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【「良いものをつくれば売れる」から脱却する】中小企業が「選ばれる会社」になるための5つの実践

「うちの商品は、使ってもらえれば良さが分かる」

「一度取引をしてもらえれば、長く付き合ってもらえる」

中小企業の経営者から、こうした言葉を聞くことがあります。

実際に、優れた商品やサービスを提供し、お客様から高く評価されている会社は少なくありません。

しかし、ここには一つの難しい問題があります。

使ってもらう前のお客様には、その良さがまだ分からないということです。

第1回では、環境が変化しているにもかかわらず、企業が過去の成功体験から抜け出しにくいことを考えました。

第2回では、良いものがあふれ、商品を比較する時間や注意力が不足する中で、売れ筋や口コミがさらに選ばれやすくなる仕組みを取り上げました。

今回は、この状況に中小企業がどう対応すればよいのかを考えます。

「良いものをつくれば売れる」は、間違いではない

最初に確認しておきたいのは、「良いものをつくれば売れる」という考え方そのものが、間違っているわけではないということです。

品質が低ければ、一度は売れても、長くは続きません。

期待を裏切れば、悪い口コミが広がります。紹介もリピートも生まれません。

品質は、今も経営の土台です。

ただし、良いものがあふれている現在では、品質だけで選ばれるとは限りません。

お客様に見つけてもらい、違いを理解してもらい、安心して最初の一歩を踏み出してもらう必要があります。

つまり、現在求められているのは、

良いものをつくり、それを「選びやすい状態」にすることです。

実践1 「誰にでも」ではなく、誰のための商品かを明確にする

多くの会社は、できるだけ多くのお客様に買ってもらおうとします。

そのため、ホームページやパンフレットには、次のような言葉が並びます。

  • 幅広いニーズに対応します
  • 高品質なサービスを提供します
  • お客様に寄り添います
  • ワンストップで解決します

どれも悪い言葉ではありません。

しかし、多くの会社が同じことを言っているため、お客様から見ると違いが分かりません。

必要なのは、「誰でも利用できます」と伝えることではなく、どのような人の、どのような場面で、特に役立つのかを明確にすることです。

例えば、「中小企業の経営を支援します」よりも、

「初めて従業員を雇い、給与計算や社会保険の手続に困っている小規模事業者を支援します」

とした方が、自分に関係するサービスだと理解しやすくなります。

対象を絞ることは、それ以外のお客様を断ることではありません。

お客様が自分との関係を見つけられる、入り口をつくることです。

実践2 会社の言葉ではなく、お客様が探す言葉で伝える

売る側は、商品名、技術名、制度名、業界用語を使って説明します。

しかし、お客様は必ずしも、その言葉を知っているわけではありません。

お客様が検索するのは、商品名ではなく、目の前の悩みであることが少なくありません。

  • 経理に時間がかかりすぎる
  • 売上は増えたのに、お金が残らない
  • 後継者に会社をどう引き継げばよいか分からない
  • 設備が故障する前に交換したい
  • 納期の遅れを減らしたい

会社が伝えたい言葉と、お客様が探している言葉が一致しなければ、良い商品でも見つけてもらえません。

ホームページでは、一つのページにあらゆる情報を詰め込むのではなく、お客様の一つの悩みに対して、一つの答えを示すことが大切です。

商品名から説明を始めるのではなく、

「どのような悩みを解決できるのか」

「購入後に何が変わるのか」

から説明を始めます。

実践3 お客様が比較できる「ものさし」を示す

お客様が選べない理由の一つは、商品が悪いからではありません。

何を基準に比較すればよいのか分からないからです。

価格だけを表示しても、その価格が高いのか安いのかは判断できません。

機能を並べても、どの機能が自分に必要なのか分からないことがあります。

そこで、会社側から比較の基準を示します。

  • どのような人に向いているか
  • どのような人には向いていないか
  • 他の商品や方法との違い
  • 料金に含まれるもの、含まれないもの
  • 導入までの期間
  • 購入後のサポート内容

自社に不利な情報を隠さず、向いていない場合も説明することは、一見すると販売機会を減らすように思えます。

しかし、それによってお客様は安心して比較できるようになります。

分かりやすい比較は、安売りとは違います。

価格以外の価値を理解してもらうためにも、比較の基準が必要です。

実践4 「良い」という主張を、信頼できる証拠に変える

自社で「品質が高い」「対応が丁寧だ」と書くだけでは、お客様にとっては会社側の主張にすぎません。

そこで、購入前でも確認できる証拠を用意します。

  • お客様の声
  • 具体的な導入事例
  • 継続率やリピート率
  • 取引実績
  • 資格や認証
  • 仕事の流れや品質管理の方法
  • 担当者の顔や考え方
  • よくある質問への回答

特に、専門サービスやオーダーメードの商品は、購入前に品質を判断することが難しいものです。

だからこそ、結果だけでなく、どのような考え方で、どのような手順で仕事をするのかを見せる必要があります。

お客様の声や事例を掲載する場合は、誇張や作り話ではなく、事実を丁寧に積み重ねることが重要です。

大きな実績が一つあることよりも、小さくても具体的な事例が継続的に蓄積されている方が、信頼につながることがあります。

実践5 最初の一歩を、小さくする

良さそうな商品だと思っても、最初から大きな契約をすることには不安があります。

この会社は信頼できるのか。

自分に合っているのか。

期待した効果が得られるのか。

購入前のお客様には、こうした不安があります。

そこで、最初の一歩を小さくします。

  • 試作品やサンプルを提供する
  • 小ロットから受注する
  • 初回相談を設ける
  • 診断や見積りから始める
  • 短期間の試用プランを用意する
  • 導入前の説明会を行う

必ずしも無料にする必要はありません。

大切なのは、価格を下げることではなく、お客様が負う失敗のリスクを小さくすることです。

そして、問い合わせた後に何が起きるのかも、事前に分かるようにします。

電話が何度もかかってくるのではないか。

強く営業されるのではないか。

相談したら断れなくなるのではないか。

こうした不安を減らすだけでも、お客様は行動しやすくなります。

広告を増やす前に、「受け皿」を整える

売上を増やそうとすると、すぐに広告を考える会社があります。

しかし、広告は、分かりにくい商品を分かりやすくしてくれるものではありません。

広告によって多くの人をホームページへ集めても、誰のための商品なのか分からず、違いや価格、実績、購入までの流れが見えなければ、問い合わせにはつながりません。

広告費を増やす前に、次の点を確認する必要があります。

  • 必要とする人に見つけてもらえるか
  • 自分のための商品だと理解できるか
  • 他社との違いを比較できるか
  • 安心できる証拠があるか
  • 次に何をすればよいか分かるか

広告は、整った受け皿に人を連れてくるためのものです。

受け皿が整っていなければ、広告費を使って、お客様に「分からない」という体験を増やすことになってしまいます。

まず、既存のお客様に聞いてみる

自社の強みを、社内だけで考えても、答えが見つからないことがあります。

そのときは、既存のお客様に聞いてみることが有効です。

  • 最初に当社を知ったきっかけは何でしたか
  • なぜ、ほかの会社ではなく当社を選びましたか
  • 契約前に不安だったことは何ですか
  • 利用後に、何が変わりましたか
  • どのような人に当社を紹介したいと思いますか

会社が考えている強みと、お客様が感じている強みが違うことは珍しくありません。

経営者にとって当たり前になっている対応や工夫が、お客様にとっては、他社にはない価値であることもあります。

お客様の言葉は、次のお客様に伝えるための大切な材料になります。

変化とは、これまでを否定することではない

今回の3回シリーズでは、人と会社の変化、消費者の選び方、そして中小企業の具体的な対応について考えてきました。

変化するということは、これまで積み上げてきた技術や経験を捨てることではありません。

長く続いてきた会社には、守るべきものがあります。

品質、信用、技術、誠実さ、お客様との関係。

これらを守るために、伝え方や見つけてもらう方法、選んでもらう方法を変えるのです。

品質は、経営の土台です。

選びやすさは、その品質とお客様を結ぶ橋です。

「良いものをつくれば売れる」から、

「良いものをつくり、必要な人に見つけてもらい、理解してもらい、安心して選んでもらう」へ。

過去の成功を否定するのではなく、これまで積み重ねてきた価値を、現在のお客様の選び方に合わせて届け直す。

それが、変化の時代に会社を次の世代へつなぐ経営なのだと思います。


参考資料


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