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企業税務、M&A税務などを含む幅広い分野の税務コンサルティングをはじめ企業のビジネスパートナーとして重要な経営課題の解決を支援します。

前回、紹介した三枝匡さんの著書は読んでいただけたでしょうか?今回は、三枝さんが駆使している頭を整理するツールを紹介したいと思います
頭を整理するツール
「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)なら、知ってるよ!」という方は、多いと思います。問題児だの、花形だの、負け犬だの、金のなる木だのというやつです。

PPMは、たくさんの事業や商品群がある会社の経営者が、事業や商品の継続や撤退の意志決定をしなければならない時の判断基準を提供するものとなります。「花形」の事業では、事業拡大に経営資源が必要となり、他の事業に経営資源を回す余裕はありません。「金のなる木」である事業においては、資金的な余裕、優秀な人材が多い場合が多く、「問題児」は、ハイリスク・ハイリターンであり、経営者が経営資源を投入しない限り、事業が停滞し、「負け犬」化する可能性があります。
例えば、「金のなる木」の事業から経営資源を「花形」の事業に投入することで、より強化することも可能ですし、「問題児」に投入することで将来の「花形」事業にすることも可能になります。もちろん、「負け犬」は撤退すべき事業となります。
このように、自社商品や自社事業を成長率とシェアを軸にカテゴリー分けをするだけで、それぞれの事業の置かれている状況を客観的に見ることができます。
ただ、中小企業の提供しているサービスや商品は、市場成長率が低く、マーケットシェアも低いことが多く、「こんなもの何の役にも立たない!」、「負け犬」であることを確認するための分析となってしまいます。

ターゲット顧客の選定
「戦略プロフェッショナル」では、顧客分類のために利用しています。
この小説の中の会社では、医療における検査装置の拡販が急務であり、これが会社の生死を左右する状態です。限られた営業マンと限られた時間の中で、どうやって販売をするかが取り扱われています。
way to the Topの4月号で紹介したランチェスター戦略で、「弱者の戦略」として9つの戦略を取り上げました。その中の「勝ちやすき場面を選ぶ」、「営業活動は局地戦にする」、「先制攻撃ですぐ実行する」をしなければ、競合と勝負になりません。にもかかわらず「強者の戦略」を採用し、限られた営業マンで、多くの顧客に対してローラー作戦で拡販活動を行っても成果が上がるはずもありません。あらかじめ顧客を絞り込み、集中的に活動を行うことで、結果がすぐに現れ、競合者に対して先制攻撃になるのです。時間がない中で、トライアンドエラーを繰り返している時間的余裕は、この小説の中の会社にも無いのです。
小説の中では、顧客の絞り込みを行うために、仮説を立てています。「仮に、一つ一つの病院に当社の製品に対するニーズが強いか弱いかを表すデータがあるとして、横軸にもってくる。」、「次に、もし売り込みに成功したときに、我々のメリットが大きいか小さいか、その目安になるデータがあるとして、それを横軸にもってくる。」
「この2つの基準で、それぞれの病院をランク付けすることができれば、その病院の名前を一つずつ、この4つのマス目のどこかに書き込むことができる。」、このようにすることで、攻撃すべき対象と、決して攻撃すべきではない対象を明確に区分することができます。
さらに「ベッド数の大きな病院であれば、検査の量も多く、自動化へのニーズが高いために、当社の製品に高いニーズがあるから、縦軸には、ベッド数をもってくる。」、「横軸には、必要だと思っても、購入まで多くの手続きを要するか否かが重要で、病院の種別、国公立と国公立以外をもってくる。」ことで、攻撃対象となる顧客をABCに区分しています。
また小説の中では、競合者が同等の製品を開発するまでに1年以上の期間を必要とすることから、ABCで分類した顧客を、競合社の製品を利用と当社の旧製品を利用している顧客に区分し、競合他社の旧製品を利用している顧客を優先とすることで、競合他社が追い上げてこれない状況を作ることを目標に掲げています。

Ⅰの客先へのアプローチが終わらないうちは、Ⅱの客先にはアプローチをしないこと、「いままで世話になっているユーザーに関しては、問い合わせがあれば、商品説明などはしっかり行うが、こちらから積極的なアプローチは行わない。」、このように営業方針を決定し、進捗状況をしっかりと管理することで、この会社は倒産の危機を乗り越えていきます。

批判勢力
小説の中でも現実でも新しいことをするときは、批判勢力がつきものです。戦略に基づいた営業方針を作成し、従業員をその気にさせることが重要となります。そのためには、あまり複雑な戦略は、納得させるのに時間がかかり、また間違った解釈で営業方針をとらえることにもなりかねません。あまりにも複雑な戦略は批判勢力の手助けとなることにもなります。ターゲット顧客を選定するときに用いた単純な表は、営業マンや批判勢力を説得するのにも役に立ちます。

進捗状況の管理
どの会社でもあることですが、営業の進捗状況を営業担当者に聞くと、「うまくいっています。」とか、「もう少し待っていただければ、成果が出ます。」という言葉は聞こえるが、一向に進捗しないということがあります。小説の中では、優先順位を付した顧客ごとの「営業進捗状況」を作成し、日付と進捗状況をコード化したものを記入しています。
具体的には、「まだ何もしていない」がF、「第1回目の訪問で」がE、「2回以上いっている」がD、「デモおよびその後の訪問」がEという具合に、コードを付して明瞭に、営業報告書を廃止し、「ターゲット営業進捗状況」に●を付すことで、一目で進捗状況がわかるようになります。可視化と図形化されているので、誰が見ても進捗状況がわかります。

実際の利用
当事務所でも、お客様のお話を聞きながら、ターゲット顧客をカテゴリーに分けるときに利用しています。
例えば、当事務所のお客様で、現在はマンションの施工業社を中心にサービスの提供を行っています。今日のマンション市場は、停滞し、大手業者が次々と倒産しています。その中で社長は戸建て業者に対して営業を展開しようと考えていました。ついては、戸建て業者の営業リストをどうしようかという相談がありました。
そこで縦軸に「顧客企業の規模」、横軸に「業者の種別」で顧客分類をしてみました。
表を中心に話し合ったところ、Aの大手戸建てメーカーだけを集中的に営業展開をすることに決定しました。
なぜ、このような判断をしたかというと、まずこのお客様の経営資源では、戸建ての大手メーカーから地元の工務店までをターゲットとして営業を行うことができないからです。営業担当は社長だけなのですから、ダイレクトメールの送付をし、地元や近隣の小さな工務店からの散発的な問い合わせを、一人でこなすことは無理で不効率だからです。ターゲットを大手戸建てメーカーのみにすることで、ダイレクトメールの発送、問い合わせがあった大手メーカーの営業所に対して効率良く営業をすることができます。顧客とすることができれば、他の営業所を紹介してもらうことが可能となり、芋づる式に顧客が獲得でき営業効率が圧倒的に高いからです。
大手戸建てメーカーの営業所一覧が優良営業リストとなり、これを全て開拓することが、今のこのクライアントの営業方針となったのです。
もちろん将来的には、取引金額が好条件な小規模な工務店もターゲットとしたいのですが、今はその時ではないということです。

なかなか、良いツールでしょ!だまされたと思って使ってみてください。今年も、「やらなければならないリスト」を付けます。こちらも是非活用してください。

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