーションの目的は、単に税金を少なくすることではありません。

本来の目的は、現在までの数字から年度末の着地を予測し、経営者が残りの期間に何をすべきかを判断することです。

  • 今期の売上と利益は、どの程度になりそうか
  • 法人税、消費税などの納税額はいくらになりそうか
  • 納税後も必要な運転資金を確保できるか
  • 設備投資や採用を実行しても資金繰りに無理がないか
  • 金融機関へどのような決算内容を示したいか
  • 来期に向けて、どの程度の利益を残すべきか

こうした点を早めに把握することで、決算直前の場当たり的な対応を避けられます。

なぜ8月が「利益の中間確認」に向いているのか

1.年末までの売上見込みが見え始める

8月頃になると、上半期の受注実績や前年同期との比較から、年末までの売上をある程度予測できる会社が増えてきます。

当初の事業計画に対して、売上が順調なのか、粗利益率が下がっていないか、固定費が増えすぎていないかを確認するには、ちょうどよい時期です。

2.決算までに対応できる時間が残っている

決算直前に利益予測をしても、取れる対策は限られます。

一方、8月の段階であれば、設備投資、修繕、採用、賃金改定、広告宣伝、借入れの見直しなどを、会社の事業計画に沿って検討する時間があります。

ただし、費用を増やせばよいという意味ではありません。会社に必要な支出を適切な時期に実行することが基本です。

3.中間納税を含めた資金繰りを確認できる

法人税の中間申告は、原則として事業年度開始後6か月を経過した日から2か月以内です。法人税の確定申告と納付は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内となっています。

また、消費税は、直前の課税期間における確定消費税額に応じて、中間申告と納付の回数が変わります。

利益が出ていても、中間納税、消費税、賞与、借入金返済などが重なると、資金繰りが急に厳しくなることがあります。利益予測と納税予測は、資金繰り表とセットで確認することが重要です。

参考:国税庁「地方法人税及び防衛特別法人税の申告」
参考:国税庁「消費税の中間申告の方法」

4.経営計画を修正する余地がある

売上が計画を下回っている場合、単に「景気が悪い」で終わらせるのではなく、販売数量、客単価、粗利益率、固定費などに分解して原因を確認します。

反対に、予想以上に利益が出ている場合も、その利益が一時的なものか、来期以降も続くものかを見極める必要があります。

決算シミュレーションで確認する数字

確認項目主な内容判断につながること
売上高実績、受注残、季節変動、前年同期比年度末の売上予測
売上総利益原価率、仕入価格、外注費、商品構成売上増加が利益につながっているか
固定費人件費、家賃、リース料、システム費用損益分岐点や固定費負担
臨時的な損益補助金、保険金、資産売却、修繕費通常の収益力との切り分け
税引前利益決算整理前の予測利益法人税等の概算
消費税課税売上、課税仕入れ、簡易課税の適用状況納税額と資金確保
現預金入金予定、支払予定、借入返済、納税納税後の資金繰り

具体例|利益が出ていても、自由に使えるお金とは限りません

3月決算の会社が、8月末までの実績を集計したところ、次のような状況だったとします。

  • 8月末までの売上高:5,000万円
  • 8月末までの税引前利益:800万円
  • 年度末までの予測売上高:1億2,000万円
  • 年度末までの予測税引前利益:2,000万円

この場合、「2,000万円も利益が出るなら、何か買った方がよい」と考えるのは早計です。

まず、法人税等と消費税の概算額を確認します。そのうえで、借入金返済、賞与、設備代金、仕入代金などを反映し、納税後にどの程度の現預金が残るかを確認します。

帳簿上の利益と、会社が自由に使える現金は同じではありません。

売掛金の増加、在庫の増加、借入金元本の返済などは、利益と現金の差を生じさせます。したがって、損益計算書だけでなく、貸借対照表と資金繰りも併せて見る必要があります。

利益予測が上振れした場合に検討すること

必要な設備投資・修繕を前倒しできるか

近い将来に必要となる設備や修繕があるなら、事業上の必要性、納期、資金繰りを確認したうえで実施時期を検討します。

ただし、設備を発注しただけでは、その年度の費用にならないことがあります。固定資産は、原則として事業に使用し始めた後に減価償却を行います。決算直前に注文しただけでは、想定した税務効果が得られない場合があります。

人材への還元や採用投資を検討する

業績が順調で、今後も収益が続く見込みであれば、従業員への還元、教育研修、採用活動なども検討対象になります。

ただし、賞与については、決算後に金額を決めれば当期の費用になるとは限りません。未払賞与として当期の損金に算入するには、支給額の通知や支給時期など一定の要件があります。

借入金返済と手元資金のバランスを考える

利益が出たからといって、借入金を一気に返済することが常に正解とは限りません。

納税、賞与、仕入れ、設備投資などに必要な資金を確保したうえで、返済と手元流動性のバランスを判断します。

来期以降の経営計画に反映する

利益の上振れが一時的なものではなく、事業の成長によるものであれば、来期の人員体制、設備、資金調達などを早めに考える必要があります。

利益予測が下振れした場合に確認すること

シミュレーションの結果、計画より利益が少ない場合も、早く分かれば対応できます。

  • 売上数量が減っているのか
  • 値引きが増え、客単価が下がっていないか
  • 仕入価格や外注費の上昇を価格に転嫁できているか
  • 採算の低い商品や取引が増えていないか
  • 残業代、広告費、システム費などが想定以上に増えていないか
  • 売掛金の回収遅延や不良在庫が発生していないか

重要なのは、単純な経費削減だけに走らないことです。

売上を生み出す広告、人材、設備まで一律に削減すると、来期の収益力を弱める可能性があります。費用を「必要な投資」と「成果につながっていない支出」に分けて判断する必要があります。

よくある誤解|決算対策は「お金を使うこと」ではありません

たとえば100万円を費用として使っても、税金が100万円減るわけではありません。

仮にその支出による税負担の減少が約30万円だったとしても、会社からは100万円の現金が出ていきます。結果として、税引後の手元資金は約70万円減少します。

必要のないものを節税目的だけで購入することは、会社の資金を減らす行為です。

決算対策では、次の順番を守ることが大切です。

  1. 年度末の利益を予測する
  2. 法人税・消費税などを概算する
  3. 納税後の資金繰りを確認する
  4. 経営上必要な支出や投資を検討する
  5. 税務上の適用要件と実施期限を確認する

会計データが遅れていると、シミュレーションの精度も下がります

決算予測を行うためには、月次会計が一定程度まで正確に処理されている必要があります。

売上や仕入れが未計上のまま、現預金残高が合っていないまま、あるいは役員の立替経費が未処理のままでは、利益予測も税額予測も正確になりません。

8月の確認を機会に、次のような未処理項目を整理しましょう。

  • 現預金残高と帳簿残高が一致しているか
  • 売上、仕入れ、外注費の計上漏れがないか
  • 売掛金、買掛金に長期間動いていない残高がないか
  • 役員や従業員の立替経費が未処理になっていないか
  • 借入金残高が返済予定表と一致しているか
  • 固定資産の取得や除却が正しく記録されているか
  • 消費税区分に誤りがないか

8月に行いたい決算シミュレーションのチェックリスト

  • 月次試算表は最新月まで完成している
  • 前年同期と当初予算との比較を行った
  • 受注残や季節変動を反映して売上を予測した
  • 原価率や粗利益率の変化を確認した
  • 賞与、修繕、設備投資などの予定を反映した
  • 法人税等と消費税を別々に試算した
  • 中間納税額を確認した
  • 納税後の預金残高を確認した
  • 借入金返済や追加融資の必要性を検討した
  • 決算までに行うことを担当者と期限付きで整理した

税理士としての見解|よい決算は、決算後ではなく決算前につくるものです

決算書は、税務署に提出するためだけの書類ではありません。

金融機関、取引先、従業員、将来の後継者に、会社の経営状態を説明する資料でもあります。

そのため、単に税金を減らすことだけを目的とするのではなく、会社にどの程度の利益と自己資本を残すべきかという視点が必要です。

利益を残せば税負担は生じます。しかし、適正な利益の蓄積は、借入余力や信用力を高め、不測の事態に耐えられる会社をつくります。

8月の決算シミュレーションは、決算の数字を予想するだけの作業ではありません。今期の着地を確認し、残りの期間の経営判断を具体化するための機会です。

まとめ|8月に数字を確認し、残りの期間を経営に生かしましょう

決算直前になってから利益や税額を知っても、できることは限られます。

8月の段階で一度立ち止まり、売上、利益、納税額、現預金の着地を確認しておけば、設備投資、人材採用、資金調達、利益確保などを落ち着いて判断できます。

もちろん、最適な確認時期は会社の決算月や繁忙期によって異なります。8月決算法人など決算直前の会社は、より具体的な決算対応が必要です。9月決算法人は最終着地の確認、12月決算法人は残り4か月の実行計画、3月決算法人は上半期を見据えた中間確認というように、目的を変えて考えます。

藁総合会計事務所では、月次試算表をもとに、利益予測、法人税・消費税の概算、資金繰りまで含めた決算シミュレーションを行っています。

「今期は利益が出そうだが、税額が分からない」「売上は増えているのに資金が残らない」と感じたら、決算直前まで待たず、早めにご相談ください。

東京・品川区の税理士
藁総合会計事務所